6 / 53
アンジュ様の言う通り
緊急招集
しおりを挟む
ち、遅刻、遅刻!
アンジュの肉球にふみふみされて気持ち良くなって、そのまま寝落ちした。
最悪だ。
お母さんに起こされて、辛うじて起きたけれど、無理な姿勢で寝たから腰は痛いし。時間はギリギリだし。園芸係で緊急招集がかかっていたから、早く行かないとダメなのに!
漫画ならトーストを咥えて走るところだが、そこは街角で転校生と衝突している場合じゃあないし、現実にやれば、くるまにぶつかりそうだし。
朝ご飯は諦めて、一心不乱に学校への道を急ぐ。
ま、間に合った!!
安堵した私の視界に飛び込んできたのは、召集された教室で座る杉下君の姿。
そう。私の推しである杉下君が、遅刻なんてする訳がない!
今日も爽やかな笑顔で、そこに……あれ?
杉下君が笑顔を向けている相手は、隣の席に座る女子。
あれは、軟式女子テニス部のキャプテンをしている二階堂さんでは? 確か……とてもお金持ちのお嬢様で、スポーツの出来て成績だって良い。そして、美人だ。
杉下君とお似合い。
「ほら、早く座って!!」
崖から突き落とされて瀕死のところに、大岩を投げつけられてとどめを刺された感じで、精神が瀕死の私に、先生が容赦なく促す。
二階堂さんと付き合うならば、きっと杉下君は幸せ……推しの幸せは、私の幸せ……?
うう。頭では分かっているのだ。
ストーカー寸前の私なんかよりも、魅力的な二階堂さんのような子が、杉下君にはお似合いだって。
ほら、あんなに楽しそうに杉下君は、笑っている。
先生に早くと促されて空いている隅の席に座れば、杉下君が、私に気づいて、小さく手を振ってくれる。
猫友だもんね。
そういう、虫けらみたいな私にまで気を使ってくれる杉下君の優しさが好きなんだよね。
私は、杉下君に、さよならをするように、小さく手を振るが、未練がましい私の心は、とてもこの想いを捨てきれない。
私が席に着いた後で、会議は始まり、何だか先生が熱弁を振るっているが、目の前の衝撃的な光景に、私の耳は、先生の言葉を一つも拾わない。
何か大変なことが起きたらしく、深刻そうに話す先生に、議論は進んで行く。
何が起きたんだろう?
いいや。どうでも……。とりあえず、今の私は、心がいっぱいなのだ。
「先生! それは、違うと思います!!」
ガタンを席を立って、杉下君が発言する。
「そんなことをすれば、怪我をするじゃないですか!! それに、まだ犯人と決まったわけでは!!」
え、怪我? 先生が、誰かを傷つけそうなことを提案したの?
まさか。
花を愛してこの園芸係を立ち上げて、生徒に園芸の素晴らしさを布教することをモットーとしている心優しき先生か?
てか、犯人ってなんだ!!
「ですが、花壇が荒らされていることは、事実ですから!!」
バンと先生が叩いた黒板に書かれていた文字は、『有刺鉄線』。
は? なんだか、私が葛藤している間に、物騒な話になっていない?
どうやら、先生の愛する花々が、荒らされていたようだ。
それの解決策として……頭に血が上った先生が、有刺鉄線で花壇を囲もうとしている……。そういう事?
犯人(誰?)が、怪我するかもしれないからって、杉下君が、反対しているってことでいいのかな?
とにかく、話の内容は、まるっきり分からないが、推しである杉下君が、そんなの駄目だと言っているなら、それは良くない。
推しが白と言うならば、それは黒くても白。推しが黒というならば、それは、白くても黒なのだ。
「あ……、有刺鉄線は物騒かと、私も思います」
よく分からないが、私も杉下君に加勢する。
私の意見に、杉下君の顔が、パアアと、笑顔になる。
「そうだよね!! そう思うよね!!」
「は、はい!!」
私は、コクコクと首を縦に振って応じる。
どうやら、会議に参加している生徒達も、内心そう思っていた者が多かったようで教室がざわつき始める。
さすがに、校内の花壇に有刺鉄線はやり過ぎだろう。
先生の眉間に深っっかい皺がよる。
不満なのだろう。自分の案が否定されたことが。
「では、一週間。一週間待ちましょう! それまでにあなた達が犯人を見つけられなければ、有刺鉄線を実行いたします!!」
「分かりました!! 僕たちで、犯人を見つけます!!」
杉下君が、堂々と先生に言い放つ。
わあ、探偵物のドラマみたいだ。杉下君格好良い!!
て、あれ? 僕……達?
会議が終わって教室を出ていく生徒達から、「頑張ってね」「協力はするから」なんて、私は声を掛けられる。
どうやら、『達』というのは、私も含まれているようだ。
アンジュの肉球にふみふみされて気持ち良くなって、そのまま寝落ちした。
最悪だ。
お母さんに起こされて、辛うじて起きたけれど、無理な姿勢で寝たから腰は痛いし。時間はギリギリだし。園芸係で緊急招集がかかっていたから、早く行かないとダメなのに!
