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卒業間際
教室
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告白できないまま、卒業式はドンドン近づいてくる。
「松尾君は、志望校は推薦で通ったから、のんびりできていいね」
「まあ、な。赤野が、小論文の特訓をしてくれたおかげだよ」
まだ受験が終わらない今井と夏目は誘えないから、好都合なことに、俺と赤野で過ごすことが多くなった。
受験が佳境に入ったから、学校に来ている三年生はまばら。
都会の私立なんかは、もう三年生は登校する必要はないらしいが、この田舎では、私立でも、受験がない生徒は、なるべく登校するように言われている。
「赤野は、受験はせずに、お父さんの所へ行くんだっけ?」
「そう。父の運営する傭兵の訓練場へ行って、本格的に強くなる訓練を受けようと思って。その後は、木根の叔父さん達と元子と一緒に、この辺りの警察官になって、交通ルール違反の取り締まりとかしている未来かな」
フフッと赤野が笑う。
仙石なんて不気味なヤクザ男に狙われている赤野。
それなりの戦闘力を付けなければ、周囲の物まで巻き込みかねないという判断で、そう決意したのだという。
「なんだか過酷そう」
「戦闘に巻き込まれたら、死んじゃうかもね。生きてまた会えることを祈るよ」
軽く赤野は、そんなことを言う。
「赤野……あのさぁ」
「なあに?」
赤野の瞳が俺を見る。
近くで見れば、緑色がかったその瞳に吸い込まれそうだ。
俺の気持ちに全く気付かないで、ニコリを微笑む赤野。
「何か……隠し事? 顔が真っ赤になっている。目線がおぼつかない。えっと、僕に相談がある?」
「ちょ……。人の表情深読みすんなよ。まあ、そんなところだけれども」
「教室じゃ、話にくい?」
これは、好都合だ。
赤野の方から俺を心配して、話を持ち掛けてくれた。
俺は、コクンと首を縦に振る。
赤野の手が、俺の腕に触れる。触られたところが、じんわり熱くなってきて、心臓がどきどきする。
こぼれ落ちそうな「好きだ」という言葉が、喉にこみ上げてくる。
「松尾君……?」
探る瞳を俺に向ける赤野。
もう、いいかな。
ここで、教室で言っても。
どこかで二人きりでなんて、とても耐えられないかも。
心臓がバクバクと言っている。
玉砕したことが周囲にバレたって、どうせもうすぐ卒業だし。
「赤野……俺……」
赤野の腕を握れば、その華奢さが分かる。
鍛えても、なかなか筋肉がつかないと嘆いている赤野。
やっぱり女の子なんじゃないだろうか? 女の子だから、男子のようには筋肉がつかないのではないだろうか?
手だってそうだ。
細い指先。俺のごつごつした手とは、全く違う。
「皆! 教室から出ろ!」
バタバタと走って教室に入って来たのは、先生。
……どうして、こう、俺の恋は、お約束の昭和展開がつきまとうのか。
せっかくあと一歩だったのに。
「松尾君は、志望校は推薦で通ったから、のんびりできていいね」
「まあ、な。赤野が、小論文の特訓をしてくれたおかげだよ」
まだ受験が終わらない今井と夏目は誘えないから、好都合なことに、俺と赤野で過ごすことが多くなった。
受験が佳境に入ったから、学校に来ている三年生はまばら。
都会の私立なんかは、もう三年生は登校する必要はないらしいが、この田舎では、私立でも、受験がない生徒は、なるべく登校するように言われている。
「赤野は、受験はせずに、お父さんの所へ行くんだっけ?」
「そう。父の運営する傭兵の訓練場へ行って、本格的に強くなる訓練を受けようと思って。その後は、木根の叔父さん達と元子と一緒に、この辺りの警察官になって、交通ルール違反の取り締まりとかしている未来かな」
フフッと赤野が笑う。
仙石なんて不気味なヤクザ男に狙われている赤野。
それなりの戦闘力を付けなければ、周囲の物まで巻き込みかねないという判断で、そう決意したのだという。
「なんだか過酷そう」
「戦闘に巻き込まれたら、死んじゃうかもね。生きてまた会えることを祈るよ」
軽く赤野は、そんなことを言う。
「赤野……あのさぁ」
「なあに?」
赤野の瞳が俺を見る。
近くで見れば、緑色がかったその瞳に吸い込まれそうだ。
俺の気持ちに全く気付かないで、ニコリを微笑む赤野。
「何か……隠し事? 顔が真っ赤になっている。目線がおぼつかない。えっと、僕に相談がある?」
「ちょ……。人の表情深読みすんなよ。まあ、そんなところだけれども」
「教室じゃ、話にくい?」
これは、好都合だ。
赤野の方から俺を心配して、話を持ち掛けてくれた。
俺は、コクンと首を縦に振る。
赤野の手が、俺の腕に触れる。触られたところが、じんわり熱くなってきて、心臓がどきどきする。
こぼれ落ちそうな「好きだ」という言葉が、喉にこみ上げてくる。
「松尾君……?」
探る瞳を俺に向ける赤野。
もう、いいかな。
ここで、教室で言っても。
どこかで二人きりでなんて、とても耐えられないかも。
心臓がバクバクと言っている。
玉砕したことが周囲にバレたって、どうせもうすぐ卒業だし。
「赤野……俺……」
赤野の腕を握れば、その華奢さが分かる。
鍛えても、なかなか筋肉がつかないと嘆いている赤野。
やっぱり女の子なんじゃないだろうか? 女の子だから、男子のようには筋肉がつかないのではないだろうか?
手だってそうだ。
細い指先。俺のごつごつした手とは、全く違う。
「皆! 教室から出ろ!」
バタバタと走って教室に入って来たのは、先生。
……どうして、こう、俺の恋は、お約束の昭和展開がつきまとうのか。
せっかくあと一歩だったのに。
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