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後ろ指
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めぐみの母親は、深夜に学校に向かう娘を車で送ってくれる時に、
「めぐみちゃん。恋愛は、人生にとって大事よ。お母さん、たいていの相手は、応援するわ。……でもね、でも、ゴリ……小西崎先生は、ちょっと応援できないわ。三十八歳独身体育教師。元気な良い先生よ。でも、生徒に手を出すのはちょっと、それに、夜中に学校に呼び出すだなんて……」
もぞもぞと、そんなことを言っていた。
「無いから。ゴリ崎と勝手にくっつけないでよ。害虫駆除を手伝ってほしいって頼まれただけ。他のメンバーに連絡して、来ることになっているから」
怒りに満ちためぐみの言葉を、母親はそう? と半信半疑で受け止めていた。
ムカつく。なんでゴリ崎と。
イライラMAXのめぐみが、家から持ち出したハンマーを片手に握りしめて玄関に立っていると、めぐみから連絡を受けた他のメンバーもやってくる。
義弘、あすか、唯、竜彦。次々と姿を現す。
皆、指の増殖力の怖さは知っている。何とかしなければと、面倒でも怖くても、逃げ出すという選択肢はなかったのだろう。
「怖っ」
真夜中の学校の玄関。ハンマー片手に睨みつけるめぐみに、義弘が怯える。
「あ? 早くしなさいよ」
玄関を開けようとするが、鍵がかかっていて開かない。
ゴリ崎に中から開けてもらわないと駄目だろう。
「ゴリ崎だわ」
廊下を走って、ゴリ崎がこちらに向かってくる。
その後ろを、何本もの指がものすごい勢いで追ってくる。
「二十本はいるじゃない」
「わあ、先生、私たちが帰ってからすぐに儀式をやったんですかね?それだと六時間前?」
驚くめぐみの言葉にあすかがにこやかに答える。
笑いごとではない。
めぐみ達が帰ったのは、六時頃。今が午前一時頃……。
「六時間なら、最大で六十四本……」
義弘が青ざめる。
「やばい。まじか」
竜彦が自分で電卓機能で確認して、怯えている。
「どうしよう、次分裂したら、百超えるんでしょ?」
唯が弱音をはく。
正確には、百二十八本。
そんなの、めぐみ達の手におえるんだろうか?
ゴリ崎が、必死になって鍵を開けようとしているが。焦ってうまく鍵が開けられない。ゴリ崎の背中を、ツンツンと指が当たっては落ちている。
爪が当たって痛いらしく、ゴリ崎がつつかれて身をよじりながら扉を開けようと苦戦している。
「こ、攻撃を覚え始めたのね」
「どんどん賢くなっている?」
「ていうか、ゴリ崎……リアルに後ろ指さされている……?」
義弘が、一瞬めぐみ達の頭によぎった、寒々しい発想を言語化してしまう。
「義弘、あんた、そういうところだからね!」
めぐみは、イラついていた。
「めぐみちゃん。恋愛は、人生にとって大事よ。お母さん、たいていの相手は、応援するわ。……でもね、でも、ゴリ……小西崎先生は、ちょっと応援できないわ。三十八歳独身体育教師。元気な良い先生よ。でも、生徒に手を出すのはちょっと、それに、夜中に学校に呼び出すだなんて……」
もぞもぞと、そんなことを言っていた。
「無いから。ゴリ崎と勝手にくっつけないでよ。害虫駆除を手伝ってほしいって頼まれただけ。他のメンバーに連絡して、来ることになっているから」
怒りに満ちためぐみの言葉を、母親はそう? と半信半疑で受け止めていた。
ムカつく。なんでゴリ崎と。
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義弘、あすか、唯、竜彦。次々と姿を現す。
皆、指の増殖力の怖さは知っている。何とかしなければと、面倒でも怖くても、逃げ出すという選択肢はなかったのだろう。
「怖っ」
真夜中の学校の玄関。ハンマー片手に睨みつけるめぐみに、義弘が怯える。
「あ? 早くしなさいよ」
玄関を開けようとするが、鍵がかかっていて開かない。
ゴリ崎に中から開けてもらわないと駄目だろう。
「ゴリ崎だわ」
廊下を走って、ゴリ崎がこちらに向かってくる。
その後ろを、何本もの指がものすごい勢いで追ってくる。
「二十本はいるじゃない」
「わあ、先生、私たちが帰ってからすぐに儀式をやったんですかね?それだと六時間前?」
驚くめぐみの言葉にあすかがにこやかに答える。
笑いごとではない。
めぐみ達が帰ったのは、六時頃。今が午前一時頃……。
「六時間なら、最大で六十四本……」
義弘が青ざめる。
「やばい。まじか」
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「どうしよう、次分裂したら、百超えるんでしょ?」
唯が弱音をはく。
正確には、百二十八本。
そんなの、めぐみ達の手におえるんだろうか?
ゴリ崎が、必死になって鍵を開けようとしているが。焦ってうまく鍵が開けられない。ゴリ崎の背中を、ツンツンと指が当たっては落ちている。
爪が当たって痛いらしく、ゴリ崎がつつかれて身をよじりながら扉を開けようと苦戦している。
「こ、攻撃を覚え始めたのね」
「どんどん賢くなっている?」
「ていうか、ゴリ崎……リアルに後ろ指さされている……?」
義弘が、一瞬めぐみ達の頭によぎった、寒々しい発想を言語化してしまう。
「義弘、あんた、そういうところだからね!」
めぐみは、イラついていた。
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