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退魔の法
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ゴリ崎に玄関扉を開けてもらって、中に踊り入っためぐみたちは、それぞれ家から持ってきた武器でガンガンと指をぶっ叩く。
めぐみの手には、ハンマー。義弘の手には、金属バッド。竜彦は、鉄アレイ。唯は虫取り網。そして、あすかは、鉄のフライパン。
思った以上に役に立っているのは、唯の虫取り網で、唯がまとめて何本かを虫取り網で捕まえて身動きが取れなくなったところを、あすかや竜彦がガンガンとぶっ叩けば、一度に数本の指を始末できて都合がよい。
めぐみのハンマーや義弘の金属バッドでは、なかなか動きの素早くなった指に対応できない。何度かの空振りをして、一度当たるか当たらないか。
ゴリ崎に至っては、パワーは一番あるのに、持っている武器が、来客用のスリッパで、全く戦闘力にならない。あれでは、指は壊れない。
「らちが明かないわね」
チッとめぐみが舌打ちする。
「だが、朝になれば、生徒や先生たちが登校してきて大混乱になるぞ」
ゴリ崎がオロオロしている。
「それどころではないんですよ。朝には、この指が何本になっているのか。考えただけで恐ろしいんです」
義弘が、指数関数の恐ろしさをゴリ崎に説明する。ゴリ崎の顔は、みるみる青ざめ、何度も自分のスマホの電卓機能で確認し直して、
「本当だ……。こりゃ、下手したら人類が滅亡する……」
と、ゴリ崎が愕然としている。
いや、人類滅亡とまではいかないだろうが、大騒ぎのパニックになって、指駆除のために多くの人員が裂かれ、毎日のニュースに、指の数予想や、大量発生地域のお知らせなんて物が流れるかもしれない。
とんでもなく面倒なことになるし、きっと、最初に指を生み出してしまったこの学校とめぐみたちは、戦犯として断罪されるかもしれない。ニュースキャスターや謎の専門家たちが、「なぜ、こんな事態を巻き起こしてしまったのか……」「日本の教育の見直しが必要ってことでは……」「今時の若者の無責任を象徴する出来事……」なんてことを、知ったような口で語り合っている光景が、やすやすと目に浮かぶ。
ヤバイ……。人類は終わらなくても、人生は終わるかもしれない。
めぐみ達は焦る。
「十代で人生終わっている場合じゃないのよ。何か考えないと」
「小西崎先生、あの本はどこ?」
竜彦が、ゴリ崎に聞けば、
「え、ああ。ここに」
ゴリ崎が本を竜彦に渡す。
「どうしたの? 何か思いついたの?」
唯が、竜彦のめくるページを覗き込む。
「退魔の項目?」
「そう。これ」
退魔の法……。金の十字架の光を浴びたる聖なる水に、穢れなき者の祈りを込めることによって、その水で浄化させる。その水の作用により降臨した悪霊が消し飛び……。
「なによ。意味が分からなくて、却下した項目じゃない」
何か名案が竜彦に浮かんだのかと思ったのに、がっかりだ。めぐみは、肩を落とす。
「待って。でも、これを実現出来たら、水を吹きかけたら、指は退治出来るんでしょ? この聖なる水ってやつを作成して、霧吹きに入れたら、実質殺虫剤。大量殺戮が可能になるはずだよ。家で気づいて、空の霧吹きを持ってきたんだ」
竜彦が、袋からバラバラと霧吹きを三つほど出してくる。
竜彦の言葉に、なるほど、とめぐみも思う。
でも、肝心の製法は、やっぱり分からない。金の十字架、穢れなき者の祈り……。
「でも、金の十字架……」
「ある。わが校はミッション系だぞ?ミサ用の御堂に、金の十字架は飾っている」
義弘が興奮気味に言って、取ってくると走り出した。
ならば、一緒に行った方が早いだろう。全員で、義弘の後を追ってお御堂まで移動する。
「後は、穢れなき者ね」