漫画ならトーストを咥えて走るところだが、そこは街角で転校生と衝突している場合じゃあないし、現実にやれば、くるまにぶつかりそうだし。
朝ご飯は諦めて、一心不乱に学校への道を急ぐ。
ま、間に合った!!
安堵した私の視界に飛び込んできたのは、召集された教室で座る杉下君の姿。
そう。私の推しである杉下君が、遅刻なんてする訳がない!
今日も爽やかな笑顔で、そこに……あれ?
杉下君が笑顔を向けている相手は、隣の席に座る女子。
あれは、軟式女子テニス部のキャプテンをしている二階堂さんでは? 確か……とてもお金持ちのお嬢様で、スポーツの出来て成績だって良い。そして、美人だ。
杉下君とお似合い。
「ほら、早く座って!!」
崖から突き落とされて瀕死のところに、大岩を投げつけられてとどめを刺された感じで、精神が瀕死の私に、先生が容赦なく促す。
二階堂さんと付き合うならば、きっと杉下君は幸せ……推しの幸せは、私の幸せ……?
うう。頭では分かっているのだ。
ストーカー寸前の私なんかよりも、魅力的な二階堂さんのような子が、杉下君にはお似合いだって。
ほら、あんなに楽しそうに杉下君は、笑っている。
先生に早くと促されて空いている隅の席に座れば、杉下君が、私に気づいて、小さく手を振ってくれる。
猫友だもんね。
そういう、虫けらみたいな私にまで気を使ってくれる杉下君の優しさが好きなんだよね。
私は、杉下君に、さよならをするように、小さく手を振るが、未練がましい私の心は、とてもこの想いを捨てきれない。
私が席に着いた後で、会議は始まり、何だか先生が熱弁を振るっているが、目の前の衝撃的な光景に、私の耳は、先生の言葉を一つも拾わない。
何か大変なことが起きたらしく、深刻そうに話す先生に、議論は進んで行く。
何が起きたんだろう?
いいや。どうでも……。とりあえず、今の私は、心がいっぱいなのだ。
「先生! それは、違うと思います!!」
ガタンを席を立って、杉下君が発言する。
「そんなことをすれば、怪我をするじゃないですか!! それに、まだ犯人と決まったわけでは!!」
え、怪我? 先生が、誰かを傷つけそうなことを提案したの?
まさか。
花を愛してこの園芸係を立ち上げて、生徒に園芸の素晴らしさを布教することをモットーとしている心優しき先生か?
てか、犯人ってなんだ!!
「ですが、花壇が荒らされていることは、事実ですから!!」
バンと先生が叩いた黒板に書かれていた文字は、『有刺鉄線』。
は? なんだか、私が葛藤している間に、物騒な話になっていない?
どうやら、先生の愛する花々が、荒らされていたようだ。
それの解決策として……頭に血が上った先生が、有刺鉄線で花壇を囲もうとしている……。そういう事?
犯人(誰?)が、怪我するかもしれないからって、杉下君が、反対しているってことでいいのかな?
とにかく、話の内容は、まるっきり分からないが、推しである杉下君が、そんなの駄目だと言っているなら、それは良くない。
推しが白と言うならば、それは黒くても白。推しが黒というならば、それは、白くても黒なのだ。
「あ……、有刺鉄線は物騒かと、私も思います」
よく分からないが、私も杉下君に加勢する。
私の意見に、杉下君の顔が、パアアと、笑顔になる。
「そうだよね!! そう思うよね!!」
「は、はい!!」
私は、コクコクと首を縦に振って応じる。
どうやら、会議に参加している生徒達も、内心そう思っていた者が多かったようで教室がざわつき始める。
さすがに、校内の花壇に有刺鉄線はやり過ぎだろう。
先生の眉間に深っっかい皺がよる。
不満なのだろう。自分の案が否定されたことが。
「では、一週間。一週間待ちましょう! それまでにあなた達が犯人を見つけられなければ、有刺鉄線を実行いたします!!」
「分かりました!! 僕たちで、犯人を見つけます!!」
杉下君が、堂々と先生に言い放つ。
わあ、探偵物のドラマみたいだ。杉下君格好良い!!
て、あれ? 僕……達?
