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3 妖狐
縁<えにし>
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白金は、驚く人々の間を悠然と歩いて行く。
姿は消さず、ゆっくりと前に進んでいく。
止めようとする者がいても、白金達に触れることすら叶わない。強い攻撃を仕掛ければ仕掛けるほど、その者は弾き飛ばされてしまう。
結界を得意とする白金の妖力。件の里で見たその力は、今、黄の結界の穴が塞がれたことで解放されて、ますます威力をまして、何人たりとも近づくことも出来ない。
「ば、化け物だ。」
「教祖様にご報告を!!!」
慌てる信者たちの様子を見て、黄が気づく。
「これは、あの烏天狗を捕まえていた教団と同じではないですか?」
では、あれは、支部だったのだろうか?
本部であるここで佐門が指示して、宗教のフリをしていた。
……なぜ? なぜそんな面倒なことを?
「そうだろうね。人を集めることで権力や金を集めていたのだろう。だが、本当に力を持っていたのは、佐門だけ。あとは、適当に選んだ紛い物の指導者」
白金は、歩みを止めない。
「これは、またお前か。愚弟」
奥の部屋にいたのは、眼鏡をかけてスーツ姿の佐門。
講堂になっているその部屋。多くの取り巻きの人間に囲まれて、佐門は何か演説をしていたようで、壇上に立っていた。
「佐門。お前という奴は、どこまで救いようがない奴だ」
「今度は、妖狐を二匹も。妖狐はよほどこの愚か者が好きだとみえる。……なんとも、一匹は、若草に似て……」
「お前が、私の父……」
佐門に目を向けられて、黄がつぶやく。
「父? ふふ。ということは、あの時の馬鹿な妖狐か。親子そろって馬鹿な妖狐。だが、お前の妖力は、役に立った。礼を言う。しかし、よく助かったな。あの状態で」
佐門が嗤う顔を見て、黄は思い出す。
器の穴はふさがれ、妖力は満たされた。思い出したくないことでも記憶は、ちょっとしたことでよみがえる。
そうだ。
佐門は、私を騙した。母は生きていると幻術で欺いて、連れ出して器に穴をあけた。私を助けようと、養親の黄金狐様は戦って、死んでしまった。
黄金様は、白金様の対の妖狐だったのに。
同じ日に産まれた白金の対の妖狐。それが、黄金狐だった。そして、その縁で白金は、血も繋がらない黄を引き取って助けてくれた。
「さて、黄金を殺し、黄を苦しめた報いは、この白金が、佐次たちと共にくれてやろうな」
白金が、無数の管狐を放てば、建物にいた人間達が逃げ惑う。
「おいおい、乱暴な。妖狐は、おいそれと人間は喰わないのではないか?」
「ああ、だから、要らないものは、邪魔だから排除する。」
管狐は、人間を咥えると、そのまま外へ放り出す。
人間がいなくなれば、広い講堂内には、白金と黄と佐次。そして、佐門だけが残される。
「まあ、いい。あの黒い九尾狐よりは弱そうだ。何とか喰いきれるだろう」
佐門が、胸の人面瘡から、鏡と槍を取り出す。
佐次も人面瘡から剣を取り出して構える。
「白金様、黄様。お気をつけください。あの槍は、烏天狗の力をねじ込んで改造しております」
佐次は、佐門の槍から感じる異様な妖力に警戒する。
「ああ。全く面倒なことだ」
白金は、苦笑いをしていた
姿は消さず、ゆっくりと前に進んでいく。
止めようとする者がいても、白金達に触れることすら叶わない。強い攻撃を仕掛ければ仕掛けるほど、その者は弾き飛ばされてしまう。
結界を得意とする白金の妖力。件の里で見たその力は、今、黄の結界の穴が塞がれたことで解放されて、ますます威力をまして、何人たりとも近づくことも出来ない。
「ば、化け物だ。」
「教祖様にご報告を!!!」
慌てる信者たちの様子を見て、黄が気づく。
「これは、あの烏天狗を捕まえていた教団と同じではないですか?」
では、あれは、支部だったのだろうか?
本部であるここで佐門が指示して、宗教のフリをしていた。
……なぜ? なぜそんな面倒なことを?
「そうだろうね。人を集めることで権力や金を集めていたのだろう。だが、本当に力を持っていたのは、佐門だけ。あとは、適当に選んだ紛い物の指導者」
白金は、歩みを止めない。
「これは、またお前か。愚弟」
奥の部屋にいたのは、眼鏡をかけてスーツ姿の佐門。
講堂になっているその部屋。多くの取り巻きの人間に囲まれて、佐門は何か演説をしていたようで、壇上に立っていた。
「佐門。お前という奴は、どこまで救いようがない奴だ」
「今度は、妖狐を二匹も。妖狐はよほどこの愚か者が好きだとみえる。……なんとも、一匹は、若草に似て……」
「お前が、私の父……」
佐門に目を向けられて、黄がつぶやく。
「父? ふふ。ということは、あの時の馬鹿な妖狐か。親子そろって馬鹿な妖狐。だが、お前の妖力は、役に立った。礼を言う。しかし、よく助かったな。あの状態で」
佐門が嗤う顔を見て、黄は思い出す。
器の穴はふさがれ、妖力は満たされた。思い出したくないことでも記憶は、ちょっとしたことでよみがえる。
そうだ。
佐門は、私を騙した。母は生きていると幻術で欺いて、連れ出して器に穴をあけた。私を助けようと、養親の黄金狐様は戦って、死んでしまった。
黄金様は、白金様の対の妖狐だったのに。
同じ日に産まれた白金の対の妖狐。それが、黄金狐だった。そして、その縁で白金は、血も繋がらない黄を引き取って助けてくれた。
「さて、黄金を殺し、黄を苦しめた報いは、この白金が、佐次たちと共にくれてやろうな」
白金が、無数の管狐を放てば、建物にいた人間達が逃げ惑う。
「おいおい、乱暴な。妖狐は、おいそれと人間は喰わないのではないか?」
「ああ、だから、要らないものは、邪魔だから排除する。」
管狐は、人間を咥えると、そのまま外へ放り出す。
人間がいなくなれば、広い講堂内には、白金と黄と佐次。そして、佐門だけが残される。
「まあ、いい。あの黒い九尾狐よりは弱そうだ。何とか喰いきれるだろう」
佐門が、胸の人面瘡から、鏡と槍を取り出す。
佐次も人面瘡から剣を取り出して構える。
「白金様、黄様。お気をつけください。あの槍は、烏天狗の力をねじ込んで改造しております」
佐次は、佐門の槍から感じる異様な妖力に警戒する。
「ああ。全く面倒なことだ」
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