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朝の密会
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翌朝、グラン王に会う前に大好きな森へマリーは向かった。
ここに来ると不思議と心が安らぐ。
泉に足を付け、座っていると急に草むらが不自然に揺れ始めた。
がさがさといっている。
徐々にこちらへ向かっている。
そう気づき逃げようと泉から足を上げ、裸足で森の中を走った。
マリーは怖くなった。
「待て、マリー」
「え!?」
後ろを振り向くとグラン王の姿があった。
いるはずのない人物に会いマリーは気が動転した。
「えぇ!?何故ここに!?」
「ここは2人の思い出の場所だからだ。森へ向かう姿が見えたので追ってきた」
(え?ここは兄も知らない私だけの秘密の場所よ・・・?)
そう思い小首を傾げた。
その様子を見たグラン王は残念そうな笑みを浮かべ笑った。
「やはり、覚えてはいないのか・・・」
「え?」
(何の事を言っているのかしら)
「いや、何でもない」
「姫が早朝から森に供を付けづに来るのは軽率じゃないのか?」
そう言われ少しカチンとした。
姫だろうと誰だろうと1人になりたくなることはある。
気が付くと思わず言い返していた。
「グラン王様だってお一人ではありませんか」
「はっ、確かにな」
鼻で笑われてしまった。
「グラン王様はどうして私に縁談を申し込んできたのですか?」
「グラン」
「?」
「グラン王様ではなくグランと呼べ」
突然の発言にマリーは驚いた。
一国の王が名前を呼び捨てにしろというのだ。
「それは出来ません。周りに示しがつきませんから」
「では二人きりの時はグランと呼んでくれ」
マリーは渋々承諾した。
「分かりました・・・ではグランどうしてですか?」
「俺はマリーに恩がある。よそのもの好きな王に娶られるのが面白くなくて縁談を申し込んだんだ」
マリーの容姿は特殊だ。
物好きな王たちは皆マリーを欲しがっていた。
そんな輩は父王のグレンが追い払ってくれていた。
だから18歳になっても縁談の話はこれまで一度もこなかったのだ。
では何故今回は承諾したのだろうか・・・謎は残るが決まったことはもう覆せない。
「恩って・・・私とグランは昨日が初対面のはずですけど?」
「いや?その前に一度会っている」
「グランはこの国で開かれた晩餐会や舞踏会に訪れたことは無かったはずですけど」
そう言うと少し悲しそうな顔をした。
「自分で思い出してくれ」
マリーは何が何だか分からなくなった。
必死で頭の引き出しを開けるけれども思い出せない。
「うーん・・・やはり思い出せません」
「そうか、だがな恩がある事は本当だ。その容姿も気に入っているのもな」
グランはマリーの手を引き草むらの上へ押し倒した。
「ひゃっ!!」
そしてそっと唇へキスをした。
「~っ」
軽く触れるだけのキスだったが兄以外にキスされるとは思ってなかった。
マリーはジタバタと暴れた。
「グラン、どうして・・・?」
「マリーに男として認識されたかった」
「認識しています!!離してください」
マリーはここでキス以上の事をされるのではと恐怖した。
そんなマリーの様子を見たグラン王は言った。
「ここでこれ以上の行為には及ばないから安心しろ」
「・・・」
マリーは安心した。
「ふっ、すぐに信用するのは悪い癖だな」
もう一度キスされてしまった。
今度は唇を押し開き舌が入って来た。
初めてのキスにマリーは翻弄された。
「んっ、ふっ・・・んん!」
息が上手く出来ず頭に上手く酸素がまわらない。
くらくらしてきたところでようやく唇が解放された。
「ど、どうして・・・」
「嫉妬だ。マリーから男のコロンの匂いがする」
「これは兄の香りです!!」
マリーは必死になり反論した。
「ああ、わかっているが匂いがうつるほど密着しているのかと思うと少し妬けた」
「・・・兄は少し変わっているんです」
「あの兄は血が繋がってなければ恋敵になっただろうな・・・」
マリーは否定できなかった。
兄はマリーの事を本気で愛している。
「マリー、俺と一緒に国へ来てくれるか?」
「今みたいなことをまたするんですか?」
マリーは真っ赤になりながらそう言うとグランは吹き出した。
「もちろんするさ、愛おしい者が傍にいて手を出さない理由があるか?」
「・・・っ」
グランは堂々と言ってのけた。
「婚前交渉は無しでお願いします。この条件を飲んでくださるのなら一緒に行きます」
「わかった。キスくらいなら良いだろう?」
「・・・それくらいならいいですけど・・・」
そう言うとマリーの体を起こし横抱きにした。
「これでマリーは俺のものだな」
「私は私のものです!!1人で歩けますので降ろしてください!!」
(こんなところ人に見られたくない)
「気の強い女は好きだ。ますます気に入った」
グランはそのままマリーを横抱きにしたまま城へ戻って行った。
ここに来ると不思議と心が安らぐ。
泉に足を付け、座っていると急に草むらが不自然に揺れ始めた。
がさがさといっている。
徐々にこちらへ向かっている。
そう気づき逃げようと泉から足を上げ、裸足で森の中を走った。
マリーは怖くなった。
「待て、マリー」
「え!?」
後ろを振り向くとグラン王の姿があった。
いるはずのない人物に会いマリーは気が動転した。
「えぇ!?何故ここに!?」
「ここは2人の思い出の場所だからだ。森へ向かう姿が見えたので追ってきた」
(え?ここは兄も知らない私だけの秘密の場所よ・・・?)
