死霊の指

ねこ沢ふたよ

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二重の罠

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「なんでだよ。義弘。計画を中止って」
竜彦が義弘にくってかかる。

「そうよ。早くしないと、指でこの校舎が埋まっちゃう」

 めぐみは、先ほど襲われた恐怖で焦っていた。
 義弘の言葉を無視して、ゴリ崎たちが先に行って作業しているはずのプールへ向かおうとする。そこを義弘に腕を掴まれて阻止されてしまう。

「聞けって。いいか、これは罠なんだよ。悪魔博士と小鳥の森社の」

 悪魔博士、小鳥の森社。あの怪しい本の作者と出版社。どういうことだろう?

「ことり箱って呪いの道具、知っているか?」

 義弘は語る。

 義弘がネットで調べたという、ことり箱の製造方法は、おぞましい物だった。
 雌の血で満たした綺麗な箱に、胎児の一部を入れる。入れられる胎児の数が多いほどその呪いの力は大きくなる。

「そ、それがどうしたのよ。ここには、雌の血も胎児もいないじゃない」

「ああ。だが、似ているんだ。考えてみろよ。プールに満たされた聖水。その中に大量の死霊の指をぶち込むんだ。特別な物で満たされた器に投入される生贄」

「そんな、まさか。考え過ぎだろ?」

 否定しながらも竜彦の声が震える。義弘のスマホの画面のコトリ箱の説明を何度も読んで何度も考え直して、何度も背筋が凍る。
 思い過ごしかもしれないが、もしそれが本当だったとしたら、学校のプールいっぱいの呪物が完成し、取り返しのつかない事になる。そんな大量の呪物どうしたらいいのか分からないし、厳密には、ネットの呪物とは違うから、どんな呪いが発動するのか、見当つかない。

「この悪魔博士、学術的な興味によって執筆したって言っているんだろう?この死霊の指を呼び出した時点で、最後はどこかに聖水を貯めてそこに指を呼び寄せてぶち込むように、本の記載で誘導している。それでどんな呪物がどんな大きさで出来上がるのか。それが悪魔博士の研究で、俺らはモルモットなんだ」
義弘の言葉に、めぐみは背筋が凍る。

「待って。でも、それ、もし指を退治しなければ、いずれその場所は、指でいっぱいになるでしょ?」

 結界を四方に張った空間、あるいは、結界を張らなかったとしても、指数関数で増えていく死霊の指。空間の大きさによって満たされるまでの時間は変化するが、そこは、いつかは指で満たされる。この場合、ゴリ崎は校舎全体に結界を張ったのだから、校舎が指で満たされれば、何か特別な力を持った物で満たされた閉じられた箱は完成してしまう。

「特別な物で満たされた箱に、私たち人間が生贄だとしたら?」

 つまり、この悪魔博士の実験は、二重の罠。
 ふざけた名前の変態悪魔博士の恐ろしい計画。

 指を発生させた時点で、罠にはめられているのだ。

「指を野放しでも駄目、溜めた聖水に指を誘い込んでも駄目。じゃあ、どうすればいいんだよ。聖水を作っても、埒が明かないじゃないか」

 竜彦が頭を抱える。
 霧吹きやバケツで聖水をかければ、指は消滅する。だけれども、呪文で呼び寄せた指全部に霧吹きやバケツでどう対応すればいいのか??

 何か、聖水を貯めずに指に一気にかける方法があれば……。

 めぐみは、考えながら天井を見る。
 火器を使うこの調理室に張り巡らされた鉄パイプが目に入る。

 ……これだ。
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