10 / 16
世の真理
しおりを挟む
「なんでよ?? どういうことなのよ!!」
めぐみの絶叫が、祈りを捧げる厳かな部屋であるはずのお御堂の中でこだまする。
『穢れなき者』の該当者が、自分とゴリ崎だけなのが、めぐみには納得がいかないのだろう。
「だって、ほら。唯先輩と竜彦先輩は、お付き合いされていますし」
あすかが、小さい子をなだめるように、めぐみに説明する。
「そこはまあ、仕方ないわよ。でも、あすかや信じらんないことに、この眼鏡義弘まで……」
納得がいかない。学年が下のあすかや、自分よりも堅物で通っている義弘まで、そういった恋の相手がいるなんて、信じられない。
「いいですか? この学校は、お嬢様やお坊ちゃんの多い、ミッション系の私立で、制服だってまあ可愛いんです」
「それがどうだって言うのよ」
「モテるんですよ。他校の生徒に」
「えっ?」
めぐみはたじろぐ。
他校の生徒に……モテる?
「登下校の際に、他校の生徒から、ナンパされたりして、恋愛に発展するなんてパターンは、山ほどです」
なんだと? 登下校時なんて、英語の単語を聞きながら、できるだけ高速で歩くものではないのか? 他校の生徒が声を掛ける?? そんなイベントが存在する空間だったのか。
「そ、そりゃ、あすかは可愛いし、胸だって大きいし……モテるかもだけれど」
そうだ。あすかが特殊なのだ。そうに違いない。
「ていうか、なんで、義弘まで。虚偽なんじゃないでしょうね?」
「何をいうか。眼鏡キャラというものは、一定の需要があってだな。この眼鏡に好意を持ってくれる素敵な方もいるのだ」
まじか。私と同じボッチなのだとばかり思っていた。
「逆に先生が、『穢れなき者』に該当するのが、ドン引きっていうか……」
竜彦が、憐れな者見る目で、ゴリ崎を見つめる。
「そうよね。大人なのに」
「同類として警告する。八十田よ。世の真理として、大人になったからって自動的に恋人が出来て、結婚できる訳ではないのだ」
ゴリ崎が高らかに宣言する。
「え……嘘でしょ? 二十歳過ぎたあたりで普通にしてたら、恋人的な人ができて、社会人になって四、五年で結婚できるのだとばかり思っていたわ」
「甘い。俺も昔はそう思っていた。だが、違うのだ。大人になろうが、非モテは、非モテなのだ。世の中は、非情なのだよ!」
ゴリ崎の言葉に、めぐみがワナワナと震える。
た、確かにそうだ……。そうでなければ、この世に独身の男女がこんなにたくさんいる訳がない。
小学校、中学校と自動的に入学して卒業する世の中。世間のレールから道を踏み外さないのであれば、自動的に恋愛や結婚も降って湧くような気でいた。
なぜ、その恐ろしい真実に今まで気づかなかったんだろう……。
めぐみは、今日一番に震えあがる。
「いいから。ねえ。早くしないと指また増えちゃうし。その非モテを存分に生かして、祈りを捧げてちょうだい」
唯が、世の真理に恐れおののくゴリ崎とめぐみを急かした。
こうして、金の十字架の光を浴びた聖なる水は、穢れなき者達の祈りをもって浄化され、悪しき者を退ける力を持った。
めぐみの絶叫が、祈りを捧げる厳かな部屋であるはずのお御堂の中でこだまする。
『穢れなき者』の該当者が、自分とゴリ崎だけなのが、めぐみには納得がいかないのだろう。
「だって、ほら。唯先輩と竜彦先輩は、お付き合いされていますし」
あすかが、小さい子をなだめるように、めぐみに説明する。
「そこはまあ、仕方ないわよ。でも、あすかや信じらんないことに、この眼鏡義弘まで……」
納得がいかない。学年が下のあすかや、自分よりも堅物で通っている義弘まで、そういった恋の相手がいるなんて、信じられない。
「いいですか? この学校は、お嬢様やお坊ちゃんの多い、ミッション系の私立で、制服だってまあ可愛いんです」
「それがどうだって言うのよ」
「モテるんですよ。他校の生徒に」
「えっ?」
めぐみはたじろぐ。
他校の生徒に……モテる?
