義姉と恋がしたいがしてはいけない

えりー

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男嫌いの理由

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博文を殴った後、杏の父親は去って行った。
「大丈夫!?博文君!」
「あー・・・少し口の中切れたけど大丈夫だよ」
(今のが杏の父親か・・・そりゃ、離婚もされるだろう)
「ごめんね。私のせいで」
「いや本当に大丈夫だから」
実際全然大丈夫ではない。
鼻血は止まらないし、殴られた場所が熱い。
そして何より痛い。
(でも、杏に心配かけたくない)
「博文君これで鼻押さえて横になって」
そう言うと杏は博文の頭を自分の膝の上に置いた。
(膝枕!!怪我してよかったなぁ・・・)
いやいや、今はそういうことを考えている場合じゃない。
杏は心配そうに博文を見下ろしている。
未だに博文の髪を撫でながら謝っている。
「鼻血なんてすぐ止まるよ」
「でも・・・」
「そんなことより誑かしたのなんだのって何の話?」
髪を撫でていた手が止まる。
そしてかすかに震えだした。
(しまった。聞いちゃまずかったか・・・?)
「私が成長していくうちに父が私の事を”女”としてみるようになったの」
「は?実の娘だぜ?」
「あの人の思考は分からないけど初めは体にべたべた触れてくるくらいだったの」
「・・・」
「でも私が高校生になってすぐ、襲われたの」
博文はその話を聞いてガバっと飛び起きた。
「襲われたってまさか・・・」
「うん、SEXしようとしてきたの」
俯きながら制服のスカートの裾を握り締め告白された。
怒りで衝撃が走った。
「それで男嫌いになったのか・・・」
「父はおかしいの。抵抗しているのに私が誑かしたっていうの。母が助けてくれたから未遂に終わったんだけど。それから男の人が怖いの」
(なるほど・・・原因はあの父親か)
「それなら何で女子高に行かなかったんだ?」
「社会に出たら嫌でも男の人と関わるでしょう?その為の訓練のつもり」
その前向きな杏の発言に心を打たれた。
確かに社会に出たら色々な人たちと関わって行かなくてはいけない。
男女問わず・・・。
そんな杏に共感できた。
「そっか・・・杏は凄いな。俺なら逃げ出すよ」
そう言いながら震える杏を抱きしめた。
杏からふわりといい香りがした。
「まだ震えてる」
「うん・・・怖かった・・・」
「これからも毎日俺が送り迎えしてやる」
(鬱陶しがられるかな?)
杏は首を横に振った。
「大丈夫だよ、依存してちゃいけないよ」
「俺にもっと頼れよ!強がるな」
つい声を荒げてしまった。
恐る恐る杏を見てみると、驚いた表情をしていた。
「どうして・・・そこまでしてくれるの?怪我までして」
「俺はー・・・」
(杏の事が好きだから)
「?」
「俺は杏の弟だろう?姉を守りたくて何が悪い」
「ありがとう。じゃあ、お願いしてもいい?」
杏は真顔でそう言った。
「ああ、守ってやる!あのクソ親父から」
思い出すだけで胸糞悪い。
(あの目つきかなりヤバかった)
直感だがあいつはまた来る。
(杏を狙って)
「杏には何の非も無い」
「・・・ありがとう」
杏は泣き出してしまった。
慰める術を知らない博文は狼狽えた。
泣き止むまで頭を撫でたり肩を擦ったりしてやった。
実の父親から”女”として見られていたなんて正直ショックだっただろう。
ようやく泣き止んだころには日が暮れかけていた。
公園の水道で顔を洗い杏は博文に言った。
「おうちに帰ろう」
杏は儚げに笑みを浮かべていた。
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