死霊の指

ねこ沢ふたよ

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結界

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 今日は、泊りで勉強をする。そう、家にはそれぞれ電話した。
 生徒会長のめぐみが、急遽仲の良いメンバーで勉強合宿を開いてくれることになったと聞けば、日ごろから勉強面では評判の良いめぐみが教えてくれるのならと、どの親も快く許可してくれた。

「あとは、めぐみの親よね」
唯の言葉に、めぐみがため息をつく。

「厳しいの?」
竜彦が心配して聞けば、

「ずれているのよ。家の親。……まあ、いいわ、やってみる」
めぐみが電話をすれば、すぐに母親らしき女性の声が返ってくる。

「どうしたの? まだ帰らないの?」

「あ、あのね、お母さん。生徒会の仕事が今終わったところで……それで、皆で勉強を……」

「勉強? そんなの家でできるじゃない。皆来てもらったら? 楽しいじゃない。修学旅行みたいで。お母さんも参加したい……」

 どこの親が、娘の勉強会に参加したいのか。やっぱり、ウチの親はおかしい。

「それが、ええと……唯とあすかが、私の相談にのってくれるって……」
めぐみは、進路相談のつもりで話をしていいたのだが、

「え、恋バナ? 何それ。聞きたい。混ざりたい」
と、電話の向こうの母親がはしゃぎだす。

「めぐみちゃん、そういうのちっとも興味ないから、お母さん詰まんなくって。相手だれ? 義弘君は……ないか。まさか、竜彦君を巡って三角関係? ……それもめぐみじゃあ有りえないか。……あすかちゃん? え、ユリ? なんてことなの! それも楽しい! ということは……」

 勝手に色々想像して母親がペラペラと話し続ける。あすかが、たまらなくなって横でプッと吹き出す。

「は? どれもないから。ウザすぎ。恋バナじゃないから。とにかく、今日は泊りになるかもだから。じゃあね」

 めぐみはまだ話続ける母親を無視して、不機嫌な返事を返して電話を切る。

「娘でユリを想像する親がどこにいるのよ」
と、ブツブツとめぐみは文句を言い続ける。

 視線を感じてみれば、皆の視線がめぐみに集まっている。

「何?」

「竜彦はあげないよ?」
不安気に唯がめぐみに聞く。

「要らないから。ノシ、一万個付けて返すわ。誰もそんな目で見ていないわよ。友達どうしで恋愛して関係壊すなんて、私的に有りえないから」
唯の言葉に、めぐみが秒で返す。

「ともかく、今は、あのキモイ指のこと優先だ」
義彦が、例の本を広げる。

「見てくれ。ここ」
そう言って義彦が指したのは、結界の張り方。

「まず、これで学校の外に指を出さないように結界を張るんだ」

「なるほど。どこにいるかは分からないけれども、まだ学校の外には出ていないはずだものね。で?」

「儀式に使った米粒を、校舎の四隅に撒いて結界の呪文を唱えれば、それであの指は、外に出られなくなる」

 非科学も良いところのこの方法。しかし、そもそも指が出現したところで、物理法則なんて既に海の藻屑、宇宙の塵と化している。質量保存則ドコ行った。ニュートンもアインシュタインも、歴代の科学者が号泣する。
 義弘が自信満々で眼鏡をあげながら、語り出す。

「あの指の移動速度から考えて、まだこの校舎のこの階から出て行ったとは考えられない。つまり……。て、聞けよ!」
義弘の話を最後まで聞かずに、皆、米を持って三階の四隅に走り出す。

 呪文を詠唱するのは、竜彦の役。

 竜彦が、本を持って朗々を呪文を唱えれば、辺りは鈍い光に包まれて、結界は完成した。
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