天使の顔して悪魔は嗤う

ねこ沢ふたよ

文字の大きさ
上 下
63 / 83
高校三年生(今までの応用です。暗号・トリック・事件・サイコパス……)

猫を殺さば呪われると思え2

しおりを挟む
 俺と松尾と今井と赤野、いつものメンバーで木根刑事を警察署に訪ねれば、木根刑事の難しい顔がある。

「助かるよ。こっちへ」

促されて入った会議室では、一つの箱が置いてある。
小さな汚れた金属の箱。……金庫かな?

「この箱は?」

「猫の遺体のそばに置いてあった。番号が分からなくて、開けられていない。鑑識に任せるのも良いかと思ったが、今、あいつらは忙しいし、周作達に聞く方が早いかと思って」

猫の遺体。ということは、最近多くなっているという猫が狙われる事件に関連しているのだろうか?

 箱の表面には、
[『百人一首010』『源氏物語 003』→『□□□□□□』ここに続く四ケタの数字を見つけよ]
と書かれている。
 箱の横には、四ケタの数字合わせの鍵がついている。

えっと、意味が分からない。

「何の捻りもない。ネットで調べればすぐに分かるよ」
赤野が、くだらないと、ため息をつく。

 ……なんだか機嫌が悪そうだ。

「どうしたの?」
俺が聞けば、

「だってこんな下らない物のために、猫を殺すなんて」
と赤野がイラつく。

「何か理由があって人間同士で殺し合うならともかく、全く関係のない猫を巻き込むなんて!」

どうやら、俺が思っている以上に赤野は猫好きらしい。
てか、いいんだ。人間同士なら……。まあ、事情にもよるんだろうけれども。駄目だろ。普通。

「理由……分かるの? この暗号を書いた」
今井が赤野に聞く。

「たぶんね。でも言わない。まだ、あまりにも推論すぎるから」
教えてはくれないらしい。

 松尾が、ネットで調べてみれば、
『百人一首010』は、『これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関』という和歌の番号。
『源氏物語 003』は、『桐壺』『帚木』に続く三帖『空蝉』のことだった。

「これが何だ?」
俺が首をひねっていると、

「百人一首010の作者は?」
と赤野が聞く。

「えっと、確か……蝉丸?」
そっか、じゃあ、『百人一首010』は、むしろ『蝉丸』が答えだ。それから、『蝉丸』と『空蝉』……共通点は、『蝉』。

「『蝉』が答え?」
おずおずと俺が聞けば、

「そう。そして、それが六文字になるのだから、英語に直してみてよ」
赤野が正解だと教えてくれる。

「蝉……CICADA」
松尾が、ネットですぐさま調べて出てきたのは、『CICADA』という単語。では、この、『□□□□□□』は、『CICADA』から、どんな四ケタの数字が出てくるというのか……。

「3301」
赤野が、四ケタの数字を述べる。

「CICADAに続く数字ならば、3301なんだよ。昔、ネット上で盛り上がった暗号にまつわる話があってね」

 赤野が教えてくれた。
 2021年の一月。インターネット上を騒がせた謎の暗号があった。それが「CICADA3301」。蝉の画像に隠されたメッセージを読み取れという内容。世界中の都市にヒントが巻かれ、世界中の天才達が翻弄されたのだという。いまだに、誰が何の目的でこの暗号を作成したのかは分かっていない。

「こんなのは、そんな有名な暗号の足元にも及ばない子供だまし」
赤野は、ご立腹のようだ。

木根刑事が慎重に数字を合わせれば、箱はいとも簡単に開く。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

リモート刑事 笹本翔

雨垂 一滴
ミステリー
 『リモート刑事 笹本翔』は、過去のトラウマと戦う一人の刑事が、リモート捜査で事件を解決していく、刑事ドラマです。  主人公の笹本翔は、かつて警察組織の中でトップクラスの捜査官でしたが、ある事件で仲間を失い、自身も重傷を負ったことで、外出恐怖症(アゴラフォビア)に陥り、現場に出ることができなくなってしまいます。  それでも、彼の卓越した分析力と冷静な判断力は衰えず、リモートで捜査指示を出しながら、次々と難事件を解決していきます。  物語の鍵を握るのは、翔の若き相棒・竹内優斗。熱血漢で行動力に満ちた優斗と、過去の傷を抱えながらも冷静に捜査を指揮する翔。二人の対照的なキャラクターが織りなすバディストーリーです。  翔は果たして過去のトラウマを克服し、再び現場に立つことができるのか?  翔と優斗が数々の難事件に挑戦します!

強制憑依アプリを使ってみた。

本田 壱好
ミステリー
十八年間モテた試しが無かった俺こと童定春はある日、幼馴染の藍良舞に告白される。 校内一の人気を誇る藍良が俺に告白⁈ これは何かのドッキリか?突然のことに俺は返事が出来なかった。 不幸は続くと言うが、その日は不幸の始まりとなるキッカケが多くあったのだと今となっては思う。 その日の夜、小学生の頃の友人、鴨居常叶から当然連絡が掛かってきたのも、そのキッカケの一つだ。 話の内容は、強制憑依アプリという怪しげなアプリの話であり、それをインストールして欲しいと言われる。 頼まれたら断れない性格の俺は、送られてきたサイトに飛んで、その強制憑依アプリをインストールした。 まさかそれが、運命を大きく変える出来事に発展するなんて‥。当時の俺は、まだ知る由もなかった。

このブラジャーは誰のもの?

