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バレンタイン決戦
とにかく用意したプレゼントを!
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これがカエル化現象ってやつ?
憧れの存在でも、身近になればなるほど、素敵さが減少するというやつ。
なんだか、ただ憧れていただけの杉下君が、普通の存在に見えてきた。
それでも私には、眩しいくらいに素敵なんだけれども、以前のように神格化して直視できないほどではない気がする。
そりゃ、そうよね。
うん、冷静な気持ちを取り戻せてよかった。(深く考えちゃ駄目。そう思うべきなのよ!)
「あ、あのさぁ。ぷ、プレゼントを用意してきたの」
彩音ちゃんも相当戸惑っているようだ。
でも、そうよ。プレゼント!
別に彩音ちゃんも私も杉下君を嫌いになったわけではない→プレゼントは用意している→時は天下無敵のバレンタインデー。
→そして、私達は授業をサボってまで、この人の少ない丘の上にいるのだ(今ココ)
これで、何も渡さないで終わる方がおかしいのだ。
「そう。私もあるの」
私は、気を取り直して鞄の中を探る。
「私から渡していい?」
彩音ちゃんの言葉に、私は大きく頷く。
「せっかく作ったから、二人に食べてもらいたくて」
そう言って、彩音ちゃんが手渡してくれたのは、メロンパン。
やっぱりメロンパンだった。
私のストーカーメモにも書いていた通り、杉下君の好物のメロンパン。
彩音ちゃんも当然のようにその情報は知っていたようだ。
そりゃ、そうよね。
彩音ちゃんが、そのくらいのことを調べない訳がない。
メロンパン、避けて良かった。
可愛くラッピングされたメロンパンを、杉下君に一つ。そして、私にも。
え、私にも?
「ありがとう。でも、私にも?」
「もちろんよ。だって、三人で待ち合わせたのよ? 菜々子ちゃんに渡さない訳がないじゃない」
「彩音ちゃん……」
杉下君への恋心を諦めようとしていた彩音ちゃん。本当はこのメロンパンにどんなに切ない言葉を添えれ渡そうとしていたのかは、今となっては分からない。
阻止できてよかった。
「二人のこれからをお祝いするつもりでつくったのだけれどもね……でも、菜々子ちゃんの言う通り。私、もう一度考えてみる。自分の心、これからのこと」
彩音ちゃんは、私にこっそりと小声でそう言った。
「あけて良い?」
「もちろんよ」
とても可愛いラッピング。
リボンを解けば、中から出てきたメロンパンに、杉下君も私も驚く。
「え、すごい」
「わ、可愛い!!」
杉下君には、天板とコタツ(猫)の顔を模したメロンパン。私には、アンジュの顔を模したメロンパン。
猫の顔の形のメロンパンにクッキー生地が載っているのだが、そのクッキー生地が二色に分かれていて、それぞれの猫の柄を表現しているのだ。
何これ、可愛すぎる。
すごすぎる。
たしかに、自分の猫を溺愛している杉下君だ。好物のメロンパンが、その猫の形をしていれば、最高以外の何物でもない。
しかも、これ完成度が高すぎる。
こんなの作れるなんて、普通にすごすぎる。
「頑張って練習したのよ。メロンパン、作ったこともなかったから」
杉下君と私が驚いていると、彩音ちゃんが照れながらそんなことを言っていた。
作ったことのない物を、これほどの完成度で仕上げるって、どれほど練習したのだろう。
彩音ちゃん……恐ろしい子!!
「どうしよう。こんなのをもらって、私のプレゼント……出しにくい」
私は、気後れしながらも、なんとか自分のプレゼントを差し出す。
「ええっと、二人と仲良くなってから、とっても楽しくて……そして、これからも仲良くしてもらいたくって……」
杉下君、好き。
そんな言葉、言えるわけがない。
ポンコツです。認めます。でも、彩音ちゃんが、思いとどまって考え直してくれてる今、私がそんなことを言えるわけがない。もう一度仕切り直しをして、自分のタイミングで伝えたい。
「それだけ?」
彩音ちゃんが、一押ししてくる。
彩音ちゃんとしては、私に一歩踏み出してもらいたいようだ。
彩音ちゃんの目的は、私と杉下君の仲を取り持って、自分は身を引くつもりだったようだから、ちょっと不満なのかもしれないが。
あれ、やっぱり私は馬鹿だった?
でも、杉下君の気持ちが、私に向くかは分からないし。
それに、あんな悲しい理由でせっかくの恋心を彩音ちゃんが諦めるなんて良くない。
「いいの、それだけ。だって、今はまだ、ちょっと無理」
「そう……」
複雑な表情の彩音ちゃん。
杉下君は……杉下君もちょっと戸惑っているような、複雑な表情。
どういうことだろう。
単純に……私と彩音ちゃんがどんな想いを抱えているのか理解不能だから?
