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高校一年生(暗号・トリック中心)
タイムカプセル2
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「なんでこの写真が『お』なんだよ?」
最初の写真は、左の女の子が中指を一本出して、右の女の子は、人差し指を一本。変なポーズを取っている。
きっと、この指が何かを表しているのだということは分かっても、それ以上のことが俺にはわからない。
「情報を整理して考えてみてよ」
赤野は、解説してくれる。
「指は、何本まで使っている?」
「えっと、三本。それ以上に使っている写真はない」
と夏目が答える。
「そう。左と右と、左右三本ずつの指。計六本の指で、何かを表しているんだ。やっていることは、指を出すか折るか」
赤野に言われて、写真を見る。
確かにそうだ。
横に出した手。指を出すか折るかで何かを表現している。
「指だと思うから、分からないのかも。これが、点だとしたら、一番最初の写真は?」
「左は、中指だから真ん中が一つ。……右は、一番上が一つ」
今井が、つぶやく。
何かを思いついたようで、今井が左右三つずつの六つの点を書き、それの一部を、最初の写真のように黒く塗る。
「これ、どっかで見たことある」
俺は、この点の羅列を、日常で見たことがあることに気づく。なんだっけ? ほら、駅の切符売り場とか、自動販売機とか、炊飯器とか……。
「点字だよ。目の見えない人にわかるように、ボコボコとさせた点が、けっこう日用品には付いているでしょ?」
赤野の言葉に、
「そうだよ、それだよ!!」
俺は、大きく頷く。
「そして、写真には、『おんがくしつのこくばんのうら』……『音楽室の黒板の裏』と書かれている」
赤野の言葉に、ガタンと大きな音を立てて、木根刑事が立ち上がる。
「しゅ、周作。後で、後で説明するから!!!」
慌てて、木根刑事がどこかに電話しながら出て行ってしまった。
なんなのだろう。そんな大事件なのだろうか?
赤野は、平然と写真を片付ける。
「さ、帰ろうか」
ニコリと笑う赤野。
「なあ、何の事件なの?」
俺が聞けば、
「たぶん、殺人事件。それも、連続殺人だ」
と赤野は言った。
「え、なんで?ただの写真の暗号でしょ???」
今井が目を丸くする。
「だって、この程度の内容の暗号だよ? この写真の当事者達が生きて話が出来るなら、僕には聞かない。本人達に聞くよ」
「そりゃ、そうだけれども……」
夏目が頭をかく。
「たぶん、この四人は話ができない状態。何人が生きているのかは分からないけれども、誘拐されているか、死んでいるか、重体か」
赤野は説明する。
四人もの人間が巻き込まれる事件が起きた。
四人の接点は、この写真。四人を調べている内に出てきたのだろう。
だから、この事件の犯人を知るべく、この奇妙な写真の暗号を解きたかったのだろうと。
「なんで四人は、この写真を撮ったの?」
「よくあるじゃない。仲の良いグループでタイムカプセルを作ったんだよ。未来の手紙とか……。それにね、松尾君。四人じゃないよ」
「え?」
だって、写真には、四人しか写っていない。
「木根刑事のあの様子からして、この写真に写っていない五人目。この五人目が、現在の最重要参考人。だって、どう考えても、これ、撮影者がいるよね? その五人目が誰なのかを、知りたいんだよ」
「なんで、撮影者が怪しいんだよ?」
と夏目。
分かる。
だって、この四人の中の一人が犯人ってこともありうるはずだ。
「だって、制服で友達と写っているんだよ? この中の誰かの名前が判別できれば、卒業アルバムとかで、名前は調べられるよ。それなら、わざわざ、この写真の暗号の謎なんて、そんなに慌てて探さなくてもいいでしょ。木根刑事が慌てていたのは、犯人がまだ分からない。捕まっていないんだ。だから、どうしても、写真の謎が早く解きたくて、僕を呼び出した」
良いように利用されて困るよね。
なんて、赤野は笑う。いや、笑い事ではない。
誘拐だった場合には、人の命がかかっている。
「ねえ。行ってみる? 音楽室」
今井が、おずおずと提案する。
「行こう。俺らで何かできるかも」
「そうだよ。だって、後悔はしたくない」
夏目と俺も、今井に賛同する。
