狗飼君と私

えりー

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山神 功

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子どもの泣き声が聞こえる。
何だこんな夜中に。
そう思い山の中腹までやって来た。
暗闇の中薄汚れた子犬を抱いて人間の子供が泣いている。
「おい、お前。どうしたんだ?」
「おかあさんがこの子捨てて来なさいって・・・でも、わたし出来なくて」
「はぁー・・・、なるほどな。事情は分かった」
「・・・ひっく、ひっく」
「・・・その子犬俺が引き受けてやるからお前はもう家へ帰れ。そうすれば捨てたことにはならないだろう?お前が成長して飼えるようになるまで俺が育てておいてやるよ」
「でも・・・」
「大丈夫だ。必ずお前たちはもう一度出会えるから今は親の元へ帰れ」
「ありがとう」
そうお礼を言うと子犬を名残惜しそうに撫で走り去っていった。
これがこの3人の出会いだった。
最初に狗飼に執着したのは実は有希の方だったのだ。

あの日、まさか事故であいつが命を落とすなんて思いもしなかった。
でも、あいつなら自分を犠牲にして彼女を守るだろう。
賭けの勝敗はもう決まっている彼女がすべて思い出すのも神である彼には分かっていたことだった。
だがあの二人が何も言ってこないとなると少し面倒なことになる。
霊体を長く地上へとどめておくことは難しい。
早いうちに手を打たなくてはいけない。
もう有希が思い出していることも功は知っていた。
「今が一番大事か・・・だが、このままではあいつはー・・・」
狗飼は頑なに否定するだろうから、話は有希としよう。
そう思い、功は白衣を纏い学校へ向かった。

有希を呼び出そうかと思っていたら、彼女の方からやって来た。
「狗飼を10年も育ててくださってありがとうございました」
そう言い、深々と功に頭を下げた。少し声が震えている。
「私、すべて思い出しました。これで狗飼は転生できるんですか!?」
なんて勇気のある娘だろう。それに比べてなんてヘタレな狗飼だろう。
功はそう思った。
「それを言いに来たということは狗飼とまた離れ離れになる覚悟があるということか?」
「はい」
迷いのない返事だった。
「それが狗飼・・・君の為になるのなら仕方ないと思います」
(この娘、自分の欲よりもあいつのことを考えての行動か。あいつにはもったいないなぁ)
「狗飼はお前が言いに来たことは知っているのか?」
「いいえ。私の判断で勝手に来ました」
「そうか」
功は少し考えた・・・。
「俺の寿命をあいつに貸そう。そうすればー・・・」
功が言いかけた瞬間保健室の戸がバンっと開いた。
そこには少し怒っている狗飼の姿があった。
「有希。朝、話していた話と違うようだけど?」
怒っている狗飼にそう問われ有希は困惑した。
「でも、今のままじゃあやふやな存在で・・・いつ消滅してしまうかわからないじゃない!!」
有希も怒っている狗飼につられて大きな声を出してしまった。
「こらこら、二人とも落ち着いて・・・」
「だって・・・」
「でも!」
「お前ら人の話を聞いてくれよ」
何だかこの二人の間に入っていることが馬鹿らしくなってきた。
功は自分が思いついた最善の方法を早く二人に伝えてあげたかったがなかなか聞き入れてもらえそうになかった・・・。
とりあえず痴話げんかが治まるのを待つことにした。








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