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統治
福寿の欲しい物
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西寧は、国王になってから忙しく過ごしていた。
ようやく、軌道に乗り始めた国営の市場の運営。学び舎の建設も、目処が立ち始めた。
相変わらず、正妃の玉蓮とは、すれ違いばかりだが、それにも慣れてきた。そもそも、玉蓮は、政敵太政大臣の娘。玉蓮に子が出来れば、それはそのまま、太政大臣が西寧を失脚させる口実を与えることにつながる。
過去の国王の中にも、権力者の娘を娶り、その娘が無事に子を産んだ途端に、難癖をつけて国王を失脚させ、言葉もろくに話せない幼子を国王に付けて傀儡《くぐつ》にするという例は多々。
玉蓮には申し訳ないか、このまますれ違いを続けている方が、その方が好都合だと、西寧は思うようにして、玉蓮とのことは、放置していた。
「誕生日?」
「ええ。西寧様の妹姫、福寿様の六歳の誕生日が、本日でございます」
力上《りきじょう》にそう教えてもらった。
「ふうん……。では、祝ってやらねばなるまい」
何を喜ぶだろう? 西寧は、思案する。
六歳の女の子。それも、貴族。そんな境遇の子どもが何を欲するのかなんて、さっぱり分からない。
自分の六歳の時、雑巾一枚片手に、黒い虎精だと蔑まれ、ボロボロの服で働いていた。何も持たず、ただ、その日を生き延びるだけで精一杯だった。
残念ながら、少しも参考にならない。
「福寿様のことです。きっと西寧様のお渡しになる物でしたら、何でもお喜びでしょう。ですが……ご心配ならば、ご本人に聞いてみれば良いのです。今から、行って来てはいかがですか?」
壮羽が、そう助言をしてくれる。
確かに、本人に聞くのが一番だろう。
では、今日中に合いに行くかと、西寧は、忙しい予定を調整して福寿の元へ向かう。
福寿の身の回りを世話する女官に聞けば、福寿は以前西寧と遊んだ花畑で花を摘んでいた。
「福寿!」
西寧が声をかければ、振り返った福寿の顔は、満面の笑みとなる。
「お兄様!!」
福寿が走り寄ってくる。
「元気にしていたか? あまり構ってやれずにすまんな」
そういえば、最近は忙しくて、あまり遊んでやらなかった。寂しい想いをさせていたのではないだろうか? 西寧は、福寿の頭を撫でてやる。
「お兄様と会えないのは、寂しゅうございますが、大丈夫です! 福寿の様子は、壮羽様や力上様が、時々見に来ておりますから!」
ニコリと福寿は笑う。
あいつらも忙しいだろうにどうやって時間を作っているのだ? すごいな。
福寿にまで気を使ってくれる心遣い、ありがたい。
西寧は、素直に、力上と壮羽の気づかいに感謝する。
「そうだ。今日は誕生日なのだろう?」
福寿を抱き上げながら西寧が聞けば、
「はい、ですから、力上様と壮羽様に、お兄様との時間が欲しいとお願いしました。そうしたら、本当に、お兄様が来てくださって!」
と福寿が笑顔のまま答える。
貴族だろうか、貧しい身の上だろうが、子どもの欲しい物の本質は、それほど変わりはないのかもしれない。
「福寿。誕生日おめでとう! では、誕生日を祝って、料理を作ってやろう。今日は、ずっと一緒に過ごそう」
西寧がそう言えば、福寿が、きゃあー!と歓声を上げて、大喜びする。
あの時、小さな西寧が喉から手が出るほど欲しくて、手に入れられなかった物を、西寧が福寿に与えてあげられる。
それは、西寧の心の中の、幼い西寧まで癒される気がすることだった。
ようやく、軌道に乗り始めた国営の市場の運営。学び舎の建設も、目処が立ち始めた。
相変わらず、正妃の玉蓮とは、すれ違いばかりだが、それにも慣れてきた。そもそも、玉蓮は、政敵太政大臣の娘。玉蓮に子が出来れば、それはそのまま、太政大臣が西寧を失脚させる口実を与えることにつながる。
過去の国王の中にも、権力者の娘を娶り、その娘が無事に子を産んだ途端に、難癖をつけて国王を失脚させ、言葉もろくに話せない幼子を国王に付けて傀儡《くぐつ》にするという例は多々。
玉蓮には申し訳ないか、このまますれ違いを続けている方が、その方が好都合だと、西寧は思うようにして、玉蓮とのことは、放置していた。
「誕生日?」
「ええ。西寧様の妹姫、福寿様の六歳の誕生日が、本日でございます」
力上《りきじょう》にそう教えてもらった。
「ふうん……。では、祝ってやらねばなるまい」
何を喜ぶだろう? 西寧は、思案する。
六歳の女の子。それも、貴族。そんな境遇の子どもが何を欲するのかなんて、さっぱり分からない。
自分の六歳の時、雑巾一枚片手に、黒い虎精だと蔑まれ、ボロボロの服で働いていた。何も持たず、ただ、その日を生き延びるだけで精一杯だった。
残念ながら、少しも参考にならない。
「福寿様のことです。きっと西寧様のお渡しになる物でしたら、何でもお喜びでしょう。ですが……ご心配ならば、ご本人に聞いてみれば良いのです。今から、行って来てはいかがですか?」
壮羽が、そう助言をしてくれる。
確かに、本人に聞くのが一番だろう。
では、今日中に合いに行くかと、西寧は、忙しい予定を調整して福寿の元へ向かう。
福寿の身の回りを世話する女官に聞けば、福寿は以前西寧と遊んだ花畑で花を摘んでいた。
「福寿!」
西寧が声をかければ、振り返った福寿の顔は、満面の笑みとなる。
「お兄様!!」
福寿が走り寄ってくる。
「元気にしていたか? あまり構ってやれずにすまんな」
そういえば、最近は忙しくて、あまり遊んでやらなかった。寂しい想いをさせていたのではないだろうか? 西寧は、福寿の頭を撫でてやる。
「お兄様と会えないのは、寂しゅうございますが、大丈夫です! 福寿の様子は、壮羽様や力上様が、時々見に来ておりますから!」
ニコリと福寿は笑う。
あいつらも忙しいだろうにどうやって時間を作っているのだ? すごいな。
福寿にまで気を使ってくれる心遣い、ありがたい。
西寧は、素直に、力上と壮羽の気づかいに感謝する。
「そうだ。今日は誕生日なのだろう?」
福寿を抱き上げながら西寧が聞けば、
「はい、ですから、力上様と壮羽様に、お兄様との時間が欲しいとお願いしました。そうしたら、本当に、お兄様が来てくださって!」
と福寿が笑顔のまま答える。
貴族だろうか、貧しい身の上だろうが、子どもの欲しい物の本質は、それほど変わりはないのかもしれない。
「福寿。誕生日おめでとう! では、誕生日を祝って、料理を作ってやろう。今日は、ずっと一緒に過ごそう」
西寧がそう言えば、福寿が、きゃあー!と歓声を上げて、大喜びする。
あの時、小さな西寧が喉から手が出るほど欲しくて、手に入れられなかった物を、西寧が福寿に与えてあげられる。
それは、西寧の心の中の、幼い西寧まで癒される気がすることだった。
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