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統治
執務室
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正妃の間を訪ねた次の日の朝は、寝不足で西寧はフラフラだった。
執務室で承認の必要な書類を見ながらも、うつらうつらしている。
「意外と親睦は深められた……というところでしょうか?」
壮羽が尋ねれば
「違う……指一本触れてはいない」
と、西寧は首を横に振る。
「はぁ……?」
朝まで話し合う約束をしたのだと西寧が言えば、壮羽が苦笑いを浮かべる。
「しかし、困りましたね。これから七日間ほどは、毎日通うのがしきたりなんですよね? そうなれば、七日間も睡眠がとれないのはさすがに……」
七日間……西寧はうんざりする。
困った。最初のように怯えてはいないようだが、あまりに育ってきた環境が違い過ぎて、話は全くかみ合わない。眠くてうつらうつらすれば、玉蓮に叱られる。仕事を持ち込むことは禁じられてしまった。
「昼の内に睡眠をとっておきますか?」
「そんなわけにはいかない。七日も仕事が滞るのは困る」
王座に就いてから、西寧は早速改革に取り組んでいる。
市場の数値を確認して、国営の新しい店を作って他国と貿易を始めた。国の財政を見直して、無駄な支出を減らしている。
今立ち上げている事業が多々あるのだから、七日の足踏みは致命傷になりかねない。
「しかし、正妃を訪ねないのは、それこそ玉蓮様との今後を考えると……」
「ああ、ではこの会見を減らしましょうか? 就任後に謁見を求めている方々が何人かいらっしゃいますが、その方々をまとめて何人かで謁見するか、日を伸ばしてもらうか……」
「それしかないだろうな……壮羽、悪いが日程を調整してくれ」
西寧はうんざりしながら壮羽に頼んだ。
できれば、今こそ力を発揮して、実績を積みたいのに……。
「とりあえず、今は少しでもお眠り下さい。本日の謁見が始まる時間に起こしますよ……と、もう寝てしまったか」
西寧を大きな椅子に運んで、毛布を掛けてやれば、眠り心地が良くなったのか、心地よさそうな寝息が聞こえる。
あまりに働きすぎるのも困るが、とりあえず、色に溺れるタイプではなさそうで助かる。
玉蓮はなかなかの美人だし、西寧が色に溺れてしまうようならば、壮羽としては、西寧に耳の痛い忠告をしなければならなくなる。
どこの国の王だったか、色に溺れて国を滅ぼした国王がいた……。あれは、妲己という九尾の妖狐に騙されたのだとも聞くが、真偽は分からない。
女禍という女神をないがしろにして怒らせたことが一因だったとか……。
小さな西寧が色に溺れる姿は想像できないが、今後も西寧が王として正しくあることを、壮羽は祈る。
「まあ、西寧様なら、心配ないか……」
壮羽は、小さな主君に心からの信頼を寄せていた。
執務室で承認の必要な書類を見ながらも、うつらうつらしている。
「意外と親睦は深められた……というところでしょうか?」
壮羽が尋ねれば
「違う……指一本触れてはいない」
と、西寧は首を横に振る。
「はぁ……?」
朝まで話し合う約束をしたのだと西寧が言えば、壮羽が苦笑いを浮かべる。
「しかし、困りましたね。これから七日間ほどは、毎日通うのがしきたりなんですよね? そうなれば、七日間も睡眠がとれないのはさすがに……」
七日間……西寧はうんざりする。
困った。最初のように怯えてはいないようだが、あまりに育ってきた環境が違い過ぎて、話は全くかみ合わない。眠くてうつらうつらすれば、玉蓮に叱られる。仕事を持ち込むことは禁じられてしまった。
「昼の内に睡眠をとっておきますか?」
「そんなわけにはいかない。七日も仕事が滞るのは困る」
王座に就いてから、西寧は早速改革に取り組んでいる。
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今立ち上げている事業が多々あるのだから、七日の足踏みは致命傷になりかねない。
「しかし、正妃を訪ねないのは、それこそ玉蓮様との今後を考えると……」
「ああ、ではこの会見を減らしましょうか? 就任後に謁見を求めている方々が何人かいらっしゃいますが、その方々をまとめて何人かで謁見するか、日を伸ばしてもらうか……」
「それしかないだろうな……壮羽、悪いが日程を調整してくれ」
西寧はうんざりしながら壮羽に頼んだ。
できれば、今こそ力を発揮して、実績を積みたいのに……。
「とりあえず、今は少しでもお眠り下さい。本日の謁見が始まる時間に起こしますよ……と、もう寝てしまったか」
西寧を大きな椅子に運んで、毛布を掛けてやれば、眠り心地が良くなったのか、心地よさそうな寝息が聞こえる。
あまりに働きすぎるのも困るが、とりあえず、色に溺れるタイプではなさそうで助かる。
玉蓮はなかなかの美人だし、西寧が色に溺れてしまうようならば、壮羽としては、西寧に耳の痛い忠告をしなければならなくなる。
どこの国の王だったか、色に溺れて国を滅ぼした国王がいた……。あれは、妲己という九尾の妖狐に騙されたのだとも聞くが、真偽は分からない。
女禍という女神をないがしろにして怒らせたことが一因だったとか……。
小さな西寧が色に溺れる姿は想像できないが、今後も西寧が王として正しくあることを、壮羽は祈る。
「まあ、西寧様なら、心配ないか……」
壮羽は、小さな主君に心からの信頼を寄せていた。
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