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バレンタイン決戦
決戦の朝、立ちはだかるもの
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朝、菜々子が校門で見たのは、仁王立ちの先生。
ゲッ。
どうしよう。
女子生徒を重点的にチェックして、持ち物検査しているのは、バレンタインデーだからだ。
ほら、鞄の中から、ピンク色の可愛いリボンを結んだ包みを取り上げたのは、あれがチョコレートだから。
没収された女の子が、『マジ? せっかく作ったに~!!』と、怒ってはいても、明るい表情なのは、きっとあれが友達にあげる友チョコだから。あれが、本気のガチ恋相手に用意した物ならば、あんな表情にはならないだろう。
校則は謳う。
※勉学に必要な物以外は持って来てはならない。
はい、要りませんね。
チョコレートもクッキーも。
チョコレートやクッキーで、源氏物語は読めないし、物理法則も解明できないのだ。
あ、手紙くらいなら良いのだろうか?
でも、待って、『〇〇君へ』なんて手紙、先生に見つかりたくはない。
そんなの先生に見つかって没収されるくらいなら、犯罪の証拠を隠滅する犯人のように、手紙を丸飲みにして隠ぺいしてやる。
私の鞄の中の物。大丈夫だろうか?
せっかく考えに考えて用意したのに没収なんてあんまりだ。
「どうしよう……」
オロオロとする菜々子に、「どうしたの?」と声をかけてくれたのは、彩音。
「あれ……」
菜々子が指さす方を見て、彩音が眉をひそめる。
「バレンタイン狩りね」
「バレンタイン狩り?」
「知らないの? バレンタインの日、先生達が、チョコレートやクッキーを没収するのは、毎年の恒例行事。菜々子ちゃんだって、二年生なんだから知らないわけないと思うんだけど」
彩音が首を傾げる。
「去年は、バレンタインの日は風邪引いて寝てたの。だから、友達にチョコレートあげたのは、バレンタインの翌日」
「なるほど……じゃあ、知らなかったのか……」
彩音が考え込む。
「ねぇ、フェアじゃないから具体的には聞かないけれど、没収されそうな物持っている?」
「うーん。没収されるかどうか……微妙。でも、先生に見られるのは、絶対嫌かなぁ」
「そう……」
親身になって一緒に考えてくれる彩音。
「あれ? 彩音ちゃんのは、大丈夫なの?」
「私は大丈夫。バレンタイン狩りのことは知っていたから、偽装してきたし」
「偽装……」
さすが彩音ちゃんだ。
てか、アレだよね? メロンパン。
そっか、ラッピングせずに自分用のお弁当みたいに見せかけて持ってきたら、没収は免れるか。
そして、校内でラッピングすれば、先生のバレンタイン狩りは、免れる。
お弁当だとしたら、必要だものね。勉学に。
「壊れ物?」
彩音に聞かれて、菜々子はフルフルと首を横に振る。
「あ、じゃあ、何とかなるかな? ね、そこの角を曲がった壁際で待っていて!」
何かを思いついた彩音は、そう言うと、菜々子を残して校門の方へ走って行ってしまった。
どうしようというのだろう。
なす術のない菜々子は、彩音に言われた通りに壁際に移動して待つ。
高い壁。
コンクリートの壁の上に、さらに塀があるから、校内にここから侵入するのは菜々子には不可能そうだ。
鞄を投げる?
それも、運動の出来ない菜々子の腕力では難しい。
ゲッ。
どうしよう。
女子生徒を重点的にチェックして、持ち物検査しているのは、バレンタインデーだからだ。
ほら、鞄の中から、ピンク色の可愛いリボンを結んだ包みを取り上げたのは、あれがチョコレートだから。
没収された女の子が、『マジ? せっかく作ったに~!!』と、怒ってはいても、明るい表情なのは、きっとあれが友達にあげる友チョコだから。あれが、本気のガチ恋相手に用意した物ならば、あんな表情にはならないだろう。
校則は謳う。
※勉学に必要な物以外は持って来てはならない。
はい、要りませんね。
チョコレートもクッキーも。
チョコレートやクッキーで、源氏物語は読めないし、物理法則も解明できないのだ。
あ、手紙くらいなら良いのだろうか?
でも、待って、『〇〇君へ』なんて手紙、先生に見つかりたくはない。
そんなの先生に見つかって没収されるくらいなら、犯罪の証拠を隠滅する犯人のように、手紙を丸飲みにして隠ぺいしてやる。
私の鞄の中の物。大丈夫だろうか?
せっかく考えに考えて用意したのに没収なんてあんまりだ。
「どうしよう……」
オロオロとする菜々子に、「どうしたの?」と声をかけてくれたのは、彩音。
「あれ……」
菜々子が指さす方を見て、彩音が眉をひそめる。
「バレンタイン狩りね」
「バレンタイン狩り?」
「知らないの? バレンタインの日、先生達が、チョコレートやクッキーを没収するのは、毎年の恒例行事。菜々子ちゃんだって、二年生なんだから知らないわけないと思うんだけど」
彩音が首を傾げる。
「去年は、バレンタインの日は風邪引いて寝てたの。だから、友達にチョコレートあげたのは、バレンタインの翌日」
「なるほど……じゃあ、知らなかったのか……」
彩音が考え込む。
「ねぇ、フェアじゃないから具体的には聞かないけれど、没収されそうな物持っている?」
「うーん。没収されるかどうか……微妙。でも、先生に見られるのは、絶対嫌かなぁ」
「そう……」
親身になって一緒に考えてくれる彩音。
「あれ? 彩音ちゃんのは、大丈夫なの?」
「私は大丈夫。バレンタイン狩りのことは知っていたから、偽装してきたし」
「偽装……」
さすが彩音ちゃんだ。
てか、アレだよね? メロンパン。
そっか、ラッピングせずに自分用のお弁当みたいに見せかけて持ってきたら、没収は免れるか。
そして、校内でラッピングすれば、先生のバレンタイン狩りは、免れる。
お弁当だとしたら、必要だものね。勉学に。
「壊れ物?」
彩音に聞かれて、菜々子はフルフルと首を横に振る。
「あ、じゃあ、何とかなるかな? ね、そこの角を曲がった壁際で待っていて!」
何かを思いついた彩音は、そう言うと、菜々子を残して校門の方へ走って行ってしまった。
どうしようというのだろう。
なす術のない菜々子は、彩音に言われた通りに壁際に移動して待つ。
高い壁。
コンクリートの壁の上に、さらに塀があるから、校内にここから侵入するのは菜々子には不可能そうだ。
鞄を投げる?
それも、運動の出来ない菜々子の腕力では難しい。
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