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バレンタイン決戦
推し活かガチ恋か
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天板ロスで号泣する両親は放置して、杉下君に天板を渡したのは、間違いではなかったと思う。
杉下君から送られてくる写真には、とっても穏やかで幸せそうな天板とコタツの写真。
ちび猫コタツが、天板の上に寝そべって、ヘソ天ネンネとか。めちゃくちゃ可愛い写真が、彩音ちゃんと私のスマホに毎日のように送られてくる。
「彩音ちゃんと菜々子ちゃんには、本当っに感謝している。ありがとう!」
何度も杉下君は、菜々子と彩音ちゃんに感謝の言葉をくれる。
推しからの感謝の言葉。そんなの幸せ以外何者でもない。
「で? どっちかが、杉下君とどうにか進展したの?」
「進展……。二階堂さんと仲良くなって、杉下君も私も、『彩音ちゃん』って呼ぶようになって……あ、杉下君も名前呼びで良いよって言ってくれたんだけれど、そんなの恐れ多すぎて、出来るわけなくって。二階堂さんも私も『杉下君』って、今までの呼び方で」
「ポンコツ! 二階堂さんとの仲が深まって終わりとか、どうかしている」
ここは教室。
私の相棒、親友の神戸美春が、私の言葉に大いに呆れている。
両手を広げて首を横に大きく振りながら、ガッテム~!って、どこの欧米人だよ!
「そんな変かなぁ。推しが幸せになるのを手助けできて、彩音ちゃんとそれなりに仲良しになれて。万々歳ってやつじゃない?」
「そもそも、その『推し』ってのが怪しい。あんたの推し活なんて、ズバリ恋しているって言うのが恥ずかしいから、『推し活』を隠れ蓑にしているだけじゃない!」
ビシッと私の鼻先を指さす美春。
その、人を指さすのって良くない。美春の手を退けて、美春の言葉を考える。
何を言っているんだか。
杉下君は、私の推しなの。『推し活』を隠れ蓑にした『恋』? そんな馬鹿な話は……。あれ?
「ねぇ……推しって何だろう」
「推しは『推し』でしょうよ。もはや神。崇拝、信仰の対象。幸せな姿を見ているだけで、こっちも幸せになる」
「じゃあ……恋は?」
「それは……その……」
美春の顔が、みるみる赤く染まってくる。
可愛いな。さては、具体的に誰かを想像しているな?
「ねぇ、どういうの?」
面白くなって、ちょっと意地悪半分で美春を問い詰める。
「えっと、一緒にいて、話したくて……」
「すれば良いじゃない」
「出来ないよ。だって、そんなの……」
「後は、後は何?」
「手をつないだりさ……一緒に帰ったり……」
これは、かなり妄想を拗らせているな。
たぶん、今、私はすっごく意地悪な顔でニヤニヤしている。
「あ、でも、それって推しと一緒じゃない?」
「ち、違うくって……。推しならば、相手が結婚しても推せるけれども、ガチ恋なら失恋じゃない。嫌じゃない!」
なるほどぉ。それは、確かに。
「とにかく、私の話は良いの! 今は菜々子の話でしょ?」
「ええ~!」
どうやら話の矛先は、こちらに戻ってきてしまった。
「菜々子が無自覚でも、二階堂さんは確実に菜々子をライバルとみているから!」
「まじ? そんなの敵うわけないじゃない」
「そんなの、杉下君次第よ」
「杉下君次第?」
「そう。杉下君が、明るく快活頑張り屋さんのハイスペ美少女が好きかどうか分からないじゃない。悪趣味で取り柄のないこが良いかもしれないし」
待って、それって私にだいぶ失礼じゃない?
スマホの呼び出し音に手元をみれば、噂の対象だった彩音ちゃんから。
いつもは杉下君も交えたグループの場に連絡くれるのに、珍しく今回は、私宛。
なんだろう??
『勝負よ! 私、今度のバレンタインでチョコを杉下君にあげて告白するから! 菜々子ちゃんには負けないから!』
宣戦布告だ……。
何も言わずに抜けがけしないのは、彩音ちゃんらしい。
「ほらぁ。頑張らないと!」
美春が私の肩をポンッと叩いた。
杉下君から送られてくる写真には、とっても穏やかで幸せそうな天板とコタツの写真。
ちび猫コタツが、天板の上に寝そべって、ヘソ天ネンネとか。めちゃくちゃ可愛い写真が、彩音ちゃんと私のスマホに毎日のように送られてくる。
「彩音ちゃんと菜々子ちゃんには、本当っに感謝している。ありがとう!」
何度も杉下君は、菜々子と彩音ちゃんに感謝の言葉をくれる。
推しからの感謝の言葉。そんなの幸せ以外何者でもない。
「で? どっちかが、杉下君とどうにか進展したの?」
「進展……。二階堂さんと仲良くなって、杉下君も私も、『彩音ちゃん』って呼ぶようになって……あ、杉下君も名前呼びで良いよって言ってくれたんだけれど、そんなの恐れ多すぎて、出来るわけなくって。二階堂さんも私も『杉下君』って、今までの呼び方で」
「ポンコツ! 二階堂さんとの仲が深まって終わりとか、どうかしている」
ここは教室。
私の相棒、親友の神戸美春が、私の言葉に大いに呆れている。
両手を広げて首を横に大きく振りながら、ガッテム~!って、どこの欧米人だよ!
「そんな変かなぁ。推しが幸せになるのを手助けできて、彩音ちゃんとそれなりに仲良しになれて。万々歳ってやつじゃない?」
「そもそも、その『推し』ってのが怪しい。あんたの推し活なんて、ズバリ恋しているって言うのが恥ずかしいから、『推し活』を隠れ蓑にしているだけじゃない!」
ビシッと私の鼻先を指さす美春。
その、人を指さすのって良くない。美春の手を退けて、美春の言葉を考える。
何を言っているんだか。
杉下君は、私の推しなの。『推し活』を隠れ蓑にした『恋』? そんな馬鹿な話は……。あれ?
「ねぇ……推しって何だろう」
「推しは『推し』でしょうよ。もはや神。崇拝、信仰の対象。幸せな姿を見ているだけで、こっちも幸せになる」
「じゃあ……恋は?」
「それは……その……」
美春の顔が、みるみる赤く染まってくる。
可愛いな。さては、具体的に誰かを想像しているな?
「ねぇ、どういうの?」
面白くなって、ちょっと意地悪半分で美春を問い詰める。
「えっと、一緒にいて、話したくて……」
「すれば良いじゃない」
「出来ないよ。だって、そんなの……」
「後は、後は何?」
「手をつないだりさ……一緒に帰ったり……」
これは、かなり妄想を拗らせているな。
たぶん、今、私はすっごく意地悪な顔でニヤニヤしている。
「あ、でも、それって推しと一緒じゃない?」
「ち、違うくって……。推しならば、相手が結婚しても推せるけれども、ガチ恋なら失恋じゃない。嫌じゃない!」
なるほどぉ。それは、確かに。
「とにかく、私の話は良いの! 今は菜々子の話でしょ?」
「ええ~!」
どうやら話の矛先は、こちらに戻ってきてしまった。
「菜々子が無自覚でも、二階堂さんは確実に菜々子をライバルとみているから!」
「まじ? そんなの敵うわけないじゃない」
「そんなの、杉下君次第よ」
「杉下君次第?」
「そう。杉下君が、明るく快活頑張り屋さんのハイスペ美少女が好きかどうか分からないじゃない。悪趣味で取り柄のないこが良いかもしれないし」
待って、それって私にだいぶ失礼じゃない?
スマホの呼び出し音に手元をみれば、噂の対象だった彩音ちゃんから。
いつもは杉下君も交えたグループの場に連絡くれるのに、珍しく今回は、私宛。
なんだろう??
『勝負よ! 私、今度のバレンタインでチョコを杉下君にあげて告白するから! 菜々子ちゃんには負けないから!』
宣戦布告だ……。
何も言わずに抜けがけしないのは、彩音ちゃんらしい。
「ほらぁ。頑張らないと!」
美春が私の肩をポンッと叩いた。
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