「登下校の際に、他校の生徒から、ナンパされたりして、恋愛に発展するなんてパターンは、山ほどです」
なんだと? 登下校時なんて、英語の単語を聞きながら、できるだけ高速で歩くものではないのか? 他校の生徒が声を掛ける?? そんなイベントが存在する空間だったのか。
「そ、そりゃ、あすかは可愛いし、胸だって大きいし……モテるかもだけれど」
そうだ。あすかが特殊なのだ。そうに違いない。
「ていうか、なんで、義弘まで。虚偽なんじゃないでしょうね?」
「何をいうか。眼鏡キャラというものは、一定の需要があってだな。この眼鏡に好意を持ってくれる素敵な方もいるのだ」
まじか。私と同じボッチなのだとばかり思っていた。
「逆に先生が、『穢れなき者』に該当するのが、ドン引きっていうか……」
竜彦が、憐れな者見る目で、ゴリ崎を見つめる。
「そうよね。大人なのに」
「同類として警告する。八十田よ。世の真理として、大人になったからって自動的に恋人が出来て、結婚できる訳ではないのだ」
ゴリ崎が高らかに宣言する。
「え……嘘でしょ? 二十歳過ぎたあたりで普通にしてたら、恋人的な人ができて、社会人になって四、五年で結婚できるのだとばかり思っていたわ」
「甘い。俺も昔はそう思っていた。だが、違うのだ。大人になろうが、非モテは、非モテなのだ。世の中は、非情なのだよ!」
ゴリ崎の言葉に、めぐみがワナワナと震える。
た、確かにそうだ……。そうでなければ、この世に独身の男女がこんなにたくさんいる訳がない。
小学校、中学校と自動的に入学して卒業する世の中。世間のレールから道を踏み外さないのであれば、自動的に恋愛や結婚も降って湧くような気でいた。
なぜ、その恐ろしい真実に今まで気づかなかったんだろう……。
めぐみは、今日一番に震えあがる。
「いいから。ねえ。早くしないと指また増えちゃうし。その非モテを存分に生かして、祈りを捧げてちょうだい」
唯が、世の真理に恐れおののくゴリ崎とめぐみを急かした。
こうして、金の十字架の光を浴びた聖なる水は、穢れなき者達の祈りをもって浄化され、悪しき者を退ける力を持った。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説


百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
傷心中の女性のホラーAI話
月歌(ツキウタ)
ホラー
傷心中の女性のホラー話を500文字以内で。AIが考える傷心とは。
☆月歌ってどんな人?こんな人↓↓☆
『嫌われ悪役令息は王子のベッドで前世を思い出す』が、アルファポリスの第9回BL小説大賞にて奨励賞を受賞(#^.^#)
その後、幸運な事に書籍化の話が進み、2023年3月13日に無事に刊行される運びとなりました。49歳で商業BL作家としてデビューさせていただく機会を得ました。
☆表紙絵、挿絵は全てAIイラスです
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

不思議と戦慄の短編集
羽柴田村麻呂
ホラー
「実話と創作が交錯する、不思議で戦慄の短編集」
これは現実か、それとも幻想か――私自身や友人の実体験をもとにした話から、想像力が生み出す奇譚まで、不可思議な物語を集めた短編集。日常のすぐそばにあるかもしれない“異界”を、あなたも覗いてみませんか?
赤い部屋
山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。
真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。
東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。
そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。
が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。
だが、「呪い」は実在した。
「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。
凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。
そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。
「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか?
誰がこの「呪い」を生み出したのか?
そして彼らはなぜ、呪われたのか?
徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。
その先にふたりが見たものは——。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる