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”お披露目の儀”前日

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「やっぱりこちらの色の方が映えますね。こちらの衣装にしましょう」
「肌が綺麗なので化粧は薄めにして・・・」
悠里は久しぶりの”お披露目の儀式”なので張り切っていた。
フォンは所在なさげにただ立ち尽していた。
悠里はまるで自分の事のように喜んでくれている。
そんな悠里を見ていると何故あんなに怯えていたのかわからなくなった。
フォンは悠里に対して申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「あの、悠里さん」
「はい?」
「今まですみませんでした!!」
突然謝られ悠里は驚いた。
「最初の方なんだか悠里さんが怖くて、逃げ回ってご迷惑おかけしました!!」
「まぁ、仕方ありませんよ。私、気にしてませんよ」
(仕方ない?仕方ないってどういうこと?)
「今も私の事怖いですか?」
「いいえ、今は大丈夫です」
明日はいよいよ”お披露目の儀”だ。
(人前に出るのは怖いけどみんなの努力を無駄にしたくない!頑張らないと!!)
フォンはそう思った。
それよりフォンは気になることがあった。
「悠里さん、恋ってしたことありますか?」
「!?」
「どうしたんですか急にそんなこと聞いて・・・」
フォンは正直に話した。
「私、優也様に恋をしているようなんです。一緒にいると胸が高鳴ったり苦しくなったり・・・色々な感情がごちゃ混ぜになったり・・・これは恋なのでしょうか?」
「良い事じゃありませんか」
「でも、私なんかに好かれても・・・優也様お困りになるんじゃないかなと思って」
「私なんかなんて言葉使ってはいけませんよ!フォン様」
「でも私は獣人だし・・・」
そう落ち込むフォンの肩に手を置き悠里は励ました。
「フォン様は、優也様に選ばれた花嫁です。もっと自信を持ってください!!」
「・・・はい」
フォンはふわりと笑い返事をした。
(まぁ、なんて可愛らしい笑顔・・・!!)
悠里は可愛いものが大好きだった。
思わず身もだえしそうになった。
フォンはもう悠里にも懐いていた。
悠里はフォンが笑えるようになって良かったっと思った。
初めて会ったときはまるで人形のようだった。
今ではちゃんと感情を表に出すことが出来るようになっていた。
「私、フォン様の笑顔とても好きですわ」
「え?」
「ふふふふ、何でもありません」
「さぁ、明日の準備の途中でしたね」
「早く終わらせないと優也王がお見えになられますよ」
「そうですね」
二人は明日の準備を急いだ。

ようやく準備が終わった後、優也が姿を現した。
「明日の準備は終わったか?」
「はい。今ようやく終わったところです」
「悠里、ご苦労だったな」
「いいえ、私たちの可愛いフォン様の為ですもの」
「か、可愛いだなんて・・・」
フォンは悠里に褒められ、顔を赤くした。
「あ、優也様ちょっとこちらにいらしてください」
「何だ、逢瀬の邪魔をする気か?」
「違いますよ、お話があります」
そう言うと二人は部屋から出て行った。
一人ぽつんと部屋に残されたフォンはベッドの上に横になった。
「はぁ~。疲れた」
うとうとしていると戻ってきた優也に起こされた。
「フォン、起きろ。お前に聞きたいことがある」
「・・・え?何ですか?」
「お前が俺のことをどう思っているのか聞かせて欲しい・・・」
改まって聞かれフォンは戸惑った。
「えっと、あの・・・恋をしてしまったかもしれません」
「それは、つまり俺の事が好きだという事で良いのか?」
明日は正式に二人は夫婦になる日だ。お互いの気持ちを伝え合ておきたいと優也は思った。
「今まで誰かを好きになったことがないのでよくわかりませんが、これが好きっと言う感情だと思います」
「俺は、フォンを愛してる」
「私は、優也様を好きになってもいいんでしょうか?」
「ああ、愛してほしい」
「私は愛を知りません。産まれた時から奴隷として育ったので。ですから私に愛を教えてください」
「わかった。ゆっくり少しずつお前の感情を育んでいこう」
そう言いお互い手を取り合い微笑みあった。
フォンはそれだけで十分幸せだった。
そして二人はいつものようにベッドに倒れこみ、抱き合った。
「今日は何もしないんですか?」
「明日は早いからな。なんだ物足りないのか?」
「いいえ、優也様が一緒にいてくださればそれだけで良いです」
フォンはいつものように優也の腕の中で眠った。
優也は考えていた。
(フォンはもしかしてもう俺のことを愛しているんじゃないのだろうか)
愛を知らないという言葉が優也の胸に強く突き刺さった。
フォンの生い立ちはきっと愛のないものだったのだ。
それに比べて自分は皆に愛されて育った。
皆からもらった愛情をフォンに分けていきたいと心から思った。


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