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火種

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桃子は最近だいぶ高いところまで飛ぶことが出来るようになった。
桃子はそんな中、遠くから大勢の兵がこちらに向かってきているのを見た。
急いでルークへ知らせるために走った。
「ルーク、あっちの方角からたくさんの兵が押し寄せてきているわ!!」
「桃子、分かった。だが、そんなに高く飛ぶとスカートの中が見える」
「きゃぁ!!」
桃子は動揺し、また落下してしまった。
それをルークは軽々と受け止めた。
そっと床に降ろされた。
「桃子は部屋から出るなよ!?」
そしてルークは急ぎ足でマオールの所へ行った。
軍部の戸の前に着くとバンっと扉が開き中からマオールが飛び出してきた。
「・・・急に開けるな危ないな」
「そんな悠長なこと言っている場合ですか!?」
「他国が攻めてきたんですよ!?」
「分かっているからここへ来た」
2人は軍部室へと入り他の軍部の人達と話し合いを始めた。
ミネンは元々軍が国を支えているような国だ。
国軍の数はそこらの国よりよほど人数が多い。
その上毎日厳しい鍛錬を繰り返しているので、兵士は皆強い。
外の他国の軍は隣国のミネン国とは不仲な国のラルーン国だった。
ラルーン国とは昔から敵対しており、今回は向こうが先手を打って攻撃に来たようだ。
あの兵の数を見るとどうやら本気で戦争をするつもりらしい。
「マオール、どうする?俺はもちろん戦って勝利をおさめたい」
「それは俺も同じです。ですが相手の目的が分からない以上下手に動けません」
ルークは暫く考えた。
「では、こちらも軍の配置だけはしておくことにしよう」
そう言うとルークは身をひるがえし、城の一番高い塔に登った。
するとラルーン国の国王が先頭にいた。
やはり何か話もあるようだ。
ルークも鎧を身につけ、馬に乗り軍の先頭に立った。
皆を引き連れ、ラルーン国の兵の元へ急いで馬を走らせた。
ラルーン国王の前に着くとあちらから声をかけられた。
「これはこれはミネン王。お久しぶりです」
「ラルーン王。これは一体何の騒ぎですか?そんなに軍を率いて戦でもなさるおつもりですか?」
2人のにらみ合いは続く。
「ええ、ミネン国へ攻め込んできました」
何事も無いようにラルーン王は言った。
「何だと?ふざけたことをー・・・」
ルークがそう言いうとラルーン王は言葉を続けた。
「”電撃の魔女”は脅威ですのでそちらから何か戦いを挑まれる前に排除させてもらおうかと思いまして」
その言葉を聞きルークは頭に血が上ったが怒りを鎮め我慢した。
「ミネン国はラルーン国とは敵対しておりますが戦を仕掛けるつもりはありません」
「・・・それが本当ならいいのですがね。口では何とでも言えるでしょう?」
要は、ミネン国を信じられないという事だ。
「そうですか。どうやら話し合いをしても無駄のようですね」
ルークは、マオールに合図をした。
開戦の合図だ。
次の瞬間戦いが始まった。
皆必死で戦っている。
軍の数は圧倒的にミネン国の数の方が多い。
きっとこの戦は宣戦布告の為の戦だ。
その頃桃子は空を飛び、その様子を見ていた。
「・・・ルーク・・・」
桃子はルークの身を案じた。
絶対に部屋から出るなと言われていたが、今はそんな事できる状態ではない。
「・・・決めた。私も戦に参加する!」
「も、ももこさま?」
「ミュー!ズボンってある?さすがにこのひらひらした服であの中へは入っていけない」
ミューは必死になって桃子を止めようとした。
「桃子様おやめください。危険です!!」
「いいえ、今回の戦の原因はきっと私です。それなのに私だけが安全な場所にいる事なんて出来ない!いいから早く着替えを頂戴!!」
ミューは桃子の勢いに押され渋々着替えを差し出した。
すぐにその服に着替えると桃子は電撃を使い空を飛んで戦っている最中の戦の中へ入っていった。
すると今まで戦っていた兵士たちは戦うことを止め、桃子に釘付けになった。
しんっとその場は静まり返った。
「桃子!!何故来た!?」
やはりルークに怒られてしまった。
「桃子様は城へお戻りください!!」
マオールもそう言った。
しかし桃子は首を横に振った。
「お、お前が”電撃の魔女”か?」
少し桃子に怯えながらラルーン王はそう訊ねた。
「ええ。私がミネン王を守護する”電撃の魔女”と呼ばれている者です。私には戦う意思はありません。お引き取り願えませんか?」
桃子がそう言うとラルーン王は呆然としている兵士に声をかけた。
「矢であの”電撃の魔女”を射落とせ」
「桃子!!」
「ルーク心配しないで、大丈夫だから」
「・・・わかった、この場はお前に任せよう」
「ありがとう」
そう言い桃子は微笑んだ。
そして桃子に大量の矢が降りかかってきた。
桃子はその矢を全て消し炭にした。
そして人に当てないように馬に電撃を浴びせかけた。
すると軍は一気に崩れていった。
地に降り立ち、桃子は地面に倒れているラルーン王の元へ歩いて行った。
「私の力はご覧になられましたか?ラルーン王?私はこの国を守るためにしか力を使いません。そちらから何かしてこない限りミネン国から攻撃することはありません」
「そ、そんな言葉信じられない。これだけの力を持ちながら何もしてこないなんてあり得ないだろう!?」
桃子はため息交じりにこう言った。
「私は争い事が嫌いなんです。この力はミネン王の為だけにしか使わないと決めています」
「では彼が、戦を手伝って欲しいと言ったら手伝うのか?」
「いいえ。ミネン国の王ルークも戦が嫌いです。国を守る為なら仕方なく使いますが、好んで使おうとは思いません」
「・・・」
ラルーン王と桃子の睨み合いながらの話し合いが続く。
それを皆、じっと眺めている。
「このまま、ミネン国を滅ぼそうとするのなら私は、この力で皆さんを攻撃します」
「・・・では、本当にミネン国から戦いを挑んでくることはないという事だな?」
桃子はルークの方を見て確認をとった。
ルークは頷いていた。
「はい。私はただ平穏に暮らしていたいだけなのです」
ラルーン王は立ち上がり服についた砂を払った。
「わかった。そこまで言うのなら信じよう」
ラルーン国の兵士たちは電撃で使えなくなった馬はそのままにして去って行った。
数日後馬たちは回復し、ラルーン国へ送り届けられた。
桃子は言うまでもなくルークによりきついお仕置きを受ける羽目となった。
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