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こたつと天板
コタツの気持ち
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コタツがご飯を食べているのを杉下主基は、ジッと眺めていた。
「どうして仲良くなれないのかなぁ」
主基の言葉にコタツは、ムッとする。
いくら言われても、天板と仲良くなんてできない。
できれば早く諦めてもらいたいのに、主基は、なかなか諦めてくれない。
「アンジュちゃんは平気。……猫同士だし、メス猫だから? オスでもワンコのフェラーリも平気。何だったら、時々顔を見せる烏だって平気なのに。どうして天板だけ仲良くできないんだろう? オス猫同士だから縄張りみたいな物があるのかなぁ?」
違う。オス猫だからではない。相手が天板だから嫌なのだ。
その理由なんて、言うつもりはサラサラない。
もっとも、言ったとしても、人間の主基には通じないけれど。
「天板は、穏やかな年寄り猫だろう?」
今はね。
でも、あの猫は、「野良猫」という修羅場で年寄り猫になるくらいに生き残った百戦錬磨の猫。
そのことを、主基は理解していない。
「お前だって短くっても野良猫経験があるんだから、仲良くして穏やかに過ごしてくれれば良いのに」
野良の経験があるから嫌なんだ。
正直、野良猫だった時は、ママと一緒だった本当に小さな時だけ。そんなに覚えているわけではないが、それでも、天板を嫌う理由はあるのだ。
てか、せっかく美味しくご飯を食べているのに、その話はやめてほしい。
ご飯が不味くなる。
コタツは、不機嫌なままご飯を食べる。
ここは、『コタツと天板を仲良くさせる会』で、主基とコタツにあてがわれた部屋。
ベッドと机、収納が一つ。
「すごい、ホテルの部屋みたい」って、主基が言っていたから、きっとホテルのような部屋ですごいのだろう。コタツは、見たことはないが。
「あんなに皆が心配してコタツと天板を仲良くしようとしてくれているのに。お前ときたら、全く仲良くしようとしないんだものな」
ご飯を食べ終えて毛づくろいを始めたコタツを抱き上げて、主基は自分の隣に座らせる。
「どうしてあんなに親身に心配してくれるんだろうな」
主基は、コタツを撫でながら考える。
大好きな主基の隣。コタツは安心してノビをして、コロンとお腹を出して転がる。
主基の手が、コタツを撫でれば、自然とコタツの喉がゴロゴロと音を立てる。
コタツが思い出すのは、お母さんのこと。
産まれたばかりのコタツを舐めてくれた時、こんな風に安心しきっていたっけ。
「ニャア」
コタツが甘えれば、主基の表情がとろける。
「か、可愛い過ぎ! うん、良いかな。コタツが元気なら何でも」
杉下主基は、本日もコタツの可愛いさに負けて、深く考えるのをやめてしまった。
「どうして仲良くなれないのかなぁ」
主基の言葉にコタツは、ムッとする。
いくら言われても、天板と仲良くなんてできない。
できれば早く諦めてもらいたいのに、主基は、なかなか諦めてくれない。
「アンジュちゃんは平気。……猫同士だし、メス猫だから? オスでもワンコのフェラーリも平気。何だったら、時々顔を見せる烏だって平気なのに。どうして天板だけ仲良くできないんだろう? オス猫同士だから縄張りみたいな物があるのかなぁ?」
違う。オス猫だからではない。相手が天板だから嫌なのだ。
その理由なんて、言うつもりはサラサラない。
もっとも、言ったとしても、人間の主基には通じないけれど。
「天板は、穏やかな年寄り猫だろう?」
今はね。
でも、あの猫は、「野良猫」という修羅場で年寄り猫になるくらいに生き残った百戦錬磨の猫。
そのことを、主基は理解していない。
「お前だって短くっても野良猫経験があるんだから、仲良くして穏やかに過ごしてくれれば良いのに」
野良の経験があるから嫌なんだ。
正直、野良猫だった時は、ママと一緒だった本当に小さな時だけ。そんなに覚えているわけではないが、それでも、天板を嫌う理由はあるのだ。
てか、せっかく美味しくご飯を食べているのに、その話はやめてほしい。
ご飯が不味くなる。
コタツは、不機嫌なままご飯を食べる。
ここは、『コタツと天板を仲良くさせる会』で、主基とコタツにあてがわれた部屋。
ベッドと机、収納が一つ。
「すごい、ホテルの部屋みたい」って、主基が言っていたから、きっとホテルのような部屋ですごいのだろう。コタツは、見たことはないが。
「あんなに皆が心配してコタツと天板を仲良くしようとしてくれているのに。お前ときたら、全く仲良くしようとしないんだものな」
ご飯を食べ終えて毛づくろいを始めたコタツを抱き上げて、主基は自分の隣に座らせる。
「どうしてあんなに親身に心配してくれるんだろうな」
主基は、コタツを撫でながら考える。
大好きな主基の隣。コタツは安心してノビをして、コロンとお腹を出して転がる。
主基の手が、コタツを撫でれば、自然とコタツの喉がゴロゴロと音を立てる。
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産まれたばかりのコタツを舐めてくれた時、こんな風に安心しきっていたっけ。
「ニャア」
コタツが甘えれば、主基の表情がとろける。
「か、可愛い過ぎ! うん、良いかな。コタツが元気なら何でも」
杉下主基は、本日もコタツの可愛いさに負けて、深く考えるのをやめてしまった。
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