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幹事45
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「今度、一緒に飲みに行きましょう」
そう水島に言われた。
もちろん、純然たる推し活の為の語り合いの為の飲み。
会社の同じ推し様に傾倒している人がいるのは、嬉しい。
今まで、ネット上でしか出会ったことがないし、私の推し活は、推し様の過去登場作品をニタニタしながら何度も眺めるか、新しい作品を探しまくって、日本で公開される日を心待ちにするか、ネット上の同志の意見に激しく縦に首を振り続けて、いいねを連打するかくらいだ。
それが、現実世界で、このように推し様の良さを語り合えるなんて、とても嬉しい。
これが、女性ならば、即飲みにでも行って、推しの良さを心おきなく語り合うのだが、残念ながら、水島は男性だ。
柏木という彼氏がいるのに、水島と二人で飲みに行くのは、やはり駄目な気がする。だって、私が、柏木が女性と二人でご飯を食べにいくところを目撃したら、やはりショックを受けるし、いい気はしない。
駄目だよね、やっぱり。
ということで、
「彼氏がいるから。悪いけど、推し活といえども、男性と二人で飲みに行くのは、遠慮する」
と、答えておく。
そう、もう二、三人いるならば、話は違うのだ。皆で飲むなら、それはセーフだろう。今後、同胞が増える時を心から待って、その時に飲めばよいのだ。
その時に、楽しみは取っておこう。
「え、飲み会の話ですか?」
待て、幸恵。話に入ってくるな。面倒くさい。
もう私に絡まないでほしいのに、同じ部署で働く幸恵。生息地が近いから、どうしても幸恵とは縁が切れない。
転属願い出そうかと思うレベルだ。
だが、幸恵のこと以外には、柿崎とも他のメンバーともうまくやっているし、西根課長は素晴らしい。業務内容も、嫌いではない。
出来れば、やはりこの部署から動きたくない。
「本田先輩、行きませんか?」
「だから、行かないって」
「じゃあ、水島さん。せっかくだし、二人で行きませんか?」
幸恵がウキウキしている。何がどうせっかくなのか?
どうしよう。
これで襲われているのが柏木なら助けるが……。水島の回避能力はどの程度なんだろう?
チラリと水島を見れば、助けて、と目が訴えている。
ええ~。マジか。
「あ、じゃあさ。柿崎に言って、水島さんの歓迎会を企画したら?」
これでどうだ。部署全体の飲み会に規模を広げれば、幸恵に襲われないだろう。
「わあ、それ嬉しいです。まだ話したことのない人が、チラホラいましてですね」
水島も話にのってくる。ここでのるのが、正解だと、彼も判断したのだろう。
「松本さん、盛り上げるの得意だし、幹事お願いね」
お金の管理を含めて、一抹の不安は残るが、ここは幸恵に任せよう。
水島が気になっているというのなら、幸恵にとって良い所をみせるチャンスにもなるし、部署としても歓迎会の幹事を引き受けてくれるなら助かるし、ウィンウィンと言えるはず。
「じゃあ、会の進行は、私がやります。だから、会場探しや時間調整、お金の管理なんかの細々とした雑務だけ、本田先輩よろしくお願いします」
「はあ?」
いや、その細々とした雑務が、幹事の仕事でしょうが。
ていうか、全然、細々していないし。それが、メインでしょ???
心の声をうまく言葉に出せない私は、力なく、ニャアと鳴く。モドキならば、それで分かってくれるのだが、言葉に出しても通じない幸恵にそれで伝わるわけもなく。
面倒な役だけが、私に残された。
そう水島に言われた。
もちろん、純然たる推し活の為の語り合いの為の飲み。
会社の同じ推し様に傾倒している人がいるのは、嬉しい。
今まで、ネット上でしか出会ったことがないし、私の推し活は、推し様の過去登場作品をニタニタしながら何度も眺めるか、新しい作品を探しまくって、日本で公開される日を心待ちにするか、ネット上の同志の意見に激しく縦に首を振り続けて、いいねを連打するかくらいだ。
それが、現実世界で、このように推し様の良さを語り合えるなんて、とても嬉しい。
これが、女性ならば、即飲みにでも行って、推しの良さを心おきなく語り合うのだが、残念ながら、水島は男性だ。
柏木という彼氏がいるのに、水島と二人で飲みに行くのは、やはり駄目な気がする。だって、私が、柏木が女性と二人でご飯を食べにいくところを目撃したら、やはりショックを受けるし、いい気はしない。
駄目だよね、やっぱり。
ということで、
「彼氏がいるから。悪いけど、推し活といえども、男性と二人で飲みに行くのは、遠慮する」
と、答えておく。
そう、もう二、三人いるならば、話は違うのだ。皆で飲むなら、それはセーフだろう。今後、同胞が増える時を心から待って、その時に飲めばよいのだ。
その時に、楽しみは取っておこう。
「え、飲み会の話ですか?」
待て、幸恵。話に入ってくるな。面倒くさい。
もう私に絡まないでほしいのに、同じ部署で働く幸恵。生息地が近いから、どうしても幸恵とは縁が切れない。
転属願い出そうかと思うレベルだ。
だが、幸恵のこと以外には、柿崎とも他のメンバーともうまくやっているし、西根課長は素晴らしい。業務内容も、嫌いではない。
出来れば、やはりこの部署から動きたくない。
「本田先輩、行きませんか?」
「だから、行かないって」
「じゃあ、水島さん。せっかくだし、二人で行きませんか?」
幸恵がウキウキしている。何がどうせっかくなのか?
どうしよう。
これで襲われているのが柏木なら助けるが……。水島の回避能力はどの程度なんだろう?
チラリと水島を見れば、助けて、と目が訴えている。
ええ~。マジか。
「あ、じゃあさ。柿崎に言って、水島さんの歓迎会を企画したら?」
これでどうだ。部署全体の飲み会に規模を広げれば、幸恵に襲われないだろう。
「わあ、それ嬉しいです。まだ話したことのない人が、チラホラいましてですね」
水島も話にのってくる。ここでのるのが、正解だと、彼も判断したのだろう。
「松本さん、盛り上げるの得意だし、幹事お願いね」
お金の管理を含めて、一抹の不安は残るが、ここは幸恵に任せよう。
水島が気になっているというのなら、幸恵にとって良い所をみせるチャンスにもなるし、部署としても歓迎会の幹事を引き受けてくれるなら助かるし、ウィンウィンと言えるはず。
「じゃあ、会の進行は、私がやります。だから、会場探しや時間調整、お金の管理なんかの細々とした雑務だけ、本田先輩よろしくお願いします」
「はあ?」
いや、その細々とした雑務が、幹事の仕事でしょうが。
ていうか、全然、細々していないし。それが、メインでしょ???
心の声をうまく言葉に出せない私は、力なく、ニャアと鳴く。モドキならば、それで分かってくれるのだが、言葉に出しても通じない幸恵にそれで伝わるわけもなく。
面倒な役だけが、私に残された。
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