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3 妖狐
式神
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鏡から出てくる大量の妖魔に、白金の管狐が襲い掛かる。
出てくる先から、管狐が一飲みにしているが、数は多い。
「きりがない。……おっと大物だ」
鏡から呼び出されて出てきたのは、大きな鬼の化け物が二体。
角が生えて、目は一つ。金棒を持って、白金をギョロリと睨む。
「なんと。一条戻り橋の式神を手に入れたのだね」
「ああ。かつて葛葉狐の子、安倍清明が隠した妖だ。狐の子である半妖の清明の道具。私が使ってもおかしくはないだろう?」
佐門が、しれっとそう言う。
「妖狐の血筋の者が、稲荷神様の加護を受けて手に入れた物を、お前が使う道理が分からないがね」
白金は、やれやれと首を横に振りながら、二体の式神に向かっていく。
式神二体は、白金に棍棒を振り下ろすが、風のように軽やかに飛ぶ白金には、かすりもしない。
「黄、佐次を頼んだよ」
「心得ております」
黄は、そう言うと、大きな金の狐に変じる。
「さあ、佐次さん乗って下さい」
佐次を乗せると、黄は宙を走り、狐火を吐いて、妖魔を焼く。
白金の管狐たちも鏡から出てくる妖魔を退治してはいるが、やはり大きな式神二体を相手にしている間は、どうしても打ち漏れ発生する。
白金が式神二体を相手にしている間、黄が次から次と湧き出てくる低級妖魔を何とかしなければならない。
黄の吐いた狐火は、大きな炎となって、妖魔たちを追いかけて一瞬で灰と化す。
「佐門に向かいます」
黄は、佐門に向かって真っすぐに飛ぶ。
佐門の槍が、まず黄を狙うが、佐次がそれを剣で払う。
間髪入れずにやり返す佐次の剣を、佐門はやすやすと受け流してしまう。
「お前では力不足だ。佐次。相変わらず弱い!」
佐門は、そう言ってカラカラと笑う。
「クソッ」
佐次とて強くならなかった訳ではない。打ち漏らした佐門とまた対決する日を思い修練は積んできた。しかし、佐門がそれを上回って強くなっている。
八尾の妖狐、黄の妖力を得ただけではない。それ以降も、妖魔や妖を喰って、その妖力を自分の物にしてきたのだろう。
「黄様。私は大丈夫です。妖魔たちに集中して下さい」
佐次が、そう言って黄から降りる。
「佐次さん?」
心配そうに見る黄に、
「大丈夫です。私が、あの男とケリをつけたいのです。我儘をお許し下さい」
と佐次は、笑った。
「ほう。潔いな。実力差は、歴然としてるのに」
「黙れ、佐門。お前は、今度こそこの俺が息の根を止める。」
佐門に向かって佐次は、剣を構える。
「さて、佐次。お前のその汚い顔を見るのも、今日を最後としよう」
佐門が、そう言って嗤った。
出てくる先から、管狐が一飲みにしているが、数は多い。
「きりがない。……おっと大物だ」
鏡から呼び出されて出てきたのは、大きな鬼の化け物が二体。
角が生えて、目は一つ。金棒を持って、白金をギョロリと睨む。
「なんと。一条戻り橋の式神を手に入れたのだね」
「ああ。かつて葛葉狐の子、安倍清明が隠した妖だ。狐の子である半妖の清明の道具。私が使ってもおかしくはないだろう?」
佐門が、しれっとそう言う。
「妖狐の血筋の者が、稲荷神様の加護を受けて手に入れた物を、お前が使う道理が分からないがね」
白金は、やれやれと首を横に振りながら、二体の式神に向かっていく。
式神二体は、白金に棍棒を振り下ろすが、風のように軽やかに飛ぶ白金には、かすりもしない。
「黄、佐次を頼んだよ」
「心得ております」
黄は、そう言うと、大きな金の狐に変じる。
「さあ、佐次さん乗って下さい」
佐次を乗せると、黄は宙を走り、狐火を吐いて、妖魔を焼く。
白金の管狐たちも鏡から出てくる妖魔を退治してはいるが、やはり大きな式神二体を相手にしている間は、どうしても打ち漏れ発生する。
白金が式神二体を相手にしている間、黄が次から次と湧き出てくる低級妖魔を何とかしなければならない。
黄の吐いた狐火は、大きな炎となって、妖魔たちを追いかけて一瞬で灰と化す。
「佐門に向かいます」
黄は、佐門に向かって真っすぐに飛ぶ。
佐門の槍が、まず黄を狙うが、佐次がそれを剣で払う。
間髪入れずにやり返す佐次の剣を、佐門はやすやすと受け流してしまう。
「お前では力不足だ。佐次。相変わらず弱い!」
佐門は、そう言ってカラカラと笑う。
「クソッ」
佐次とて強くならなかった訳ではない。打ち漏らした佐門とまた対決する日を思い修練は積んできた。しかし、佐門がそれを上回って強くなっている。
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「黄様。私は大丈夫です。妖魔たちに集中して下さい」
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「佐次さん?」
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「大丈夫です。私が、あの男とケリをつけたいのです。我儘をお許し下さい」
と佐次は、笑った。
「ほう。潔いな。実力差は、歴然としてるのに」
「黙れ、佐門。お前は、今度こそこの俺が息の根を止める。」
佐門に向かって佐次は、剣を構える。
「さて、佐次。お前のその汚い顔を見るのも、今日を最後としよう」
佐門が、そう言って嗤った。
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