そう思い小首を傾げた。
その様子を見たグラン王は残念そうな笑みを浮かべ笑った。
「やはり、覚えてはいないのか・・・」
「え?」
(何の事を言っているのかしら)
「いや、何でもない」
「姫が早朝から森に供を付けづに来るのは軽率じゃないのか?」
そう言われ少しカチンとした。
姫だろうと誰だろうと1人になりたくなることはある。
気が付くと思わず言い返していた。
「グラン王様だってお一人ではありませんか」
「はっ、確かにな」
鼻で笑われてしまった。
「グラン王様はどうして私に縁談を申し込んできたのですか?」
「グラン」
「?」
「グラン王様ではなくグランと呼べ」
突然の発言にマリーは驚いた。
一国の王が名前を呼び捨てにしろというのだ。
「それは出来ません。周りに示しがつきませんから」
「では二人きりの時はグランと呼んでくれ」
マリーは渋々承諾した。
「分かりました・・・ではグランどうしてですか?」
「俺はマリーに恩がある。よそのもの好きな王に娶られるのが面白くなくて縁談を申し込んだんだ」
マリーの容姿は特殊だ。
物好きな王たちは皆マリーを欲しがっていた。
そんな輩は父王のグレンが追い払ってくれていた。
だから18歳になっても縁談の話はこれまで一度もこなかったのだ。
では何故今回は承諾したのだろうか・・・謎は残るが決まったことはもう覆せない。
「恩って・・・私とグランは昨日が初対面のはずですけど?」
「いや?その前に一度会っている」
「グランはこの国で開かれた晩餐会や舞踏会に訪れたことは無かったはずですけど」
そう言うと少し悲しそうな顔をした。
「自分で思い出してくれ」
マリーは何が何だか分からなくなった。
必死で頭の引き出しを開けるけれども思い出せない。
「うーん・・・やはり思い出せません」
「そうか、だがな恩がある事は本当だ。その容姿も気に入っているのもな」
グランはマリーの手を引き草むらの上へ押し倒した。
「ひゃっ!!」
そしてそっと唇へキスをした。
「~っ」
軽く触れるだけのキスだったが兄以外にキスされるとは思ってなかった。
マリーはジタバタと暴れた。
「グラン、どうして・・・?」
「マリーに男として認識されたかった」
「認識しています!!離してください」
マリーはここでキス以上の事をされるのではと恐怖した。
そんなマリーの様子を見たグラン王は言った。
「ここでこれ以上の行為には及ばないから安心しろ」
「・・・」
マリーは安心した。
「ふっ、すぐに信用するのは悪い癖だな」
もう一度キスされてしまった。
今度は唇を押し開き舌が入って来た。
初めてのキスにマリーは翻弄された。
「んっ、ふっ・・・んん!」
息が上手く出来ず頭に上手く酸素がまわらない。
くらくらしてきたところでようやく唇が解放された。
「ど、どうして・・・」
「嫉妬だ。マリーから男のコロンの匂いがする」
「これは兄の香りです!!」
マリーは必死になり反論した。
「ああ、わかっているが匂いがうつるほど密着しているのかと思うと少し妬けた」
「・・・兄は少し変わっているんです」
「あの兄は血が繋がってなければ恋敵になっただろうな・・・」
マリーは否定できなかった。
兄はマリーの事を本気で愛している。
「マリー、俺と一緒に国へ来てくれるか?」
「今みたいなことをまたするんですか?」
マリーは真っ赤になりながらそう言うとグランは吹き出した。
「もちろんするさ、愛おしい者が傍にいて手を出さない理由があるか?」
「・・・っ」
グランは堂々と言ってのけた。
「婚前交渉は無しでお願いします。この条件を飲んでくださるのなら一緒に行きます」
「わかった。キスくらいなら良いだろう?」
「・・・それくらいならいいですけど・・・」
そう言うとマリーの体を起こし横抱きにした。
「これでマリーは俺のものだな」
「私は私のものです!!1人で歩けますので降ろしてください!!」
(こんなところ人に見られたくない)
「気の強い女は好きだ。ますます気に入った」
グランはそのままマリーを横抱きにしたまま城へ戻って行った。
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