「それは、もう、こういった物のお約束でしょ」
竜彦は自信満々だ。
……なんだっていうんだろう。
意味の分からないめぐみは、きょとんとしていた。
めぐみの手には、ハンマー。義弘の手には、金属バッド。竜彦は、鉄アレイ。唯は虫取り網。そして、あすかは、鉄のフライパン。
思った以上に役に立っているのは、唯の虫取り網で、唯がまとめて何本かを虫取り網で捕まえて身動きが取れなくなったところを、あすかや竜彦がガンガンとぶっ叩けば、一度に数本の指を始末できて都合がよい。
めぐみのハンマーや義弘の金属バッドでは、なかなか動きの素早くなった指に対応できない。何度かの空振りをして、一度当たるか当たらないか。
ゴリ崎に至っては、パワーは一番あるのに、持っている武器が、来客用のスリッパで、全く戦闘力にならない。あれでは、指は壊れない。
「らちが明かないわね」
チッとめぐみが舌打ちする。
「だが、朝になれば、生徒や先生たちが登校してきて大混乱になるぞ」
ゴリ崎がオロオロしている。
「それどころではないんですよ。朝には、この指が何本になっているのか。考えただけで恐ろしいんです」
義弘が、指数関数の恐ろしさをゴリ崎に説明する。ゴリ崎の顔は、みるみる青ざめ、何度も自分のスマホの電卓機能で確認し直して、
「本当だ……。こりゃ、下手したら人類が滅亡する……」
と、ゴリ崎が愕然としている。
いや、人類滅亡とまではいかないだろうが、大騒ぎのパニックになって、指駆除のために多くの人員が裂かれ、毎日のニュースに、指の数予想や、大量発生地域のお知らせなんて物が流れるかもしれない。
とんでもなく面倒なことになるし、きっと、最初に指を生み出してしまったこの学校とめぐみたちは、戦犯として断罪されるかもしれない。ニュースキャスターや謎の専門家たちが、「なぜ、こんな事態を巻き起こしてしまったのか……」「日本の教育の見直しが必要ってことでは……」「今時の若者の無責任を象徴する出来事……」なんてことを、知ったような口で語り合っている光景が、やすやすと目に浮かぶ。
ヤバイ……。人類は終わらなくても、人生は終わるかもしれない。
めぐみ達は焦る。
「十代で人生終わっている場合じゃないのよ。何か考えないと」
「小西崎先生、あの本はどこ?」
竜彦が、ゴリ崎に聞けば、
「え、ああ。ここに」
ゴリ崎が本を竜彦に渡す。
「どうしたの? 何か思いついたの?」
唯が、竜彦のめくるページを覗き込む。
「退魔の項目?」
「そう。これ」
退魔の法……。金の十字架の光を浴びたる聖なる水に、穢れなき者の祈りを込めることによって、その水で浄化させる。その水の作用により降臨した悪霊が消し飛び……。
「なによ。意味が分からなくて、却下した項目じゃない」
何か名案が竜彦に浮かんだのかと思ったのに、がっかりだ。めぐみは、肩を落とす。
「待って。でも、これを実現出来たら、水を吹きかけたら、指は退治出来るんでしょ? この聖なる水ってやつを作成して、霧吹きに入れたら、実質殺虫剤。大量殺戮が可能になるはずだよ。家で気づいて、空の霧吹きを持ってきたんだ」
竜彦が、袋からバラバラと霧吹きを三つほど出してくる。
竜彦の言葉に、なるほど、とめぐみも思う。
でも、肝心の製法は、やっぱり分からない。金の十字架、穢れなき者の祈り……。
「でも、金の十字架……」
「ある。わが校はミッション系だぞ?ミサ用の御堂に、金の十字架は飾っている」
義弘が興奮気味に言って、取ってくると走り出した。
ならば、一緒に行った方が早いだろう。全員で、義弘の後を追ってお御堂まで移動する。
「後は、穢れなき者ね」
「それは、もう、こういった物のお約束でしょ」
竜彦は自信満々だ。
……なんだっていうんだろう。
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