女王様は猫ですから!

ねこ沢ふたよ

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こたつと天板

コタツの怒り

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 黙っていろと冷たい視線を向けられて菜々子は狼狽える。、

 バサバサと烏が外へ飛んでいってしまったのは、なんだろう? 私、そんな場違いなこと言っちゃった?
人間が口出ししたらダメな場面だったのだろうか。

 スマホを見れば、先程の天板の写真にも、可愛いとリアクションが返ってくる。
 二人とも優しい。天板だって可愛いけれど、やっぱりチビ猫コタツの正統派可愛いと大型犬フェラーリの意外性可愛いには、勝てないような気しかしない。

 花壇荒らし事件の犯人は、二階堂さんだった。
 あれ以来、二階堂さんは極端なことはしなくなった。それどころか、私とも仲良くしてくれている。

 一生懸命な努力家。目標めがけてまっしぐらな人。しかも美人で運動もできて勉強も。
 敵うわけないのだ。

 やっぱり、推しは推し。密かに推しているだけが立ち位置としては良いのではないだろうか。
 私に杉下君を取り合って戦うモチベはない。
 親友の神戸は、頑張れ! なんて応援するけれど、無茶だと思う。
 せめて、推しである杉下君の笑顔が増えるようにしてあげたいが……。
 無力だ。徹底的に圧倒的に無力だ。何をどうしたら良いのやら。

「ねぇ……アンジュ……。コタツちゃんと天板が仲良くできるようにならない?」

 
 菜々子の言葉。その言葉でアンジュは、口の重い天板を説得する。

「ねぇ、天板。菜々子も心配しているわ」

 天板は、菜々子に恩義を感じている。それは、天板の態度で分かる。さっきのヘソ天だって、菜々子への恩義から応じたのだろう。

「……しかし……」
「言えば良いよ!」

 窓にひょっこりと顔を出したのは、コタツとフェラーリ。フェラーリの上にコタツが乗っている。

 スイッと軽やかに戻ってきたのは、烏のクロウ。

「説得できそうな奴連れてきた。やっぱ、本猫同士が腹割って話合うのが一番だって!」

 クロウが明るい声でそう断言する。

「お前が、僕をママが無理矢理引き剥がしたんだ! ママを返せ!」

 コタツの怒りが、コタツの全身の毛を逆立てる。

「だとよ」
「なんと! 天板殿がそのような無体を? なぜ?」

 コタツが天板を睨む。天板は、悲しそうな顔で黙っている。

「お、お前はママの! ママの!」

 コタツの目に涙が浮かぶ。言いたくない。
 仲良しだったパパ猫が居なくなって、その後でママのそばに現れた天板。
 パパを追い出したのだって、コイツなんじゃないか? そう思えば、あんなに辛かったのは、全部天板のせいだったのではないかと思える。

「コタツ。違うから」

 アンジュがコタツを制した。
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