願いを叶えないと帰れない！？

まゆと本屋の店主

まゆは小学１年生になったばかりの幼い女の子だ。
どこにでもいる普通の幼女。
人と違う所があるとすれば本人には自覚は無いが強い魔力を秘めているという事だ。
いつも１人きりで過ごしていた。
友人がいないことはさほど気にならなかった。
気になるとすれば両親が自分に無関心だという事だ。
家族でどこかへ出かけることもなく家ではなるべく部屋から出なかった。
「・・・つまらない・・・」
これがまゆの口癖だった。
ある日学校帰りに古本屋へ何も考えずに入った。
少し埃っぽい室内にまゆはせき込んだ。
「悪いねぇ、あんまり掃除が行き届いてなくて」
「・・・あ、いえ。大丈夫です」
顔を上げ声のする方を見てみると美形の男性が立っていた。
「しかし、人間がここに入ってくるなんて珍しい」
男は目を見開きしげしげとまゆを見つめた。
「？」
「ああ・・・こちらの話ですのでお気になさらず」
「・・・はぁ」
店主らしき男はまゆの顔をじっと見た。
「まだお若いのに何故そんなつまらなさそうにしているんですか？」
（他の人からもそう見えるのか・・・）
「つまらないからです」
まゆは男をまっすぐ見つめて言った。
「おやおや・・・それはもったいない」
「もったいない？」
男は天を仰ぎながら言った。
「この世界にも面白いことが溢れています。私と貴方が今日出会ったように」
「・・・」
まゆは彼との出会いを面白いとは感じていなかった。
「ここに来れたという事は何かお求めなのでしょう？」
「え？特には・・・なんとなく入っただけです」
「そうなのですか」
男は残念そだった。
「では、私から何か本をプレゼントしましょう。暫く待っていてください」
まゆを残し男は店の奥へ消えていった。
本当になんとなく入っただけだった。
「まさか、こんな事になるなんて」
まゆは溜息をついた。
宣言した通り男は暫くすると戻ってきた。
手には古びた一冊の本を持っていた。
「この本を貴方にプレゼントします」
「え、でも・・・お金は・・・」
「いいえ、私も暇を持て余していまして。貴方がこの本を貰ってくれれば私の暇もつぶれます」
「？」
まゆには何のことかさっぱり理解できなかった。
「私の名はジンです。いつもここにいるので今度は２人で遊びに来てください」
愉快そうに男は言いながらまゆのランドセルをトンと軽く押した。
するといつの間に古本屋から出ていた。
（・・・何だったんだろう・・・）
いつの間にか古びた本が握られていた。
まゆはせっかくもらった本だから大事にしようと思った。
でもあの店主の言葉にひっかかりが残った。

今度は２人で・・・

一体どういうことなのだろう。
まゆは考えても答えが出ないと悟ると考えることをやめた。
また溜息をつき家路についた。