会議が終わって教室を出ていく生徒達から、「頑張ってね」「協力はするから」なんて、私は声を掛けられる。
どうやら、『達』というのは、私も含まれているようだ。
1
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
ルナール古書店の秘密
志波 連
キャラ文芸
両親を事故で亡くした松本聡志は、海のきれいな田舎町に住む祖母の家へとやってきた。
その事故によって顔に酷い傷痕が残ってしまった聡志に友人はいない。
それでもこの町にいるしかないと知っている聡志は、可愛がってくれる祖母を悲しませないために、毎日を懸命に生きていこうと努力していた。
そして、この町に来て五年目の夏、聡志は海の家で人生初のバイトに挑戦した。
先輩たちに無視されつつも、休むことなく頑張る聡志は、海岸への階段にある「ルナール古書店」の店主や、バイト先である「海の家」の店長らとかかわっていくうちに、自分が何ものだったのかを知ることになるのだった。
表紙は写真ACより引用しています
後宮なりきり夫婦録
石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」
「はあ……?」
雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。
あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。
空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。
かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。
影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。
サイトより転載になります。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
汐埼ゆたか
キャラ文芸
准教授の藤波怜(ふじなみ れい)が一人静かに暮らす一軒家。
そこに迷い猫のように住み着いた女の子。
名前はミネ。
どこから来たのか分からない彼女は、“女性”と呼ぶにはあどけなく、“少女”と呼ぶには美しい
ゆるりと始まった二人暮らし。
クールなのに優しい怜と天然で素直なミネ。
そんな二人の間に、目には見えない特別な何かが、静かに、穏やかに降り積もっていくのだった。
*****
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
※他サイト掲載
鎮魂の絵師
霞花怜
キャラ文芸
絵師・栄松斎長喜は、蔦屋重三郎が営む耕書堂に居住する絵師だ。ある春の日に、斎藤十郎兵衛と名乗る男が連れてきた「喜乃」という名の少女とで出会う。五歳の娘とは思えぬ美貌を持ちながら、周囲の人間に異常な敵愾心を抱く喜乃に興味を引かれる。耕書堂に居住で丁稚を始めた喜乃に懐かれ、共に過ごすようになる。長喜の真似をして絵を描き始めた喜乃に、自分の師匠である鳥山石燕を紹介する長喜。石燕の暮らす吾柳庵には、二人の妖怪が居住し、石燕の世話をしていた。妖怪とも仲良くなり、石燕の指導の下、絵の才覚を現していく喜乃。「絵師にはしてやれねぇ」という蔦重の真意がわからぬまま、喜乃を見守り続ける。ある日、喜乃にずっとついて回る黒い影に気が付いて、嫌な予感を覚える長喜。どう考えても訳ありな身の上である喜乃を気に掛ける長喜に「深入りするな」と忠言する京伝。様々な人々に囲まれながらも、どこか独りぼっちな喜乃を長喜は放っておけなかった。娘を育てるような気持で喜乃に接する長喜だが、師匠の石燕もまた、孫に接するように喜乃に接する。そんなある日、石燕から「俺の似絵を描いてくれ」と頼まれる。長喜が書いた似絵は、魂を冥府に誘う道標になる。それを知る石燕からの依頼であった。
【カクヨム・小説家になろう・アルファポリスに同作品掲載中】
※各話の最後に小噺を載せているのはアルファポリスさんだけです。(カクヨムは第1章だけ載ってますが需要ないのでやめました)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/chara_novel.png?id=8b2153dfd89d29eccb9a)
ガダンの寛ぎお食事処
蒼緋 玲
キャラ文芸
**********************************************
とある屋敷の料理人ガダンは、
元魔術師団の魔術師で現在は
使用人として働いている。
日々の生活の中で欠かせない
三大欲求の一つ『食欲』
時には住人の心に寄り添った食事
時には酒と共に彩りある肴を提供
時には美味しさを求めて自ら買い付けへ
時には住人同士のメニュー論争まで
国有数の料理人として名を馳せても過言では
ないくらい(住人談)、元魔術師の料理人が
織り成す美味なる心の籠もったお届けもの。
その先にある安らぎと癒しのひとときを
ご提供致します。
今日も今日とて
食堂と厨房の間にあるカウンターで
肘をつき住人の食事風景を楽しみながら眺める
ガダンとその住人のちょっとした日常のお話。
**********************************************
【一日5秒を私にください】
からの、ガダンのご飯物語です。
単独で読めますが原作を読んでいただけると、
登場キャラの人となりもわかって
味に深みが出るかもしれません(宣伝)
外部サイトにも投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/mystery.png?id=41ccf9169edbe4e853c8)
それは奇妙な町でした
ねこしゃけ日和
ミステリー
売れない作家である有馬四迷は新作を目新しさが足りないと言われ、ボツにされた。
バイト先のオーナーであるアメリカ人のルドリックさんにそのことを告げるとちょうどいい町があると教えられた。
猫神町は誰もがねこを敬う奇妙な町だった。
祓い姫 ~祓い姫とさやけし君~
白亜凛
キャラ文芸
ときは平安。
ひっそりと佇む邸の奥深く、
祓い姫と呼ばれる不思議な力を持つ姫がいた。
ある雨の夜。
邸にひとりの公達が訪れた。
「折り入って頼みがある。このまま付いて来てほしい」
宮中では、ある事件が起きていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる