義姉と恋がしたいがしてはいけない

異性としての認識

博文は朝早く目が覚めたので、いつもより早く一階に降りた。
すると杏がもう学校へ行こうとしていた。
「杏？もう行くのか？一緒に行くんじゃなかったのか？」
「み、道も覚えたしもう１人でも大丈夫」
杏の様子がどうもおかしい。
そっと杏の肩に触れてみるとびくっと反応した。
「ごめん、昨日俺があんなこと言ったからか？」
「・・・」
杏は黙って頷いた。
見事に”弟”から男として認識してもらえるようになっていた。
「俺は杏の嫌がることはしない。外には危険な人物もいる」
「・・・うん」
「すぐ用意するから一緒に学校へ行こう」
「・・・わかったわ。待ってる」
そう言い履きかけていた靴を脱ぎ、杏はリビングへ戻ってきた。
博文は食パンを素早く食べ、牛乳で流し込んだ。
「大丈夫？そんなに急いで食べなくても待っているわ」
「さっき杏は俺を置いていこうとしただろう？信用できないな」
「だって昨日・・・あんなこと言うんだもん」
杏は頬を染めながら言った。
「１人だけ告白させちゃ狡いだろう？俺だってずっと告白したかったんだ」
「でも私、男の人怖いよ・・・弟でいてくれたら良かったのに」
（そうすればずっと家庭内での平和が続いたのに・・・）
「だから、杏の嫌がることはしないと言っているだろう？」
「・・・」
「杏に異性として好きになってもらえるように頑張るよ」
博文はにっこり笑ってみせた。
「杏は今まで通りにしていて？避けられるのは辛い」
「ごめんなさい」
杏は素直に謝ってきた。
「あんな話聞いといて・・・気持ちは変わらなかったの？」
「ああ。俺は杏の事をもっと知りたい」
そんなこと言われたのは初めての杏は狼狽えた。
「私の事って・・・」
そういう会話をしていると両親が起きてきた。
「あなた達もう行くの？」
「はい」
「充分気を付けて行ってね？宜しくね博文君」
心配そうにしている直美さんに明るく返事を返した。
すると少し安心したようだった。
「ほらな、あの様子じゃ１人では学校へは行かせてもらえないぞ」
「そうよね。お父さんのこともあるし、いくら警察の巡回が増えたからって安全だとは限らないわよね」
忘れてはいけないのはあのクソ親父の存在だ。
実の娘と関係を持ちたいなんて正気とは思えない。
考えただけで男の博文ですらぞっとする。
何気ない会話をしながら学校に無事にたどり着いた。
正直胸を撫でおろした。
またあのクソ親父と会って殴られたらたまらない。
きっと取っ組み合いの戦いになるだろう。
「杏、帰りも一緒に帰っていいか？」
「うん・・・」
「心配なんだ。そうさせてくれ」
杏の胸が高鳴った。
ドキドキっと音を立て動いているのを感じた。
博文を”弟”として見なくなってから杏の中でも変化が生まれた。
ー”弟”はもうこの世にはいないー
そして代わりになる人間もいないのだと痛感した。
だが、やはり男は怖い。
博文も男なのだと思うと今まで通りの関係には戻れなかった。
つい意識してしまう。
でも、博文には好意を持っていた。
だから他の人達よりは怖くなかったー・・・。