義姉と恋がしたいがしてはいけない

えりー

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弟という立場

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俺は杏から”弟”としか見られていないから触れることが出来る。
本当は”異性”として意識していると知れたら今まで通りにはいかないだろう。
あの男から守る間は”弟”という立場を利用しようと思った。
そして解決してから想いを伝えたいと思っている。
きっと受け入れてはくれないだろうがー・・・。
それでも悶々とした日々を過ごすよりはいい。

「おはよう、杏」
「博文君、おはよう」
昨日の出来事は両親には言わなかった。
今、幸せなこの家に不穏な話を持ち出したくなかった。
杏と2人で話し合って決めたのだった。
「しかし、博文が喧嘩か・・・」
「傷は痛む?」
両親には学校で喧嘩したことにしてある。
どんなに隠そうとしても顔面を殴られれば痣の一つは出来る。
だから聞かれる前に学校で喧嘩したと伝えたのだ。
「いえ、もう痛みません」
「本当?」
杏も心配そうにしている。
「もう喧嘩なんてしたらダメよ?」
直美さんが心配してくれている。
まだ母さんと呼ぶのが恥ずかしいので俺は直美さんと呼ばせてもらっている。
「大丈夫だよ。直美さん」
「・・・まだ”お母さん”って呼ぶのに抵抗ある?」
ふぅっと溜息をつき直美さんが訊ねてきた。
「・・・すみません・・・何だか恥ずかしくて」
「すみません。博文はこういう奴なんです。気にしないでください」
父さんが助け船を出してくれた。
「博文君、杏の事・・・宜しくね?」
「!?」
「何かあったらすぐに連絡して頂戴」
直美は杏の身に危険が迫ることを恐れていた。
だから博文と同じ高校に転校させたのかもしれない。
学校でも危険はある。
杏は不思議と異性を惹きつける魅力を持っている。
実の父親さえ狂わせるほどのもの。
「はい!任せてください」
「行こう博文君!2日連続遅刻はまずいでしょう?」
「そうだな。じゃあ、行ってきます」
直美は2人を玄関まで見送り家に入って行った。
そして1人呟いた。
「あの怪我・・・もしかしてあの人がやったんじゃないのかしら・・・」
十分あり得るので一応警察に事情を話に行くことにした。
元夫からDVを受けていたので警察に助けを求めることも慣れていた。
あの2人に危害が及ぶ前に見回りの強化をしてもらった。
直美の心配は的中する。
その事はまだ誰も知らない。

「お母さんただいま」
「直美さんただいま」
2人の無事を確認すると直美は抱きしめたくなった。
「今日は何か変わった事なかった?」
「いえ、何もなかったですが?」
「そう、それなら良いわ」
「「?」」」
杏と博文は2人顔を見合わせた。
そして2階に上がり小声で話し始めた。
「お母さん、気が付いているのね」
「ああ、そうみたいだな」
学校帰りやたら警官の姿が目に入った。
きっと杏の母親が通報したのだろう。
「杏、部屋に入ってもいいか?」
「うん?どうかした?」
「・・・どうしてー・・・弟の存在にこだわっているんだ?」
その場の空気が凍てつく。
「そろそろ話してくれないか?」
「・・・わかったわ。でも誰にも言わないと約束できる?」
「ああ、約束する」
「じゃあ、着替えたら部屋に来て。昔話をしましょう」
そう言いパタンっと杏の部屋のドアが閉まった。
まるで博文を拒絶するように。
博文はずっと杏が”弟”に固執している感じがして気になっていた。
その理由をようやく杏は話してくれるという。
杏にとって”弟”は特別なものらしかった。
まだこの時の博文には想像もできない話が待っていた。
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