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ダンジョン攻略

ダンジョン駅

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 複雑なダンジョン。
 登ったかと思えば、下りの階段。緩い坂道があったと思えば、また下りの道。
 微妙に角度を変える廊下に、自分がどの方角を向いているのかすら分からなくなる。
 何度も繰り返し上下に移動させられ、方角を見失うことで、自分が今どこにいるのかが分からなくなり、遭難させられそうになる。

「分かるか?」
「何がだよ?」

 親父に「分かるか?」と問われて、俺は眉間に皺を寄せる。
 この状況で、何をどう分かれというのか。

「このダンジョンの上下の移動、武蔵小杉駅の似ているのだ」
「む、武蔵小杉駅???」

 なんだかファンタジー世界に似つかわしくない名前が飛び出して、俺の声は裏返る。
 確かに親父の言う通り、あの駅は、ダンジョンのように複雑な構造になっている。
 長い長いおかしな角度の通路を通って、別のホームへ向かう不思議な造りの駅。案内板がなければ、初めてあの駅を訪れた者は、目的の場所にたどり着けないだろう。

 確かに、このダンジョンは、案内板の無い武蔵小杉駅と考えられなくもない……かな?

「ダンジョン攻略の名手だからな」

 ポンポンとゲボルグさんが、親父の肩を叩く。

「会社員として、全国のありとあらゆるダンジョン駅を制してきた私だ! 任せておくがいい!」

 あ……。ね。普通の会社員時代に、出張に行って、苦労した経験が、ここに生きている訳だ。
 もっと、どっぷりファンタジー世界に浸りたい俺は、このちょいちょいと生かされる普通の会社員時代の親父の経験談に、ツッコミ役に回らざるを得ない。

 違うだろ。もっと、ダンジョンっていう物は、鉄球を右から左に動かすことで、新しい部屋が出現したりさ、弓矢を使って何かを射抜けば、別の場所に飛ばされたりとかさ。

 侵入して欲しくないなら、どうしてそんな仕掛け作った? え、宝箱に方位磁石入れておいてくれるのって親切すぎだろ? なんて思いながら、知恵と勇気で攻略していくものだろう?

 ここに来て、何だよ。武蔵小杉駅って。
 そういう現実に引き戻すの、やめてくれない?

「以前取り組んだダンジョンは、無限に増殖するダンジョンだったのですが。それも、あっという間に解いてしまって……」

 リリーナさん、それたぶん横浜駅。
 今なおガウディのサクラダファミリアみたいに改築と増築を続ける、現代日本の無限城こと横浜駅。
 親父は、横浜駅を歩く要領で攻略したに違いない。

「同じ場所が別のエリアにもあって……」
「そうそう。あれは難しかったです! だって、見えている場所に真っ直ぐ辿り着けなくて!」

 それは、大阪の梅田駅かな?
 「梅田」という名前の駅がいくつも存在する謎な場所。
 複雑な通路設定で、すぐ横の場所に中々辿り着けない不思議なエリア。

 いいんだ。駅シリーズはもう。
 いいから、ファンタジー世界のダンジョンを堪能させてくれ。
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