君の欲情 僕の純情

えりー

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僕は

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稀にこの世界には不思議な力を持って生まれてくる人もいる。
もし、自分に力がなければ僕は信じなかったかもしれない。
僕には他人の心の声が聞こえる能力がある。
その能力は突然開花した。
物心をついた頃辺りから他人の心の声が聞こえるようになっていた。
初めはコントロールできずに苦しんだし友人の本音を知ってしまう事で人間不信にも陥った。
しかし、僕は”人間”を嫌いになれなかった。
幸い周りに恵まれてよい友人たちが多かったおかげかもしれない。
自然と僕は普通の人の中に溶け込み能力がある事を隠した。
そうしていれば多少は嫌な言葉を聞かなくて済んだ。
ただ街には悪意を持った人たちがたくさんいてその声を聞いていると吐き気がして具合が悪くなる。
それを悟られないようにして、友人たちと街に遊びに出ることもあった。
付き合いとは友人関係で大事なものだからだ。
いつも笑っていれば自然と人は集まってくる。
学校という箱庭は自分にとって快適な場所だった。
だが・・・一つ困ったことがあった。
僕は今同性の井上由伸というやつから恋愛感情を抱かれていることだ。
ここは男子校。
小柄な僕はたまにそういう目で見られることもあったが彼ほど熱い想いを寄せてくる人は初めてだった。
彼の心の声はあまり聞きたくないものだった。

朝、下駄箱で鉢合わせてしまった。
「おはよう」
由伸から挨拶された。
「・・・おはよう」
やや間を置き返事を返した。
僕は彼の心を自然に呼んでしまった・・・。
”今日も可愛いな”
由伸は挨拶と同時にそんな事を考えていたのだ。
大輔は気持ち悪いとは思わないが自分のどこが可愛いのか分からない。
きっと由伸は特別な感性を持っているのだろう。
由伸は人気のある生徒だった。
いつも周りに人が集まって楽しそうに談笑しているのを見る。
しかし、大輔は彼がどういう人なのか分からなかった。
人の中心にいながら彼はそれほど楽しそうにしていないように思えた。
同じグループではないので詳しくは詮索しないことにした。
大輔は自分の席に着き始業の時間まで友人たちと話をすることにした。
昨日あったことやつまらないTVの話、ゲームの話。
大体いつもこうやって空いた時間を過ごしている。
もうすぐ修学旅行なので話題はそっちに集中する。
大輔は修学旅行が憂鬱で仕方なかった。
移動の際色々な雑音(人の声)を聴かなければいけない。
体が持つかわからなかった。
でも、親がせっかく「楽しんできなさい」とお金を出してくれる旅行だ。
行きたくないとは言えなかった。
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