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ダンジョン攻略
槍の精霊
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ハラハラと涙を流すゲボルグさん。
え、何? ほんと何が起こったの?
静かに前へと歩み出す。
「お前! ゲボルグ!! 来るな! ここは通さん!」
慌てて山羊ボスが戦闘体制に入って、ゲボルグさんに剣を向ける。
「悠里殿! 早く! 早く槍をロキ様から抜け!」
いまだに名前の分からない山羊ボスが、悠里に命令する。
「そう言うけれどさ、ロキ痛がるし、無理じゃない?」
……そうか、あの赤い髪のラスボスは、ロキっていうのか……へ、ロキ?
「ろ、ロキ??? ロキってあれか! RPG常連の破壊神。北欧神話の破壊神。え、じゃあ、リリーナさんの言っていたクーフーリンの槍って、マジでケルト神話の英雄の槍??」
すごい。
今までサラリと聞き流していたけれど、そこはしっかりとファンタジー世界なんだ。
ロキとは、敵キャラとしてゲームキャラに採用されている確率の高い北欧神話の破壊神。
オーディンという最高神と対決してラグナロクで戦ったとか、そんな神話があったはずだ。
突然のビッグネームの登場に、俺は興奮する。
今まで、今までファンタジー感がどうも指さし呼称だの武蔵小杉駅だの元の世界の価値観に侵食されて、気分が載らなくて困っていたが、ロキの登場で、グッとファンタジー感が上がったんじゃないか?
そして、問題のクーフーリンの槍。
ケルト神話の英雄クーフーリンが持っていた槍。その槍の名は、ゲボルグ。ゲイ・ボルグと呼ばれる。
ゲボルグさんと同じ名前だ。
え、どういうこと?
てか、そこ、クーフーリンの槍で良いの?
普通、ロキにぶっ刺さるなら、そりゃあ最高神オーディンの槍でしょう?
「人間の世界の神話は分からないですねぇ。ですが、あの槍は、まぎれもなくゲボルグ。そして、あの魔人は、まごうことなくロキ。魔王に従う四天王が一人です」
リリーナさんが、そう解説してくれた。
まあ、ここは異世界マッサンランド。どっかの健康ランドにのような名前の異世界。
俺たちの世界の神話とは、関連があるようでないのだろう。
深く考えれば、駄目だ。
その辺は、ざっくりモザイクでもかけておこう。
ここは、異世界。い~せ~か~い~!! そう、もうその夢の世界観をぶっ壊しそうなことには、モザイクをかけて見ないでおこう。
まあ、向こうの世界の神話だって矛盾だらけだし、RPGは、色々な神話に影響されている。
「いいから!! お前、リリーナ!! そこのゲボルグを止めろ!!」
山羊太郎が、のんびりとしたリリーナさんに命令する。
「私がですか? 別にその必要はないでしょう?」
「馬鹿エルフ!! ロキ様が消滅するだろうか!!」
「馬鹿エルフ? それで、どうしてゲボルグをとめると思うのですか? ゲボルグ!! 遠慮なく槍を取り返しちゃってください!!」
リリーナさんに言われるまでもなく、ゲボルグさんが、静かに歩みを進める。
「悠里殿!! 早く!! 手伝うから!!」
山羊が、悠里の腰を持つ。
「へ、変態!! チカン!! 触るな!!」
「変態? 失礼な! 槍を引き抜くのに、悠里殿を引っ張って手伝おうとしただけだ」
「私を引っ張っても意味ないでしょ? 自分で槍を引っ張りなさいよ」
「出来るなら、とっくの百年前にやっている!!」
「お、お前ら!! そうこう言っている内にゲボルグが近づいてきているではないか!! ほら、追い返さければ、儂が消滅する!!」
なんだか、グダグダのコントのような様子の悠里達。
「こ、この……!!」
山羊男の手から炎が噴き出る。
グダグダでも、さすがに中ボス。山羊男の放った紅蓮の炎は、ゴウと音を立てて渦を巻いてゲボルグさんに襲い掛かる。
「この私を忘れてはいけませ~ん♪」
リリーナさんの手から、魔法が放たれる。
「('ω' )三('ω')三( 'ω')」
いや、だから何? その魔法詠唱。
おおよそ人間には理解できない言語でリリーナさんが魔法を詠唱すれば、リリーナさんが放った魔法は、ゲボルグさんの前で大きな光のシールドとなる。
「前回は、あと一歩のところで追い返されて槍を取られてしまいましたが、ついに槍を取り返しに来ました!!」
つまりは、前回……たぶん百年以上前に、ゲボルグさんとリリーナさんは、この城へ来た。
そして、ロキを串刺しにしたが、とどめをさす直前で、ロキ達の攻撃で退いたと。
今回、リリーナさん達が、このダンジョンへ来たのは、槍を探したいからとは、聞いていたけれど……なあ、言ってよ。先に、説明してよ、そんな重要なこと!!
「我が半身よ。ようやく」
リリーナさんのシールドの力で、ゲボルグさんは難なくロキの前に立つ。
悠里と山羊男は、ゲボルグさンの雰囲気の圧されて、呆然と見守っている。
「槍よ。その精たるゲボルグの手に戻れ」
グッとゲボルグさんが槍を持った瞬間に、真っ白な閃光が部屋を照らした。
あまりの光に、俺は目を開けていられなかった。
次に、目を開いた時には、もうロキの姿は部屋のどこにも存在しなかった。
ゲボルグさんが槍を手に嬉しそうにしていた。
四天王の一人、封印されし炎の魔人ロキは、完全にこの世界から消滅した。
え、何? ほんと何が起こったの?
