死霊の指

ねこ沢ふたよ

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生贄

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 めぐみは調理室にいた。
 家庭科の時間に使う教室。そこに、出口を死霊の指に阻まれて、お御堂に戻りたくても戻れない状況にあった。
 スマホの着信音に応えて出れば、義弘の声が響く。

「うん。そう。我に返ったら、調理室にいたの。出口を指が阻んでいて」
めぐみは指を睨みながら、義弘に状況を説明する。

 扉に張りついてめぐみを威嚇する指たち。
 扉の上でも、時間で分裂して指はまた増える。

「きりがない……」

 めぐみはぼやく。
 一心不乱に指を潰しまわって来たが、めぐみが学校に来てから潰せた指なんて、二十程度。今回増えた指の増加量を上回ってはいないだろう。
 さすがに何もしないよりかは、数は少なくなっているはずだが、指全体の数を減らすことは、めぐみ達全員が潰した量を考えても出来ていない。

 しかも、困ったことに分裂をするたびに指は強くなる。

 最初の指は、あんなに簡単につぶれたのに、今目の前にいる指たちは、めぐみが渾身の力を込めて二、三回叩かなければ、駆除できなくなっている。

 ヤバイ。

 竜彦の考案した聖水が効かなければ、きっとめぐみ達は、指に負ける。
 結界の中で、指たちは増殖を続けて、この結界は、指でいっぱいになる。その時、めぐみ達はどうなるのだろう?
 
 生贄だ……。
 
 めぐみはゾッとする。

 結界にあふれかえる指。
 指で満たされた箱の中に、生贄の恵たちが、六人。
 ……いや、下手をすれば、朝になって登校してきた生徒や先生の中にも逃げ遅れた犠牲者が出るかもしれない。

 ま、負けるわけにはいかない。

 ザッ

 分裂の終わった最早何本か分からないほどの量になった指たちが、一斉にめぐみを指さす。
 攻撃に来る。

「ひっ」

 強気なめぐみでも、ゾワゾワと背筋を沸き上がる悪寒を感じる。

「こ、この野郎ども!!」

 ブンブンとハンマーを振るうが、指はめぐみを指すのを辞めない。

 ……嘲笑されているように感じる。

 一斉にめぐみに指が飛びかかってくる。一瞬でめぐみは全身指まみれになる。


「めぐみ!!」

 竜彦の声。
 バケツ一杯の聖水をぶっかけられる。

 めぐみの体の上で、のたうち回る指がドロドロに溶けていく。

「最悪……」

 水浸しで指の残骸でドロドロになっためぐみは、そうぼやいた。


「分かったわ。私もプールに行けばいいのね」

 竜彦の説明に、めぐみが同意する。
 なるほど、賢い方法だ。一本一本探し出して潰すよりも、呼び寄せていっきに消してしまった方が何倍も早いし、その方法ならばうまく打ち勝てる気がする。


「いや、駄目だ。計画は中止だ」
と、スマホの画面を見ながら義弘が言った。
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