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その名はフェラーリ
特訓なり!
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足が速くなるコツ。
それは、前足と後ろ足、四つの足のバネを生かして軽やかに……。
だが、お嬢は残念ながら二足歩行。
お嬢も四足歩行出来れば話は早いのだが、人間には難しい。
ならばどうするか……。
決まっておる!
特訓あるのみ!!!!
何のひねりも必要ない!
とっぷあすりぃと! それは、日々の鍛錬の先に成るものなのだ! 鍛錬こそ正義! 筋肉こそ正義なのだ!
「フェラーリ!! は、速い! 速すぎる!」
散歩の時間、リードを持つお嬢を引っ張って拙者は走る。お嬢を鍛えるために!
もちろん、手加減はしている。
雑種といえども大型犬の拙者。本気で走ればお嬢は追いつけない。
有能な指導者たる拙者は、お嬢の走れるギリのスピードをちゃんと保っている。
さあ、お嬢よ!!
古の忍者のごとく己の足を鍛えるのだ!!
どれほど走ったであろうか。
いつもの散歩コースである河川の土手を走り抜け、休憩に立ち寄る公園。
えっと、ここまでは三十分かけて歩く道程であるが、本日はお嬢の特訓のために、十分も掛からずに来てしまった。もっと走っても良いのだが、どうやらお嬢が限界だ。
元々インドア派のお嬢にあまり無理をさせるのも酷だ。
ここは、少し休憩といこう。
ぜいぜいと息をするお嬢。
「ふぇ、フェラーリ……どうしちゃったのよ? 何か面白い物でも見つけたの?」
公園のベンチに崩れ落ちるお嬢。
……ちっと、ちっとだけやり過ぎたか?
お嬢の足元に控えて、尻尾を振りながら拙者はお嬢を見つめる。
ベンチで突っ伏すお嬢。大丈夫か?
お嬢! 頑張れ。
好いたお方に一歩でも近づくために!!
そのためには、心身ともに鍛えねばならぬであろう?
「ワン!!」
拙者の激励をどのように聴いたのか、お嬢は優しい顔で撫でてくれる。
ああ、お嬢の願いが叶えばよいのに。
そのためには、拙者が特訓して差し上げねば!!
「何やっているんだ。馬鹿犬」
馬鹿にされて見上げれば、烏が一羽。
あの烏は知っている。
この間、ゴミ置き場で近所のおばさんに帚で追い立てられていた。
その時に動物好きのお嬢が、おばさんに抗議したのを覚えていたのであろう。
「そなたには関係ない」
「でも、その女の子、もうヘロヘロじゃねえか。翼も四本足もない人間に無理させんなよ」
「しかしだな。こちらにはこちらの事情があるのだ」
拙者は、この烏野郎にこちらの事情を話す。
「へぇ……好きな人とかけっこ競技ねぇ……」
クスクスと笑う烏。
イケすかねぇ野郎だ。
「俺も協力してやろうか? てめえみたいな脳筋だけじゃ、この子潰れちまう」
烏め。拙者の完璧な筋肉作戦に文句を申すか!!
「要らぬ!! 拙者さえいれば大丈夫だ!!」
「結果がこれだろう?」
クッ!! いまだに立ち上がれずにベンチでのびているお嬢。
「し、仕方あるまい!!」
拙者は、お嬢の幸せのためにやくざ者の烏を仲間に引き入れた。
それは、前足と後ろ足、四つの足のバネを生かして軽やかに……。
だが、お嬢は残念ながら二足歩行。
お嬢も四足歩行出来れば話は早いのだが、人間には難しい。
ならばどうするか……。
決まっておる!
特訓あるのみ!!!!
何のひねりも必要ない!
とっぷあすりぃと! それは、日々の鍛錬の先に成るものなのだ! 鍛錬こそ正義! 筋肉こそ正義なのだ!
「フェラーリ!! は、速い! 速すぎる!」
散歩の時間、リードを持つお嬢を引っ張って拙者は走る。お嬢を鍛えるために!
もちろん、手加減はしている。
雑種といえども大型犬の拙者。本気で走ればお嬢は追いつけない。
有能な指導者たる拙者は、お嬢の走れるギリのスピードをちゃんと保っている。
さあ、お嬢よ!!
古の忍者のごとく己の足を鍛えるのだ!!
どれほど走ったであろうか。
いつもの散歩コースである河川の土手を走り抜け、休憩に立ち寄る公園。
えっと、ここまでは三十分かけて歩く道程であるが、本日はお嬢の特訓のために、十分も掛からずに来てしまった。もっと走っても良いのだが、どうやらお嬢が限界だ。
元々インドア派のお嬢にあまり無理をさせるのも酷だ。
ここは、少し休憩といこう。
ぜいぜいと息をするお嬢。
「ふぇ、フェラーリ……どうしちゃったのよ? 何か面白い物でも見つけたの?」
公園のベンチに崩れ落ちるお嬢。
……ちっと、ちっとだけやり過ぎたか?
お嬢の足元に控えて、尻尾を振りながら拙者はお嬢を見つめる。
ベンチで突っ伏すお嬢。大丈夫か?
お嬢! 頑張れ。
好いたお方に一歩でも近づくために!!
そのためには、心身ともに鍛えねばならぬであろう?
「ワン!!」
拙者の激励をどのように聴いたのか、お嬢は優しい顔で撫でてくれる。
ああ、お嬢の願いが叶えばよいのに。
そのためには、拙者が特訓して差し上げねば!!
「何やっているんだ。馬鹿犬」
馬鹿にされて見上げれば、烏が一羽。
あの烏は知っている。
この間、ゴミ置き場で近所のおばさんに帚で追い立てられていた。
その時に動物好きのお嬢が、おばさんに抗議したのを覚えていたのであろう。
「そなたには関係ない」
「でも、その女の子、もうヘロヘロじゃねえか。翼も四本足もない人間に無理させんなよ」
「しかしだな。こちらにはこちらの事情があるのだ」
拙者は、この烏野郎にこちらの事情を話す。
「へぇ……好きな人とかけっこ競技ねぇ……」
クスクスと笑う烏。
イケすかねぇ野郎だ。
「俺も協力してやろうか? てめえみたいな脳筋だけじゃ、この子潰れちまう」
烏め。拙者の完璧な筋肉作戦に文句を申すか!!
「要らぬ!! 拙者さえいれば大丈夫だ!!」
「結果がこれだろう?」
クッ!! いまだに立ち上がれずにベンチでのびているお嬢。
「し、仕方あるまい!!」
拙者は、お嬢の幸せのためにやくざ者の烏を仲間に引き入れた。
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