静かに前へと歩み出す。
「お前! ゲボルグ!! 来るな! ここは通さん!」
慌てて山羊ボスが戦闘体制に入って、ゲボルグさんに剣を向ける。
「悠里殿! 早く! 早く槍をロキ様から抜け!」
いまだに名前の分からない山羊ボスが、悠里に命令する。
「そう言うけれどさ、ロキ痛がるし、無理じゃない?」
……そうか、あの赤い髪のラスボスは、ロキっていうのか……へ、ロキ?
「ろ、ロキ??? ロキってあれか! RPG常連の破壊神。北欧神話の破壊神。え、じゃあ、リリーナさんの言っていたクーフーリンの槍って、マジでケルト神話の英雄の槍??」
すごい。
今までサラリと聞き流していたけれど、そこはしっかりとファンタジー世界なんだ。
ロキとは、敵キャラとしてゲームキャラに採用されている確率の高い北欧神話の破壊神。
オーディンという最高神と対決してラグナロクで戦ったとか、そんな神話があったはずだ。
突然のビッグネームの登場に、俺は興奮する。
今まで、今までファンタジー感がどうも指さし呼称だの武蔵小杉駅だの元の世界の価値観に侵食されて、気分が載らなくて困っていたが、ロキの登場で、グッとファンタジー感が上がったんじゃないか?
そして、問題のクーフーリンの槍。
ケルト神話の英雄クーフーリンが持っていた槍。その槍の名は、ゲボルグ。ゲイ・ボルグと呼ばれる。
ゲボルグさんと同じ名前だ。
え、どういうこと?
てか、そこ、クーフーリンの槍で良いの?
普通、ロキにぶっ刺さるなら、そりゃあ最高神オーディンの槍でしょう?
「人間の世界の神話は分からないですねぇ。ですが、あの槍は、まぎれもなくゲボルグ。そして、あの魔人は、まごうことなくロキ。魔王に従う四天王が一人です」
リリーナさんが、そう解説してくれた。
まあ、ここは異世界マッサンランド。どっかの健康ランドにのような名前の異世界。
俺たちの世界の神話とは、関連があるようでないのだろう。
深く考えれば、駄目だ。
その辺は、ざっくりモザイクでもかけておこう。
ここは、異世界。い~せ~か~い~!! そう、もうその夢の世界観をぶっ壊しそうなことには、モザイクをかけて見ないでおこう。
まあ、向こうの世界の神話だって矛盾だらけだし、RPGは、色々な神話に影響されている。
「いいから!! お前、リリーナ!! そこのゲボルグを止めろ!!」
山羊太郎が、のんびりとしたリリーナさんに命令する。
「私がですか? 別にその必要はないでしょう?」
「馬鹿エルフ!! ロキ様が消滅するだろうか!!」
「馬鹿エルフ? それで、どうしてゲボルグをとめると思うのですか? ゲボルグ!! 遠慮なく槍を取り返しちゃってください!!」
リリーナさんに言われるまでもなく、ゲボルグさんが、静かに歩みを進める。
「悠里殿!! 早く!! 手伝うから!!」
山羊が、悠里の腰を持つ。
「へ、変態!! チカン!! 触るな!!」
「変態? 失礼な! 槍を引き抜くのに、悠里殿を引っ張って手伝おうとしただけだ」
「私を引っ張っても意味ないでしょ? 自分で槍を引っ張りなさいよ」
「出来るなら、とっくの百年前にやっている!!」
「お、お前ら!! そうこう言っている内にゲボルグが近づいてきているではないか!! ほら、追い返さければ、儂が消滅する!!」
なんだか、グダグダのコントのような様子の悠里達。
「こ、この……!!」
山羊男の手から炎が噴き出る。
グダグダでも、さすがに中ボス。山羊男の放った紅蓮の炎は、ゴウと音を立てて渦を巻いてゲボルグさんに襲い掛かる。
「この私を忘れてはいけませ~ん♪」
リリーナさんの手から、魔法が放たれる。
「('ω' )三('ω')三( 'ω')」
いや、だから何? その魔法詠唱。
おおよそ人間には理解できない言語でリリーナさんが魔法を詠唱すれば、リリーナさんが放った魔法は、ゲボルグさんの前で大きな光のシールドとなる。
「前回は、あと一歩のところで追い返されて槍を取られてしまいましたが、ついに槍を取り返しに来ました!!」
つまりは、前回……たぶん百年以上前に、ゲボルグさんとリリーナさんは、この城へ来た。
そして、ロキを串刺しにしたが、とどめをさす直前で、ロキ達の攻撃で退いたと。
今回、リリーナさん達が、このダンジョンへ来たのは、槍を探したいからとは、聞いていたけれど……なあ、言ってよ。先に、説明してよ、そんな重要なこと!!
「我が半身よ。ようやく」
リリーナさんのシールドの力で、ゲボルグさんは難なくロキの前に立つ。
悠里と山羊男は、ゲボルグさンの雰囲気の圧されて、呆然と見守っている。
「槍よ。その精たるゲボルグの手に戻れ」
グッとゲボルグさんが槍を持った瞬間に、真っ白な閃光が部屋を照らした。
あまりの光に、俺は目を開けていられなかった。
次に、目を開いた時には、もうロキの姿は部屋のどこにも存在しなかった。
ゲボルグさんが槍を手に嬉しそうにしていた。
四天王の一人、封印されし炎の魔人ロキは、完全にこの世界から消滅した。
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親父さん、かっこよすぎるのに「武蔵小杉」!!!そして「横浜駅」!!!わかる!わかるけど!!!
さすがサラリーマン……。
はまち屋さん!!
感想ありがとうございます😊
リーマン知識で異世界へGO!
親父さん、これからも頑張ります!
更新遅めですが、必ず完結まで書きますので!!