女王様は猫ですから!

ねこ沢ふたよ

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バレンタイン決戦

負けないわよ!

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 二階堂彩音は、いつもの公園でフェラーリと遊んでいた。

 絶好調のフェラーリは、彩音の投げるフリスビーを軽やかにキャッチする。

「ワフワフ!! (お嬢! これ楽しい! もっと投げてくれまいか??)」

 彩音の足元でクルクル回ってアピールするフェラーリ。
 青い空に街灯の上のいつもの烏。

 彩音の投げたフリスビーを時々、烏が横取りしてしまうからフェラーリが熱くなっている。
 烏とフェラーリでフリスビー争奪戦を繰り広げている。
 フリスビーに慣れ親しんで彩音の投げる癖を知っているフェラーリが有利そうだが、烏はフェラーリの隙をついてフリスビーを軽々と横取りする。
 次第に熱くなるフェラーリの上で、烏が旋回している。

 うん、いつも通りの平和な光景だ。
 フェラーリは、良いライバルを得て、とっても幸せそうだ。
 
「ライバル……大切よね……」
「クウン?(お嬢?)」

 時々考え事をして上の空の彩音を、フェラーリが心配そうに覗き込む。


「らしくないよね! 不安なら、頑張ればいいのに」
 
 でも、不安で仕方ない。
 あのお花畑事件をしでかしてしまった彩音。
 今でこそ杉下君は、彩音のことを友達と認めてくれているが、心の底では軽蔑しているに違いない。

 焦って無理矢理杉下君に近づこうとして我を忘れてしまった。
 自分でもよくあんな酷いことができたと驚くくらいのこと。
 花畑を台無しにした行為は、恋も何もかもを破壊する行為だった。

 今回のバレンタイン対決は、彩音は全力を出さなければならない。
 その為に努力はしている。
 お菓子作りの本をかき集め、実際に調理して。
 失敗しては、お父さんに食べてもらって。

 その努力の結果として、お父さんの体重が十キロ増えた今では、クッキーでもチョコでもそれなりに作れるようになった。「彩音がパティシエになりたいなんて、お父さん知らなかったな」なんて、お父さんが勘違いするくらいには、練習したのだ。

「でも、何か……何か足りないのよね……」

 どんなに上手にお菓子を作って渡しても、足りない気がする。
 だって、お花畑事件の犯人は、私だから。
 それを払しょくするくらいのアイデアが欲しいところ。

「カア」

 烏が一声鳴くから、そちらをみれば、烏がフェラーリの頭の上に座っている。

「か、可愛い……」

 烏の形の帽子を被っているようなフェラーリ。
 どうして自分の頭の上に烏が座るのかが理解できなくて、目をぱちくりする表情に彩音の心は踊る。

 これは、可愛い。
 
 彩音が写真をフェラーリと烏の写真を撮って、杉下君と菜々子に送れば、「可愛い!! ウチの天板をコタツも見て!」と、杉下君からの返信。

 丸くなって眠る天板の背中に寄り添うチビ猫コタツ。
 穏やかな表情の二匹に癒されtる。

 そうか……そうよね……。
 杉下君は、二匹が好きなんだものね……。

 なんだか、アイデアが湧いてきた。

「負けないわよ!!」

 彩音が、メラメラと闘魂を燃やしていた。
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