それは……あり得るかな。だって、杉下君はどうやら超絶鈍い。杉下君に伝わるように告白するには、もはや「大好きだー! 付き合ってくれー!!」と本人を前に絶叫する以外にないのではないかと、思うレベル。それでも通じるか不安なくらい。
「開けていい?」
杉下君の表情の意味を考えていると彩音ちゃんが、そう尋ねてくる。
私はコクコクと首を縦に振って同意を示す。
憧れの存在でも、身近になればなるほど、素敵さが減少するというやつ。
なんだか、ただ憧れていただけの杉下君が、普通の存在に見えてきた。
それでも私には、眩しいくらいに素敵なんだけれども、以前のように神格化して直視できないほどではない気がする。
そりゃ、そうよね。
うん、冷静な気持ちを取り戻せてよかった。(深く考えちゃ駄目。そう思うべきなのよ!)
「あ、あのさぁ。ぷ、プレゼントを用意してきたの」
彩音ちゃんも相当戸惑っているようだ。
でも、そうよ。プレゼント!
別に彩音ちゃんも私も杉下君を嫌いになったわけではない→プレゼントは用意している→時は天下無敵のバレンタインデー。
→そして、私達は授業をサボってまで、この人の少ない丘の上にいるのだ(今ココ)
これで、何も渡さないで終わる方がおかしいのだ。
「そう。私もあるの」
私は、気を取り直して鞄の中を探る。
「私から渡していい?」
彩音ちゃんの言葉に、私は大きく頷く。
「せっかく作ったから、二人に食べてもらいたくて」
そう言って、彩音ちゃんが手渡してくれたのは、メロンパン。
やっぱりメロンパンだった。
私のストーカーメモにも書いていた通り、杉下君の好物のメロンパン。
彩音ちゃんも当然のようにその情報は知っていたようだ。
そりゃ、そうよね。
彩音ちゃんが、そのくらいのことを調べない訳がない。
メロンパン、避けて良かった。
可愛くラッピングされたメロンパンを、杉下君に一つ。そして、私にも。
え、私にも?
「ありがとう。でも、私にも?」
「もちろんよ。だって、三人で待ち合わせたのよ? 菜々子ちゃんに渡さない訳がないじゃない」
「彩音ちゃん……」
杉下君への恋心を諦めようとしていた彩音ちゃん。本当はこのメロンパンにどんなに切ない言葉を添えれ渡そうとしていたのかは、今となっては分からない。
阻止できてよかった。
「二人のこれからをお祝いするつもりでつくったのだけれどもね……でも、菜々子ちゃんの言う通り。私、もう一度考えてみる。自分の心、これからのこと」
彩音ちゃんは、私にこっそりと小声でそう言った。
「あけて良い?」
「もちろんよ」
とても可愛いラッピング。
リボンを解けば、中から出てきたメロンパンに、杉下君も私も驚く。
「え、すごい」
「わ、可愛い!!」
杉下君には、天板とコタツ(猫)の顔を模したメロンパン。私には、アンジュの顔を模したメロンパン。
猫の顔の形のメロンパンにクッキー生地が載っているのだが、そのクッキー生地が二色に分かれていて、それぞれの猫の柄を表現しているのだ。
何これ、可愛すぎる。
すごすぎる。
たしかに、自分の猫を溺愛している杉下君だ。好物のメロンパンが、その猫の形をしていれば、最高以外の何物でもない。
しかも、これ完成度が高すぎる。
こんなの作れるなんて、普通にすごすぎる。
「頑張って練習したのよ。メロンパン、作ったこともなかったから」
杉下君と私が驚いていると、彩音ちゃんが照れながらそんなことを言っていた。
作ったことのない物を、これほどの完成度で仕上げるって、どれほど練習したのだろう。
彩音ちゃん……恐ろしい子!!
「どうしよう。こんなのをもらって、私のプレゼント……出しにくい」
私は、気後れしながらも、なんとか自分のプレゼントを差し出す。
「ええっと、二人と仲良くなってから、とっても楽しくて……そして、これからも仲良くしてもらいたくって……」
杉下君、好き。
そんな言葉、言えるわけがない。
ポンコツです。認めます。でも、彩音ちゃんが、思いとどまって考え直してくれてる今、私がそんなことを言えるわけがない。もう一度仕切り直しをして、自分のタイミングで伝えたい。
「それだけ?」
彩音ちゃんが、一押ししてくる。
彩音ちゃんとしては、私に一歩踏み出してもらいたいようだ。
彩音ちゃんの目的は、私と杉下君の仲を取り持って、自分は身を引くつもりだったようだから、ちょっと不満なのかもしれないが。
あれ、やっぱり私は馬鹿だった?
でも、杉下君の気持ちが、私に向くかは分からないし。
それに、あんな悲しい理由でせっかくの恋心を彩音ちゃんが諦めるなんて良くない。
「いいの、それだけ。だって、今はまだ、ちょっと無理」
「そう……」
複雑な表情の彩音ちゃん。
杉下君は……杉下君もちょっと戸惑っているような、複雑な表情。
どういうことだろう。
単純に……私と彩音ちゃんがどんな想いを抱えているのか理解不能だから?
それは……あり得るかな。だって、杉下君はどうやら超絶鈍い。杉下君に伝わるように告白するには、もはや「大好きだー! 付き合ってくれー!!」と本人を前に絶叫する以外にないのではないかと、思うレベル。それでも通じるか不安なくらい。
「開けていい?」
杉下君の表情の意味を考えていると彩音ちゃんが、そう尋ねてくる。
私はコクコクと首を縦に振って同意を示す。
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