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杏の弟
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杏には血のつながった弟が1人いた。
名は英明という。
杏のせいで亡くなってしまったと過言ではない。
杏は英明の事を思い出しながら素早く着替えを済ませ、博文が来るのを待った。
「博文君・・・私の事軽蔑するかな」
一生人に話すことは無いだろうと思っていたが博文になら話しても良いと思えた。
博文はむやみやたらに人に言いふらすような人間でないことはここ数日一緒に過ごして分かった。
トントンっとドアをノックする音が聞こえた。
「どうぞ」
「お邪魔します・・・」
そう言いながら遠慮がちに部屋に博文が入ってきた。
「ふふふふ、自分の家なのに変なの」
「いや、何か改めて見ると自分の家じゃないみたいだったから」
(こうなんて言うか女の子の部屋!って感じだ)
「それで何が聞きたいんだけ?」
「弟にこだわっている理由。何故、俺だけ特別なんだ?」
杏はいきなり核心をつかれ返答に詰まる。
「わ、私には血のつながった本当の弟がいたの」
「それは直美さんに聞いた。英明君だっけ?」
英明の名を聞くだけで胸が苦しくなる。
「そう。小さい頃海で溺れて亡くなってしまったんだけど」
博文はそれだけが理由じゃない気がした。
何故か彼女は何かを隠しているような気がしてならなかった。
「それだけ?」
やや間があり杏は口を開いた。
「・・・英明を殺したのは私なの」
突然の言葉に頭が付いていかない。
「え?でも海水浴の事故でって・・・」
「表向きはそうなっているけどー・・・本当は違うの!」
思わず杏は大きな声を上げてしまった。
博文は驚いて杏を見ている。
「あの子を溺れさせたのは私なの」
杏は泣き崩れた。
「溺れさせた?一体どうやって?」
博文は冷静だった。
「浮き輪がないと泳げないあの子の浮き輪を遠くに投げて取って来させて遊んでたの」
「何でそんな事を・・・」
「いつも両親に可愛がられるのは英明だった。それが羨ましくて意地悪したの」
「・・・」
「私の事軽蔑する?」
博文は頭を左右に振った。
「子供のいたずらだろう?それくらいする事あるさ」
「え・・・?」
「それにその日は波がいつもより高かったって直美さん言っていたぞ」
そう言いながら博文は杏の頭を撫でた。
杏は顔を上げ、涙を流しながら博文を見つめた。
「俺も同じ立場だったら同じことしたかもしれないしな」
「・・・でも、私があんなことしなければあの子は死なずに済んだかもしれない」
ずっと1人で抱えてきたことを吐露し、肯定されるとは思わなかった杏は驚いた。
てっきりもう博文との関係が終わってしまうと思っていた。
それなのに・・・。
「杏のやったことは悪い事だと思うけどまだ子供だったんだ」
「・・・」
「充分苦しんだんだ。もう自分を許してやれよ」
そう言うと杏が博文に抱きついてきた。
「・・・ありがとう・・・」
(そうか、杏はその事があったから家族との絆を何より大事にしていたのか)
もう二度と無くさないようにー・・・。
「杏、俺も一つ告白していいか?」
まだ早いとは思ったが、もう限界だった。
「何?」
「俺はー・・・異性として杏を意識している」
「え?」
杏は混乱している。
それもそのはずだ。
今まで可愛い弟と思っていたのにいきなり告白されれば戸惑う。
「じゃあ、俺はもう部屋に戻る。辛い話をしてくれてありがとう」
「あの、あの話は・・・」
「分かっている。誰にも言わない」
そう言いドアをゆっくり閉めた。
結局想いを告げてしまった。
(明日から避けられるのかな)
でも悶々としているよりよほどいい。
想いを告げてすっきりした博文は満足だった。
それにもう彼女は”弟”には固執しないだろう。
俺の事を意識してくれればそれでいい。
名は英明という。
杏のせいで亡くなってしまったと過言ではない。
杏は英明の事を思い出しながら素早く着替えを済ませ、博文が来るのを待った。
「博文君・・・私の事軽蔑するかな」
一生人に話すことは無いだろうと思っていたが博文になら話しても良いと思えた。
博文はむやみやたらに人に言いふらすような人間でないことはここ数日一緒に過ごして分かった。
トントンっとドアをノックする音が聞こえた。
「どうぞ」
「お邪魔します・・・」
そう言いながら遠慮がちに部屋に博文が入ってきた。
「ふふふふ、自分の家なのに変なの」
「いや、何か改めて見ると自分の家じゃないみたいだったから」
(こうなんて言うか女の子の部屋!って感じだ)
「それで何が聞きたいんだけ?」
「弟にこだわっている理由。何故、俺だけ特別なんだ?」
杏はいきなり核心をつかれ返答に詰まる。
「わ、私には血のつながった本当の弟がいたの」
「それは直美さんに聞いた。英明君だっけ?」
英明の名を聞くだけで胸が苦しくなる。
「そう。小さい頃海で溺れて亡くなってしまったんだけど」
博文はそれだけが理由じゃない気がした。
何故か彼女は何かを隠しているような気がしてならなかった。
「それだけ?」
やや間があり杏は口を開いた。
「・・・英明を殺したのは私なの」
突然の言葉に頭が付いていかない。
「え?でも海水浴の事故でって・・・」
「表向きはそうなっているけどー・・・本当は違うの!」
思わず杏は大きな声を上げてしまった。
博文は驚いて杏を見ている。
「あの子を溺れさせたのは私なの」
杏は泣き崩れた。
「溺れさせた?一体どうやって?」
博文は冷静だった。
「浮き輪がないと泳げないあの子の浮き輪を遠くに投げて取って来させて遊んでたの」
「何でそんな事を・・・」
「いつも両親に可愛がられるのは英明だった。それが羨ましくて意地悪したの」
「・・・」
「私の事軽蔑する?」
博文は頭を左右に振った。
「子供のいたずらだろう?それくらいする事あるさ」
「え・・・?」
「それにその日は波がいつもより高かったって直美さん言っていたぞ」
そう言いながら博文は杏の頭を撫でた。
杏は顔を上げ、涙を流しながら博文を見つめた。
「俺も同じ立場だったら同じことしたかもしれないしな」
「・・・でも、私があんなことしなければあの子は死なずに済んだかもしれない」
ずっと1人で抱えてきたことを吐露し、肯定されるとは思わなかった杏は驚いた。
てっきりもう博文との関係が終わってしまうと思っていた。
それなのに・・・。
「杏のやったことは悪い事だと思うけどまだ子供だったんだ」
「・・・」
「充分苦しんだんだ。もう自分を許してやれよ」
そう言うと杏が博文に抱きついてきた。
「・・・ありがとう・・・」
(そうか、杏はその事があったから家族との絆を何より大事にしていたのか)
もう二度と無くさないようにー・・・。
「杏、俺も一つ告白していいか?」
まだ早いとは思ったが、もう限界だった。
「何?」
「俺はー・・・異性として杏を意識している」
「え?」
杏は混乱している。
それもそのはずだ。
今まで可愛い弟と思っていたのにいきなり告白されれば戸惑う。
「じゃあ、俺はもう部屋に戻る。辛い話をしてくれてありがとう」
「あの、あの話は・・・」
「分かっている。誰にも言わない」
そう言いドアをゆっくり閉めた。
結局想いを告げてしまった。
(明日から避けられるのかな)
でも悶々としているよりよほどいい。
想いを告げてすっきりした博文は満足だった。
それにもう彼女は”弟”には固執しないだろう。
俺の事を意識してくれればそれでいい。
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