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秘策
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竜彦は言う。
「まず、プールの水を全部、聖なる水に変えるんだ!」
あすかと唯が、ありったけの十字架をお御堂からプールに運ぶ。
早くプールの水を聖なる水に変化させるには、出来るだけ多くの十字架があった方が良いだろう。
「そこで、先生とめぐみが祈りを捧げて、とにかく水全体が聖なる水になるように」
「お、おう。俺の非モテパワーが必要なんだな。任せろ」
ゴリ崎も、あすかたちと一緒にプールに移動する。
「後はどうするんだ?」
義弘は聞く。
「これだよ。悪魔を呼び寄せる呪文。これで、一気に指をプールに引き込む」
義弘に、竜彦が答えた。
竜彦の開いた本のページには、悪魔を呼びよせる呪文が載っている。
その挿絵には、おどろおどろしい魔物以外に、確かに、呪文を唱える人間に指の形をした小さな物体が呼び寄せられている様子が描かれている。
「この本、意外と優秀。ちゃんと、色々とヒントがちりばめられている」
パラパラと本を竜彦がめくる。
「小鳥の森……コトリのモリ……ことり。まさかな」
「どうしたの?」
「あ、いや。あまり関係ないからいい」
義弘は、昔聞いた、ネット上の有名ホラー、『ことり箱』の話を、一瞬思い出した。
箱の中に子どもの体の一部を入れて、とんでもなく恐ろしい呪物に変える話。
たいてい、古い蔵から見つけて、見つけた者が呪われて……。
一瞬、結界がその箱に思えて、自分達が自らその呪物になってしまったのではないかと錯覚を覚える。
まさか……。こんなふざけた指が、そんな……。思い過しだろう。
義弘は、恐ろしい考えを、自分の頭の中から無理に消し去る。
「プールの水、量が多いから、ゴリ崎だけでは足りないかもしれない。めぐみにも祈りを捧げて欲しいんだけれども……」
竜彦はあたりを見回すが、めぐみの姿がない。
……いない。
バーサーカーのように、己の将来への恐怖から指を駆逐しまわっていた、めぐみの姿がどこにも見当たらない。
我を失って、聖なる水から逃げ惑う指を追いかけてしまったのだろうか。
「本当、めぐみって人のいうこと聞かない。周り見ろってんだよ!」
竜彦がため息をつく。
「マジそれな」
義弘も、竜彦に同意する。
めぐみは、けっこう可愛い。言葉はきついが、それが良いというドM系の隠れファンは結構いるのだが、とにかく周りを見ないめぐみ。
どんな相手にも、だから? 結論は? もっと簡潔にまとめて言って、なんて返答しかしない。
めぐみが、ちゃんと周囲を見ることを覚えて、歩調を合わせるなんて芸当を覚えたら、めぐみは、十分モテると思うのだが……。
こんなところで、バーサーカー(狂戦士)になるようでは、先が思いやられる。
まあ、そこがめぐみらしさとも言えるのだが。
ここで文句を言っていても仕方ない。
相手は、攻撃することを徐々に覚えている死霊の指。はぐれて一人になったところを襲われるのは、こういう話のセオリー。
早くめぐみを見つけ出さないと、大変なことになってしまうかもしれない。
義弘と竜彦は、広い校舎をめぐみを探すために歩き出した。
「まず、プールの水を全部、聖なる水に変えるんだ!」
あすかと唯が、ありったけの十字架をお御堂からプールに運ぶ。
早くプールの水を聖なる水に変化させるには、出来るだけ多くの十字架があった方が良いだろう。
「そこで、先生とめぐみが祈りを捧げて、とにかく水全体が聖なる水になるように」
「お、おう。俺の非モテパワーが必要なんだな。任せろ」
ゴリ崎も、あすかたちと一緒にプールに移動する。
「後はどうするんだ?」
義弘は聞く。
「これだよ。悪魔を呼び寄せる呪文。これで、一気に指をプールに引き込む」
義弘に、竜彦が答えた。
竜彦の開いた本のページには、悪魔を呼びよせる呪文が載っている。
その挿絵には、おどろおどろしい魔物以外に、確かに、呪文を唱える人間に指の形をした小さな物体が呼び寄せられている様子が描かれている。
「この本、意外と優秀。ちゃんと、色々とヒントがちりばめられている」
パラパラと本を竜彦がめくる。
「小鳥の森……コトリのモリ……ことり。まさかな」
「どうしたの?」
「あ、いや。あまり関係ないからいい」
義弘は、昔聞いた、ネット上の有名ホラー、『ことり箱』の話を、一瞬思い出した。
箱の中に子どもの体の一部を入れて、とんでもなく恐ろしい呪物に変える話。
たいてい、古い蔵から見つけて、見つけた者が呪われて……。
一瞬、結界がその箱に思えて、自分達が自らその呪物になってしまったのではないかと錯覚を覚える。
まさか……。こんなふざけた指が、そんな……。思い過しだろう。
義弘は、恐ろしい考えを、自分の頭の中から無理に消し去る。
「プールの水、量が多いから、ゴリ崎だけでは足りないかもしれない。めぐみにも祈りを捧げて欲しいんだけれども……」
竜彦はあたりを見回すが、めぐみの姿がない。
……いない。
バーサーカーのように、己の将来への恐怖から指を駆逐しまわっていた、めぐみの姿がどこにも見当たらない。
我を失って、聖なる水から逃げ惑う指を追いかけてしまったのだろうか。
「本当、めぐみって人のいうこと聞かない。周り見ろってんだよ!」
竜彦がため息をつく。
「マジそれな」
義弘も、竜彦に同意する。
めぐみは、けっこう可愛い。言葉はきついが、それが良いというドM系の隠れファンは結構いるのだが、とにかく周りを見ないめぐみ。
どんな相手にも、だから? 結論は? もっと簡潔にまとめて言って、なんて返答しかしない。
めぐみが、ちゃんと周囲を見ることを覚えて、歩調を合わせるなんて芸当を覚えたら、めぐみは、十分モテると思うのだが……。
こんなところで、バーサーカー(狂戦士)になるようでは、先が思いやられる。
まあ、そこがめぐみらしさとも言えるのだが。
ここで文句を言っていても仕方ない。
相手は、攻撃することを徐々に覚えている死霊の指。はぐれて一人になったところを襲われるのは、こういう話のセオリー。
早くめぐみを見つけ出さないと、大変なことになってしまうかもしれない。
義弘と竜彦は、広い校舎をめぐみを探すために歩き出した。
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