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5黄金狐
畳
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「蒼月、鏡から離れろ!」
黄金が蒼月を掴んで鏡から飛んで後ろに下がる。
鏡の中から槍が飛び出していて、鋭い一撃を放つ。
ギリギリのところで躱したが、鍛え抜かれた鋭い攻撃に、背筋が凍る。
「くそ!」
黄金は、鏡に狐火を放つ。
ゴウッと一瞬燃えた狐火は、雲外鏡の妖力ですぐに消えてしまう。
槍は鏡の中に引っ込んだが、まだ男の気配を鏡の中に感じる。
狼が一匹殺されたと聞いた。
大神とも称される狼ほどの妖が、人間ごときに……と思っていたが、この鏡の中の男が手助けしたのなら頷ける。
誰かが騙して、狼に鏡を持たせて……鏡の中から今のように不意打ちを喰らわせたのだろう。
騙した人間は、もう狼の群れが始末したと聞いた。
後は、この鏡のどうにかしたいと、狼が思うのもうなずける。
「狼め。一言忠告しておいてくれればいいのに!」
鏡に警戒しながら、蒼月が悪態をつく。
こんなのどうやって運べば良いのか……不用意に近づけば、たちまち槍の餌食になる。
かといって、鏡が小さすぎて、中から人を引きずり出すことも、こちらから攻撃のために赴くことも不可能……。鏡の中は妖魔の国。黄金が小さな管狐を作ったとしても、鏡の中に入った途端に、妖魔たちに喰い散らかされてしまうだろう。
再び妖魔たちの手が伸びてきて、こちらをうかがっている。
中の人間は、どうやって妖魔を手懐けたのか。並みの人間では、たちまち喰われてしまうだろうに……。上級妖魔の後ろ盾でも手に入れたのか?
「黄金、どうする?」
「そうだな……難しい。だが、持って帰らねば、白金を返してもらえない」
里戻り紫檀に頼めば鏡を浄化し破壊してもらえるだろうが、とても夜明けに間に合わない。
どうやってあの鏡を運ぶか……。
ああ、これならどうだろう? 小さい鏡だし、何とかなるかもしれない。
黄金と蒼月は、畳をぶん投げて、鏡にぶつける。
鏡を覆う畳。当然のように中から槍が出てきて畳を貫く。
「蒼月! 畳を押さえろ!」
鏡を畳で蓋をすれば、視覚を奪われた中の男の攻撃は、思うようにいかないだろうし、畳でそのまま挟み込めば、鏡を直接持たずに運べる。
蒼月と黄金の腕力ならば、力ずくで畳二枚で挟んだまま、山道を狼の里に鏡を運べるだろう。
恐ろしい勢いで槍が畳を突き通してくる。
「すげえな、こいつ。本当に人間か?」
「分からん。だが、急げ! 畳が崩れれば厄介だ!」
黄金と蒼月は、そのまま外へ走り出す。
外で待ち構えていた狼が目をむく。
「なんだ? お前らそれは?」
中から槍が突き出て来て見ている間にもボロボロになる畳。
それを黄金と蒼月で、力ずくで押さえている。
「良いから早く! 畳が崩れきったら、鏡がこぼれ落ちる」
「は? 狐と猫の考えは分からん!」
ゲラゲラと笑いながらも、狼は道を先導してくれた。
黄金が蒼月を掴んで鏡から飛んで後ろに下がる。
鏡の中から槍が飛び出していて、鋭い一撃を放つ。
ギリギリのところで躱したが、鍛え抜かれた鋭い攻撃に、背筋が凍る。
「くそ!」
黄金は、鏡に狐火を放つ。
ゴウッと一瞬燃えた狐火は、雲外鏡の妖力ですぐに消えてしまう。
槍は鏡の中に引っ込んだが、まだ男の気配を鏡の中に感じる。
狼が一匹殺されたと聞いた。
大神とも称される狼ほどの妖が、人間ごときに……と思っていたが、この鏡の中の男が手助けしたのなら頷ける。
誰かが騙して、狼に鏡を持たせて……鏡の中から今のように不意打ちを喰らわせたのだろう。
騙した人間は、もう狼の群れが始末したと聞いた。
後は、この鏡のどうにかしたいと、狼が思うのもうなずける。
「狼め。一言忠告しておいてくれればいいのに!」
鏡に警戒しながら、蒼月が悪態をつく。
こんなのどうやって運べば良いのか……不用意に近づけば、たちまち槍の餌食になる。
かといって、鏡が小さすぎて、中から人を引きずり出すことも、こちらから攻撃のために赴くことも不可能……。鏡の中は妖魔の国。黄金が小さな管狐を作ったとしても、鏡の中に入った途端に、妖魔たちに喰い散らかされてしまうだろう。
再び妖魔たちの手が伸びてきて、こちらをうかがっている。
中の人間は、どうやって妖魔を手懐けたのか。並みの人間では、たちまち喰われてしまうだろうに……。上級妖魔の後ろ盾でも手に入れたのか?
「黄金、どうする?」
「そうだな……難しい。だが、持って帰らねば、白金を返してもらえない」
里戻り紫檀に頼めば鏡を浄化し破壊してもらえるだろうが、とても夜明けに間に合わない。
どうやってあの鏡を運ぶか……。
ああ、これならどうだろう? 小さい鏡だし、何とかなるかもしれない。
黄金と蒼月は、畳をぶん投げて、鏡にぶつける。
鏡を覆う畳。当然のように中から槍が出てきて畳を貫く。
「蒼月! 畳を押さえろ!」
鏡を畳で蓋をすれば、視覚を奪われた中の男の攻撃は、思うようにいかないだろうし、畳でそのまま挟み込めば、鏡を直接持たずに運べる。
蒼月と黄金の腕力ならば、力ずくで畳二枚で挟んだまま、山道を狼の里に鏡を運べるだろう。
恐ろしい勢いで槍が畳を突き通してくる。
「すげえな、こいつ。本当に人間か?」
「分からん。だが、急げ! 畳が崩れれば厄介だ!」
黄金と蒼月は、そのまま外へ走り出す。
外で待ち構えていた狼が目をむく。
「なんだ? お前らそれは?」
中から槍が突き出て来て見ている間にもボロボロになる畳。
それを黄金と蒼月で、力ずくで押さえている。
「良いから早く! 畳が崩れきったら、鏡がこぼれ落ちる」
「は? 狐と猫の考えは分からん!」
ゲラゲラと笑いながらも、狼は道を先導してくれた。
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