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はぐれ魔族の最後

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ジオンは怯えているはぐれ魔族に向かって言った。
「お前の名は?」
夕日が差し込み部屋も赤く染まる。
「僕はどうせ消されるんだろう?」
「ああ、秘密を知られてしまったからな・・・」
「誰にも言わないといったら見逃してくれるのか?」
ジオンは頭を横に振った。
「魔王様、僕一人消した所で何も変わらないよ」
ジオンは眉を顰めた。
「・・・ああそうだろうな。お前1人くらい殺したところでどうにもならないだろうな」
「僕の仲間はたくさんいる」
男は立ち上がりながら言った。
ジオンは冷ややかな目で男を見下ろしている。
「俺にも味方がいる」
そう断言した。
「ジン!観ているんだろう?」
呼びかけるとジンが姿を現した。
「もちろんいつでも見守っているよ」
「気色悪い言い方をするな・・・」
「ひっ、ジン・・・様」
「さてと・・・随分面白い話をしていたね」
ジンは拷問の悪魔という名で魔界でも有名だった。
ジオンはジンに言った。
「俺はこいつから情報が欲しい」
「こいつを拷問すればいいのかい?」
「俺がやると殺してしまうからな」
はぐれ魔族の男は後ずさった。
「拷問かぁ、久々で手元が狂いそうだよ・・・すぐに殺してしまったらごめんね」
全く悪びれていない軽い口調でとんでもないことを平気で言いだした。
男は逃げようとしているが保健室から外に出られない。
「はははは、逃がすわけないじゃないか。結界を張らせてもらったよ」
「くそっ!!」
男は短く吐き捨てた。
「俺たちから逃れられるはずないじゃないか」
「それじゃあ、始めようか。拷問」
ジンは楽しげだった。
男の悲鳴だけが部屋中に響き渡った。
ジオンはジンのこういう面を気に入っている。
拷問が始まり暫くすると男が音を上げた。
「・・・言・・・う。言うからもうひと思いに殺してくれ」
「・・・つまらないなぁ、もっと君と遊びたかったのに」
笑顔のままジンが男に語りかけた。
男は既に血まみれで息も絶え絶えになっている。
それでも殺さない様に手加減して拷問をしていたのだ。
ジオンとジン、2人は顔を見合わせ微笑んだ。
ジオンが男の髪を掴み脅した。
「俺とジン、どちらに殺されたい?」
「・・・魔王様に・・・」
男は小さい声で呟くと色々な情報を話し出した。
情報を聞くと用無しになった男の首を魔術で作った剣で切り落とした。
返り血でジオンの服が真っ赤に染まった。
(ああ、こんな姿見られたらまゆに嫌われてしまいそうだな)
「ジオン、魔界のはぐれ魔族の件は任せておいていいよ」
「魔界の事はもう少し頼む」
「俺は人間界に来ている魔族たちの討伐にあたる」
ジンはひらひらと手を振りながら笑いながら魔界に戻っていった。


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