14 / 16
二重の罠
しおりを挟む
「なんでだよ。義弘。計画を中止って」
竜彦が義弘にくってかかる。
「そうよ。早くしないと、指でこの校舎が埋まっちゃう」
めぐみは、先ほど襲われた恐怖で焦っていた。
義弘の言葉を無視して、ゴリ崎たちが先に行って作業しているはずのプールへ向かおうとする。そこを義弘に腕を掴まれて阻止されてしまう。
「聞けって。いいか、これは罠なんだよ。悪魔博士と小鳥の森社の」
悪魔博士、小鳥の森社。あの怪しい本の作者と出版社。どういうことだろう?
「ことり箱って呪いの道具、知っているか?」
義弘は語る。
義弘がネットで調べたという、ことり箱の製造方法は、おぞましい物だった。
雌の血で満たした綺麗な箱に、胎児の一部を入れる。入れられる胎児の数が多いほどその呪いの力は大きくなる。
「そ、それがどうしたのよ。ここには、雌の血も胎児もいないじゃない」
「ああ。だが、似ているんだ。考えてみろよ。プールに満たされた聖水。その中に大量の死霊の指をぶち込むんだ。特別な物で満たされた器に投入される生贄」
「そんな、まさか。考え過ぎだろ?」
否定しながらも竜彦の声が震える。義弘のスマホの画面のコトリ箱の説明を何度も読んで何度も考え直して、何度も背筋が凍る。
思い過ごしかもしれないが、もしそれが本当だったとしたら、学校のプールいっぱいの呪物が完成し、取り返しのつかない事になる。そんな大量の呪物どうしたらいいのか分からないし、厳密には、ネットの呪物とは違うから、どんな呪いが発動するのか、見当つかない。
「この悪魔博士、学術的な興味によって執筆したって言っているんだろう?この死霊の指を呼び出した時点で、最後はどこかに聖水を貯めてそこに指を呼び寄せてぶち込むように、本の記載で誘導している。それでどんな呪物がどんな大きさで出来上がるのか。それが悪魔博士の研究で、俺らはモルモットなんだ」
義弘の言葉に、めぐみは背筋が凍る。
「待って。でも、それ、もし指を退治しなければ、いずれその場所は、指でいっぱいになるでしょ?」
結界を四方に張った空間、あるいは、結界を張らなかったとしても、指数関数で増えていく死霊の指。空間の大きさによって満たされるまでの時間は変化するが、そこは、いつかは指で満たされる。この場合、ゴリ崎は校舎全体に結界を張ったのだから、校舎が指で満たされれば、何か特別な力を持った物で満たされた閉じられた箱は完成してしまう。
「特別な物で満たされた箱に、私たち人間が生贄だとしたら?」
つまり、この悪魔博士の実験は、二重の罠。
ふざけた名前の変態悪魔博士の恐ろしい計画。
指を発生させた時点で、罠にはめられているのだ。
「指を野放しでも駄目、溜めた聖水に指を誘い込んでも駄目。じゃあ、どうすればいいんだよ。聖水を作っても、埒が明かないじゃないか」
竜彦が頭を抱える。
霧吹きやバケツで聖水をかければ、指は消滅する。だけれども、呪文で呼び寄せた指全部に霧吹きやバケツでどう対応すればいいのか??
何か、聖水を貯めずに指に一気にかける方法があれば……。
めぐみは、考えながら天井を見る。
火器を使うこの調理室に張り巡らされた鉄パイプが目に入る。
……これだ。
竜彦が義弘にくってかかる。
「そうよ。早くしないと、指でこの校舎が埋まっちゃう」
めぐみは、先ほど襲われた恐怖で焦っていた。
義弘の言葉を無視して、ゴリ崎たちが先に行って作業しているはずのプールへ向かおうとする。そこを義弘に腕を掴まれて阻止されてしまう。
「聞けって。いいか、これは罠なんだよ。悪魔博士と小鳥の森社の」
悪魔博士、小鳥の森社。あの怪しい本の作者と出版社。どういうことだろう?
