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冒険者は多くを語らない
異世界冒険者のためのギルドへ
しおりを挟む「えっとですねぇ~!」
多くを語らないクソ親父のかわりにリリーナさんが、俺と悠里に色々と説明してくれる。
リリーナさんの話によれば、親父は十年ほど前からこの世界に平日の昼間は通ってきて、先ほどの怪獣……魔力を帯びているので魔物らしいのだが、を退治しているのだという。
魔物を退治した報酬、魔物の遺体から採取した魔元素という魔力の塊と、ダンジョンで見つけた宝物。それを、リリーナさんとゲボルグさんと親父で山分けして換金。それを親父は、給料のフリして持ち帰っていたのだと。
がっつり冒険者。
俺がラノベで憧れた、剣と魔法と美人エルフの世界を、このクソ親父が毎日体験していたなんて!
「隆さん! 本当に強くって! この門の付近の魔物はずいぶん減ったのよ!」
定時出社、定時退社をこよなく愛する親父は、遠くのダンジョンにはめったに行かない。
『英雄の門』と呼ばれる、俺達の世界と通じる門から遠く離れることはない。
定時で退社出来る範囲で戦い、魔物を倒して帰宅する日々。
「しかし、あれだな。今からこいつらの通行証をギルドに申請して……一週間くらい? それがなければ帰れんだろう?」
ゲボルグさんの言う『通行証』とは、悠里が親父の鞄から見つけたあのカード。
キャバクラの会員証では無かったようだ。
「じゃあ……まあ、仕方ない。一週間もいるなら、ちょっと遠征してみるか?」
「隆さん! すごい! あ、じゃあ行きたいダンジョンがあるから、調べておくわ!」
リリーナさんがウキウキしている。
ゲボルグさんを連れて、調べてくると言って行ってしまった。
俺と悠里と親父は、通行証を申請するためにギルドへ。
酒場と併設されたギルド。通行証を申請する異世界人サポート窓口には、あの時に洞窟で見かけた蝙蝠が座っている。
「あ! あの時の蝙蝠!」
悠里の言葉に、蝙蝠が目を細める。
「なんだ。あなた達、隆の知り合いだったのね」
「シシリア。この子達は私の子。保志と悠里だ。登録して通行証を発行してやってくれ」
親父の言葉に、シシリアと呼ばれた蝙蝠が、「分かった」。と頷く。
蝙蝠は、一瞬で人間の姿に変身する。
巨乳小悪魔。
黒い蝙蝠の翼が背中に生えて、翼の邪魔にならないようにするためか、やたら露出の高い服を着ている。
あの蝙蝠、こんな小悪魔お姉さんだったのか。
てきぱきと書類を整えて、俺達の前に羽ペンと一緒に出してくる。
「ここに名前、職業……、そうね、この世界での職業欄には、『冒険者』と書いておけばいいわ。どうせ、隆と一緒にその辺のダンジョンでも潜るんでしょう?」
そうは言われても、俺も悠里も、この世界の文字は……あれ、分かるよ。
あの不味い魔法薬の効果なのか、すらすらと、この異世界の文字が分かる。
すげえ、語学のテストの時にあの薬手に入らないかな?
「あ、ねぇ。ちなみになんだけれども、あの薬飲んだんでしょ? じゃあ、きっと、テストで使えないかなぁ~なんて邪なこと考えているでしょ? みんな大体、若い異世界人はそんなこと考えるのよね。それで密輸しようとしたり。でも、駄目よ。あの薬は、この世界でのみ有効だし、分かるようになる言語は、この国の公用語だけだから」
そう言ってシシリアさんは笑う。
隣で悠里が、駄目なの~? と、がっかりしている。
みんな考えることは一緒らしい。
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