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それからの生活
からかわれ上手な柏木君 5
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キャンプ場。テントの中。
僕と小松と西島が、ノートパソコンのキーボードを叩きながら話すのは、例の同居問題のこと。
「ふうん。じゃあ、しばらくは、今までのように別居生活を続けるんだ」
西島は、高速でデータを打ち込みながら僕にそう言う。
「まあ、いいんじゃない? ノドジロシトドなんて、四つも性別があって、生殖確率は四分の一なんだし。人間に産まれて、パートナーが見つかっただけでめでたい。細かいところは適当でいいよ」
西島達が、同居で無くていいのかと言い出した気はしたのだが。
結局、ただのからかいだったのだろう。
ノドジロシトドは、珍しい小鳥。性別が四つもあることで有名だ。
アメリカ北部のアディロンダック山脈辺りに生息しているんだったか。
「パートナーかぁ。そんな簡単に見つからないんだよなぁ。どうやって見つけるのがいい?」
小松がぼやく。
「性別が二個しかない人間なんだから、ノドジロシトドよりは、出会いがあるはずよ。だから、頑張れば?」
「そう言ってもなぁ。なかなか」
待て。西島は確か女性では無かったか? 一応出会ってはいると思うのだが。
だが、小松も西島も、お互いに異性とは判別していなさそうだ。
僕だって今更西島を、女性を見る目で見ようとは思わないけれども……。
案外、人間も性別は多様なのかもしれない。四つどころの騒ぎではないのかも。
脳が発達している分、異性として判別するには、様々な条件をクリアしなければ、無いわ~。ということになってしまいそうだ。
「リア充よ。薫さんに見限られないように、頑張るのだよ」
「そうですね。こんな収入のない奴をもらってくれる有難い人、他にいないですから」
「そうだよ。収入だよ! 学生で結婚して、子ども出来たらどうするんだよ。どうやって子ども育てるんだよ」
確か、薫さんも会社でそんな話をされたとか言っていたな。
やっぱり、結婚という物には、子どもという問題が付いて回るのだろう。
結婚していなくても、子どもが出来る人もいるとは思うのだけれども、結婚という一言によって、その問題はさらに現実味を増すということか。
「まだ、二人で結婚生活を始めたばかりですからね。そこまで頭が回りませんが、そうですね。院を中退して働くことになるのでしょうか……」
薫さん、院を辞めると言ったら反対するだろうな。
そんな必要はない! と怒られそうだ。だが、現実問題として、子どもを育てるなら、そういう選択が一番現実的になるのではないだろうか?
「やっぱ、そういう話になっちゃうかぁ……それは、困るのよね」
「困りますか?」
「そりゃそうよ。研究に人では必要だし、からかう相手はいなくなるし。小松では、ちょっと物足りないのよね。やっぱり、バーバ・リア充が一番からかい甲斐があるのよ」
西島? それは、どういうこと?
それに、分かるからって、僕の呼び方多すぎない? バーバ・リア充、バーバ・モジャ、サー・柏木・ド・本田・優一・ベルシュラックだっけ? はぐれリア充ってのもあったな。後はなんだっけ?
「そうだよなぁ。柏木がいないと困るな。ゼミに癒しが足りなくなる」
小松が笑う。
結局、僕の役割は、からかい要員? ねえ、一応、僕、二浪しているから年上なんだけれども。
どうしてこうなった? まあ、良いと言えば、いいんだけれども。
僕と小松と西島が、ノートパソコンのキーボードを叩きながら話すのは、例の同居問題のこと。
「ふうん。じゃあ、しばらくは、今までのように別居生活を続けるんだ」
西島は、高速でデータを打ち込みながら僕にそう言う。
「まあ、いいんじゃない? ノドジロシトドなんて、四つも性別があって、生殖確率は四分の一なんだし。人間に産まれて、パートナーが見つかっただけでめでたい。細かいところは適当でいいよ」
西島達が、同居で無くていいのかと言い出した気はしたのだが。
結局、ただのからかいだったのだろう。
ノドジロシトドは、珍しい小鳥。性別が四つもあることで有名だ。
アメリカ北部のアディロンダック山脈辺りに生息しているんだったか。
「パートナーかぁ。そんな簡単に見つからないんだよなぁ。どうやって見つけるのがいい?」
小松がぼやく。
「性別が二個しかない人間なんだから、ノドジロシトドよりは、出会いがあるはずよ。だから、頑張れば?」
「そう言ってもなぁ。なかなか」
待て。西島は確か女性では無かったか? 一応出会ってはいると思うのだが。
だが、小松も西島も、お互いに異性とは判別していなさそうだ。
僕だって今更西島を、女性を見る目で見ようとは思わないけれども……。
案外、人間も性別は多様なのかもしれない。四つどころの騒ぎではないのかも。
脳が発達している分、異性として判別するには、様々な条件をクリアしなければ、無いわ~。ということになってしまいそうだ。
「リア充よ。薫さんに見限られないように、頑張るのだよ」
「そうですね。こんな収入のない奴をもらってくれる有難い人、他にいないですから」
「そうだよ。収入だよ! 学生で結婚して、子ども出来たらどうするんだよ。どうやって子ども育てるんだよ」
確か、薫さんも会社でそんな話をされたとか言っていたな。
やっぱり、結婚という物には、子どもという問題が付いて回るのだろう。
結婚していなくても、子どもが出来る人もいるとは思うのだけれども、結婚という一言によって、その問題はさらに現実味を増すということか。
「まだ、二人で結婚生活を始めたばかりですからね。そこまで頭が回りませんが、そうですね。院を中退して働くことになるのでしょうか……」
薫さん、院を辞めると言ったら反対するだろうな。
そんな必要はない! と怒られそうだ。だが、現実問題として、子どもを育てるなら、そういう選択が一番現実的になるのではないだろうか?
「やっぱ、そういう話になっちゃうかぁ……それは、困るのよね」
「困りますか?」
「そりゃそうよ。研究に人では必要だし、からかう相手はいなくなるし。小松では、ちょっと物足りないのよね。やっぱり、バーバ・リア充が一番からかい甲斐があるのよ」
西島? それは、どういうこと?
それに、分かるからって、僕の呼び方多すぎない? バーバ・リア充、バーバ・モジャ、サー・柏木・ド・本田・優一・ベルシュラックだっけ? はぐれリア充ってのもあったな。後はなんだっけ?
「そうだよなぁ。柏木がいないと困るな。ゼミに癒しが足りなくなる」
小松が笑う。
結局、僕の役割は、からかい要員? ねえ、一応、僕、二浪しているから年上なんだけれども。
どうしてこうなった? まあ、良いと言えば、いいんだけれども。
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