天使の顔して悪魔は嗤う

ねこ沢ふたよ

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高校一年生(暗号・トリック中心)

神隠し1

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 一組の田島葵たじまあおいが神隠しにあった。

 そんな噂が流れたのは、二月になってから。
 一組の田島。そんなに目立たない女子。その子が、三学期になってから、学校に来ていない。
 初めは病欠かと思われたが、二月になっても姿を現さない。

 そのうちに、仲の良かった数名が、あの時、神社で姿を見たのが最後。それ以来見ていないということは、神隠しにあったのではないか、と噂が流れ始めたのだ。

「赤野、どう思う?」

俺は気になって、赤野に聞いてみた。

「田島さんのこと?」

赤野は、こちらをみて、じっと考え込む。

「そうだな……。もし、何が事故にあって亡くなっているとしたら、きっと、何らかの事情が、どこからか流れてくるよね? 先生とか、ご家族とか」

「今の状況では、どうして『神隠し』なんて非現実的な話が出てきたのか、分からないね」

赤野は帰宅準備をいそいそと始める。
 赤野が積極的に捜査をしたいとは思わないようだ。

「赤野は、気にならないの?」

「気にならない訳ではないけれど、僕らは一般市民だし……ああ、だから、一般市民の未成年なんだってば!」

赤野のスマホがブルブル震えている。
見なくてもわかる。きっと木根刑事……

『周作君♡♡ 木根叔父さんだよ(≧▽≦)♪ ちょっといいかな?( ゚Д゚)学校🏫終わったら♪♪ 連絡してね(#^^#)』

どんどん酷くなる叔父さん構文のメール。意味不明過ぎる物を間に挟んで、赤野に必死に呼びかけている。赤野は、メールを見てうんざりとした顔をしている。

 俺達は、また四人で警察署に寄る。
 警察署では、また会議室に通される。

 木根刑事は、事件について話始める。
 内容は、一組の田島葵の話。ご両親から、捜索願が出されているらしい。

 田島が家から姿を消したのは、一月四日。
 一人で初詣に行ってくると両親に言って、近所の神社に向かった。
 近所の小さな社。ほんの五百メートル先の社だから、一人でも平気だろうと、軽く「気を付けてね」とだけ言って送り出した。
 
しかし、田島葵はそのまま姿を見せることはなかった。
誘拐を疑い、情報を公開することをためらっていたが、二月に入っても何の音沙汰もない。そこで、情報を公開して大々的に捜査をすることにしたのだそうだ。
 
「確か、一組の奴が神社で見かけたって言っていたよな?」
俺が聞けば、

「そう、だれだっけ? 根室さん? 冬休み中に神社で見かけたって」
と、夏目が答える。

 夏目と今井は、一組だった。田島のことも、目撃者の根室のことも、俺と赤野よりも知っているかもしれない。
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