「ことり箱って呪いの道具、知っているか?」
義弘は語る。
義弘がネットで調べたという、ことり箱の製造方法は、おぞましい物だった。
雌の血で満たした綺麗な箱に、胎児の一部を入れる。入れられる胎児の数が多いほどその呪いの力は大きくなる。
「そ、それがどうしたのよ。ここには、雌の血も胎児もいないじゃない」
「ああ。だが、似ているんだ。考えてみろよ。プールに満たされた聖水。その中に大量の死霊の指をぶち込むんだ。特別な物で満たされた器に投入される生贄」
「そんな、まさか。考え過ぎだろ?」
否定しながらも竜彦の声が震える。義弘のスマホの画面のコトリ箱の説明を何度も読んで何度も考え直して、何度も背筋が凍る。
思い過ごしかもしれないが、もしそれが本当だったとしたら、学校のプールいっぱいの呪物が完成し、取り返しのつかない事になる。そんな大量の呪物どうしたらいいのか分からないし、厳密には、ネットの呪物とは違うから、どんな呪いが発動するのか、見当つかない。
「この悪魔博士、学術的な興味によって執筆したって言っているんだろう?この死霊の指を呼び出した時点で、最後はどこかに聖水を貯めてそこに指を呼び寄せてぶち込むように、本の記載で誘導している。それでどんな呪物がどんな大きさで出来上がるのか。それが悪魔博士の研究で、俺らはモルモットなんだ」
義弘の言葉に、めぐみは背筋が凍る。
「待って。でも、それ、もし指を退治しなければ、いずれその場所は、指でいっぱいになるでしょ?」
結界を四方に張った空間、あるいは、結界を張らなかったとしても、指数関数で増えていく死霊の指。空間の大きさによって満たされるまでの時間は変化するが、そこは、いつかは指で満たされる。この場合、ゴリ崎は校舎全体に結界を張ったのだから、校舎が指で満たされれば、何か特別な力を持った物で満たされた閉じられた箱は完成してしまう。
「特別な物で満たされた箱に、私たち人間が生贄だとしたら?」
つまり、この悪魔博士の実験は、二重の罠。
ふざけた名前の変態悪魔博士の恐ろしい計画。
指を発生させた時点で、罠にはめられているのだ。
「指を野放しでも駄目、溜めた聖水に指を誘い込んでも駄目。じゃあ、どうすればいいんだよ。聖水を作っても、埒が明かないじゃないか」
竜彦が頭を抱える。
霧吹きやバケツで聖水をかければ、指は消滅する。だけれども、呪文で呼び寄せた指全部に霧吹きやバケツでどう対応すればいいのか??
何か、聖水を貯めずに指に一気にかける方法があれば……。
めぐみは、考えながら天井を見る。
火器を使うこの調理室に張り巡らされた鉄パイプが目に入る。
……これだ。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説


百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
傷心中の女性のホラーAI話
月歌(ツキウタ)
ホラー
傷心中の女性のホラー話を500文字以内で。AIが考える傷心とは。
☆月歌ってどんな人?こんな人↓↓☆
『嫌われ悪役令息は王子のベッドで前世を思い出す』が、アルファポリスの第9回BL小説大賞にて奨励賞を受賞(#^.^#)
その後、幸運な事に書籍化の話が進み、2023年3月13日に無事に刊行される運びとなりました。49歳で商業BL作家としてデビューさせていただく機会を得ました。
☆表紙絵、挿絵は全てAIイラスです
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

不思議と戦慄の短編集
羽柴田村麻呂
ホラー
「実話と創作が交錯する、不思議で戦慄の短編集」
これは現実か、それとも幻想か――私自身や友人の実体験をもとにした話から、想像力が生み出す奇譚まで、不可思議な物語を集めた短編集。日常のすぐそばにあるかもしれない“異界”を、あなたも覗いてみませんか?
赤い部屋
山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。
真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。
東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。
そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。
が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。
だが、「呪い」は実在した。
「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。
凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。
そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。
「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか?
誰がこの「呪い」を生み出したのか?
そして彼らはなぜ、呪われたのか?
徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。
その先にふたりが見たものは——。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる