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一本の指
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これで後は、心おきなくあの指を破壊すれ良い。
五人で、ロッカーの後ろを探したり、段ボールをどけたり、まるであの黒い迷惑な虫を探すような要領で探し回る。
いない。
ひょっとして、もう結界の外に出てしまっていたのだろうか?
そんなはずはない。
焦る気持ちを押さえて、廊下を探す。付近の教室を調べる。
どうしよう。
もし、このまま見つからなかったら、この世界は、あの奇妙な指であふれかえってしまう。
ゾッとする。
「とにかく、今は一匹だから。今ぶっ叩かないと」
めぐみが傘立てを覗きながら叫ぶ。
「分かっているわよ。ああ、もう。〇ルサンとか〇キジェットとか効かないの?」
唯が、ロッカーの裏を懐中電灯で照らしながらイラつく。
「本当、それなですよ」
あすかが、洗面台の排水管の裏を見ながら唯の言葉に賛同する。
「バ〇サンもゴ〇ジェットも効くとは書いていないなて……」
竜彦が本を調べながら答える。
「「「分かっているわよ!」」」
女子三人から攻められて、竜彦は怯む。
じゃあ、言わなきゃいいのに。せっかく調べたのに……。
竜彦は、女子三人の勢いにたじろぐ。
「い、いた! うお!」
掃除用のバケツをどけた義弘が尻もちをつく。
ペラペラの指が廊下を走る。
「わ、いや」
あすかの足を指が這い上ってくる。
「キモイ。やだ!!」
慌ててあすかが、手で指を払い落す。
カサカサカサカサ……。
指は、移動することに慣れたのか、思ったよりも動きが速い。
壁を這いあがり、天井にたどり着いた指が、
……ポトリ
天井から落ちてきて唯の背に纏わりつく。
「いやああああ。キモイキモイキモイ!!」
指から逃れようと、唯が暴れるが、指は唯の背中にはりついている。
「この、クソ指!!!」
めぐみが指をむんずとつかんで、廊下に叩き落す。
そのまま、手に持っていたハンマーでめぐみは指を、グシャリと叩きつぶした。
「よ、よかった……」
あすかが廊下にへたり込む。
「じ、時間から考えて、これで終わり……だよな?」
義弘が、スマホで時間を確認する。
指が次に増えるまでには、間に合ったはず……。
竜彦が、本を何度も読んで、事態の終わりを確認する。
「これで帰れるのよね?」
唯の言葉に、
「うん。そのはず」
と、竜彦が答える。
もう、何も考えられない。
思った以上に気持ち悪かった指。
二度とこんな奇妙な儀式は行わない。
皆、廊下にへたり込む。
「あ、でもあれですね。せっかくこんな大変な思いをしたんですから、恋愛占いくらいしておけば良かったかもしれませんね」
にこやかなあすかの言葉に、四人とも、顔を見合わせる。
「あすか、ヤバイ……」
唯が、顔をひきつらせる。
「さ、さあ、か、帰るわよ」
強気なめぐみが気丈に立ち上がって、生徒会室に置き去りにしていた荷物を取りにヨロヨロと歩き始める。
五人は、気づかなかった。
ひたひたと、廊下を歩く足音が、近づいてきていることを……。
五人で、ロッカーの後ろを探したり、段ボールをどけたり、まるであの黒い迷惑な虫を探すような要領で探し回る。
いない。
ひょっとして、もう結界の外に出てしまっていたのだろうか?
そんなはずはない。
焦る気持ちを押さえて、廊下を探す。付近の教室を調べる。
どうしよう。
もし、このまま見つからなかったら、この世界は、あの奇妙な指であふれかえってしまう。
ゾッとする。
「とにかく、今は一匹だから。今ぶっ叩かないと」
めぐみが傘立てを覗きながら叫ぶ。
「分かっているわよ。ああ、もう。〇ルサンとか〇キジェットとか効かないの?」
唯が、ロッカーの裏を懐中電灯で照らしながらイラつく。
「本当、それなですよ」
あすかが、洗面台の排水管の裏を見ながら唯の言葉に賛同する。
「バ〇サンもゴ〇ジェットも効くとは書いていないなて……」
竜彦が本を調べながら答える。
「「「分かっているわよ!」」」
女子三人から攻められて、竜彦は怯む。
じゃあ、言わなきゃいいのに。せっかく調べたのに……。
竜彦は、女子三人の勢いにたじろぐ。
「い、いた! うお!」
掃除用のバケツをどけた義弘が尻もちをつく。
ペラペラの指が廊下を走る。
「わ、いや」
あすかの足を指が這い上ってくる。
「キモイ。やだ!!」
慌ててあすかが、手で指を払い落す。
カサカサカサカサ……。
指は、移動することに慣れたのか、思ったよりも動きが速い。
壁を這いあがり、天井にたどり着いた指が、
……ポトリ
天井から落ちてきて唯の背に纏わりつく。
「いやああああ。キモイキモイキモイ!!」
指から逃れようと、唯が暴れるが、指は唯の背中にはりついている。
「この、クソ指!!!」
めぐみが指をむんずとつかんで、廊下に叩き落す。
そのまま、手に持っていたハンマーでめぐみは指を、グシャリと叩きつぶした。
「よ、よかった……」
あすかが廊下にへたり込む。
「じ、時間から考えて、これで終わり……だよな?」
義弘が、スマホで時間を確認する。
指が次に増えるまでには、間に合ったはず……。
竜彦が、本を何度も読んで、事態の終わりを確認する。
「これで帰れるのよね?」
唯の言葉に、
「うん。そのはず」
と、竜彦が答える。
もう、何も考えられない。
思った以上に気持ち悪かった指。
二度とこんな奇妙な儀式は行わない。
皆、廊下にへたり込む。
「あ、でもあれですね。せっかくこんな大変な思いをしたんですから、恋愛占いくらいしておけば良かったかもしれませんね」
にこやかなあすかの言葉に、四人とも、顔を見合わせる。
「あすか、ヤバイ……」
唯が、顔をひきつらせる。
「さ、さあ、か、帰るわよ」
強気なめぐみが気丈に立ち上がって、生徒会室に置き去りにしていた荷物を取りにヨロヨロと歩き始める。
五人は、気づかなかった。
ひたひたと、廊下を歩く足音が、近づいてきていることを……。
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