本田 壱好
ミステリー
ある日、体育の授業で頭に怪我をし早退した本前 建音に不幸な事が起こる。 保健室にいて帰った通学鞄を、隣に住む幼馴染の日脚 色が持ってくる。その中から、見知らぬブラジャーとパンティが入っていて‥。 誰が、一体、なんの為に。 この物語は、モテナイ・冴えない・ごく平凡な男が、突然手に入った女性用下着の持ち主を探す、ミステリー作品である。

聖女の如く、永遠に囚われて

white love it
ミステリー
旧貴族、秦野家の令嬢だった幸子は、すでに百歳という年齢だったが、その外見は若き日に絶世の美女と謳われた頃と、少しも変わっていなかった。 彼女はその不老の美しさから、地元の人間達から今も魔女として恐れられながら、同時に敬われてもいた。 ある日、彼女の世話をする少年、遠山和人のもとに、同級生の島津良子が来る。 良子の実家で、不可解な事件が起こり、その真相を幸子に探ってほしいとのことだった。 実は幸子はその不老の美しさのみならず、もう一つの点で地元の人々から恐れられ、敬われていた。 ━━彼女はまぎれもなく、名探偵だった。 登場人物 遠山和人…中学三年生。ミステリー小説が好き。 遠山ゆき…中学一年生。和人の妹。 島津良子…中学三年生。和人の同級生。痩せぎみの美少女。 工藤健… 中学三年生。和人の友人にして、作家志望。 伊藤一正…フリーのプログラマー。ある事件の犯人と疑われている。 島津守… 良子の父親。 島津佐奈…良子の母親。 島津孝之…良子の祖父。守の父親。 島津香菜…良子の祖母。守の母親。 進藤凛… 家を改装した喫茶店の女店主。 桂恵…  整形外科医。伊藤一正の同級生。 遠山未歩…和人とゆきの母親。 遠山昇 …和人とゆきの父親。 山部智人…【未来教】の元経理担当。 秦野幸子…絶世の美女にして名探偵。百歳だが、ほとんど老化しておらず、今も若い頃の美しさを保っている。

こちら百済菜市、武者小路 名探偵事務所

流々(るる)
ミステリー
【謎解きIQが設定された日常系暗号ミステリー。作者的ライバルは、あの松〇クン!】 百済菜(くだらな)市の中心部からほど近い場所にある武者小路 名探偵事務所。 自らを「名探偵」と名乗る耕助先輩のもとで助手をしている僕は、先輩の自称フィアンセ・美咲さんから先輩との禁断の関係を疑われています。そんなつもりは全くないのにぃ! 謎ごとの読み切りとなっているため、単独の謎解きとしてもチャレンジOK! ※この物語はフィクションです。登場人物や地名など、実在のものとは関係ありません。 【主な登場人物】 鈴木 涼:武者小路 名探偵事務所で助手をしている。所長とは出身大学が同じで、生粋の百済菜っ子。 武者小路 耕助:ミステリー好きな祖父の影響を受けて探偵になった、名家の御曹司。ちょっとめんどくさい一面も。 豪徳寺 美咲:耕助とは家族ぐるみの付き合いがある良家のお嬢様。自称、耕助のフィアンセ。耕助と鈴木の仲を疑っている。 御手洗:県警捜査一課の刑事。耕助の父とは古くからの友人。 伊集院:御手洗の部下。チャラい印象だが熱血漢。

昭和レトロな歴史&怪奇ミステリー 凶刀エピタム

かものすけ
ミステリー
 昭和四十年代を舞台に繰り広げられる歴史&怪奇物語。  高名なアイヌ言語学者の研究の後を継いだ若き研究者・佐藤礼三郎に次から次へ降りかかる事件と災難。  そしてある日持ち込まれた一通の手紙から、礼三郎はついに人生最大の危機に巻き込まれていくのだった。  謎のアイヌ美女、紐解かれる禁忌の物語伝承、恐るべき人喰い刀の正体とは?  果たして礼三郎は、全ての謎を解明し、生きて北の大地から生還できるのか。  北海道の寒村を舞台に繰り広げられる謎が謎呼ぶ幻想ミステリーをどうぞ。

ARIA(アリア)

残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

【本編完結】長し夜に、ひらく窓<天神一の日常推理 呪われた女>

ユト
ミステリー
 【それは呪いか? 願いか? 風変わりな大学生と平凡理系大学生は、女子大生の呪いを解くために推理する】  長雨の十月、告解室と呼ばれる喫茶店<レトロ・アヴェ>。  『普通』をこよなく愛す風変わりな大学生の天神一と平凡な理系大学生の早川翔太の前に、一人の女子大生が現れる。    彼女の名は、藤枝穂乃果。  眉目秀麗、真面目を体現しているような彼女は、天気雨の日に『狐の窓』をしてから、いつでもどこにいても雨が見えるようになったと言う。  しかし、雨を止ませることが依頼かと天神が聞けば、彼女は首を横に振った。 「私に掛けられた呪いを教えてください」  それがたった一つの藤枝の依頼だった。  彼女を呪っているのは誰か。  なぜ、彼女は呪われたのか。  彼女に掛けられた呪いとは何か。  天神に舞い込む日常の謎を解きながら、彼女の深層に潜り込む。  謎と苦悩の平凡日常ミステリー。 ---------------------- プロローグ 第一章 はじまりは雨と共に(〜8話) 第二章 空と鳥と新しき怪異(〜20話) 第三章 君想う、心は開かずの箱の中(〜32話) 第四章 長し夜に、ひらく窓(〜42話) エピローグ ------------------------ 1月中におまけSSを投稿予定。 投稿後も頻繁に推敲しますこと、ご容赦ください。 カクヨムにも投稿中。 天神と早川との出会いはこちら↓ 【草つ月、灼くる日】 https://www.alphapolis.co.jp/novel/340268778/875697704

処理中です...