「だって……まあ、いいか。行ってみようか。制服を調べれば、場所も分かるし」
赤野は、しぶしぶ賛同してくれた。
最初の写真は、左の女の子が中指を一本出して、右の女の子は、人差し指を一本。変なポーズを取っている。
きっと、この指が何かを表しているのだということは分かっても、それ以上のことが俺にはわからない。
「情報を整理して考えてみてよ」
赤野は、解説してくれる。
「指は、何本まで使っている?」
「えっと、三本。それ以上に使っている写真はない」
と夏目が答える。
「そう。左と右と、左右三本ずつの指。計六本の指で、何かを表しているんだ。やっていることは、指を出すか折るか」
赤野に言われて、写真を見る。
確かにそうだ。
横に出した手。指を出すか折るかで何かを表現している。
「指だと思うから、分からないのかも。これが、点だとしたら、一番最初の写真は?」
「左は、中指だから真ん中が一つ。……右は、一番上が一つ」
今井が、つぶやく。
何かを思いついたようで、今井が左右三つずつの六つの点を書き、それの一部を、最初の写真のように黒く塗る。
「これ、どっかで見たことある」
俺は、この点の羅列を、日常で見たことがあることに気づく。なんだっけ? ほら、駅の切符売り場とか、自動販売機とか、炊飯器とか……。
「点字だよ。目の見えない人にわかるように、ボコボコとさせた点が、けっこう日用品には付いているでしょ?」
赤野の言葉に、
「そうだよ、それだよ!!」
俺は、大きく頷く。
「そして、写真には、『おんがくしつのこくばんのうら』……『音楽室の黒板の裏』と書かれている」
赤野の言葉に、ガタンと大きな音を立てて、木根刑事が立ち上がる。
「しゅ、周作。後で、後で説明するから!!!」
慌てて、木根刑事がどこかに電話しながら出て行ってしまった。
なんなのだろう。そんな大事件なのだろうか?
赤野は、平然と写真を片付ける。
「さ、帰ろうか」
ニコリと笑う赤野。
「なあ、何の事件なの?」
俺が聞けば、
「たぶん、殺人事件。それも、連続殺人だ」
と赤野は言った。
「え、なんで?ただの写真の暗号でしょ???」
今井が目を丸くする。
「だって、この程度の内容の暗号だよ? この写真の当事者達が生きて話が出来るなら、僕には聞かない。本人達に聞くよ」
「そりゃ、そうだけれども……」
夏目が頭をかく。
「たぶん、この四人は話ができない状態。何人が生きているのかは分からないけれども、誘拐されているか、死んでいるか、重体か」
赤野は説明する。
四人もの人間が巻き込まれる事件が起きた。
四人の接点は、この写真。四人を調べている内に出てきたのだろう。
だから、この事件の犯人を知るべく、この奇妙な写真の暗号を解きたかったのだろうと。
「なんで四人は、この写真を撮ったの?」
「よくあるじゃない。仲の良いグループでタイムカプセルを作ったんだよ。未来の手紙とか……。それにね、松尾君。四人じゃないよ」
「え?」
だって、写真には、四人しか写っていない。
「木根刑事のあの様子からして、この写真に写っていない五人目。この五人目が、現在の最重要参考人。だって、どう考えても、これ、撮影者がいるよね? その五人目が誰なのかを、知りたいんだよ」
「なんで、撮影者が怪しいんだよ?」
と夏目。
分かる。
だって、この四人の中の一人が犯人ってこともありうるはずだ。
「だって、制服で友達と写っているんだよ? この中の誰かの名前が判別できれば、卒業アルバムとかで、名前は調べられるよ。それなら、わざわざ、この写真の暗号の謎なんて、そんなに慌てて探さなくてもいいでしょ。木根刑事が慌てていたのは、犯人がまだ分からない。捕まっていないんだ。だから、どうしても、写真の謎が早く解きたくて、僕を呼び出した」
良いように利用されて困るよね。
なんて、赤野は笑う。いや、笑い事ではない。
誘拐だった場合には、人の命がかかっている。
「ねえ。行ってみる? 音楽室」
今井が、おずおずと提案する。
「行こう。俺らで何かできるかも」
「そうだよ。だって、後悔はしたくない」
夏目と俺も、今井に賛同する。
「だって……まあ、いいか。行ってみようか。制服を調べれば、場所も分かるし」
赤野は、しぶしぶ賛同してくれた。
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