義姉と恋がしたいがしてはいけない

えりー

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2人きりの昼食

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博文は杏と階段を登り屋上のドアの前に来た。
「ここなら落ち着いて食べられるだろう」
そう言い屋上の鍵を開けた。
この屋上の鍵は以前偶然拾ったものだ。
何処の鍵かは鍵に札がついていたのですぐに分かった。
戸を開けると新鮮な空気に包まれた。
杏の長い黒髪が風でなびいている。
また見惚れている自分がいた。
杏は本当に綺麗な女の子だった。
容姿も中身も綺麗だと博文は思っている。
「どうかした?博文君?」
振り返り博文の様子を窺ってきた。
「どうもしない。何でもない」
そう答えると杏が少し寂しそうな顔になった。
「・・・ここって博文君の秘密の場所?」
「そうだな、杏以外入れた事無いな」
屋上は立ち入り禁止区域だ。
きっと管理していた教師が落としたのだろう。
「そうなんだ・・・じゃあ、姉の私は特別なのね」
今ここで彼女に”姉”となんか思っていないと伝えられたらどんなにすっきりするか。
しかし彼女は家族の”絆”をとても大切にしている。
そんな杏にそんな告白は出来ない。
(俺は彼女を傷つけたいわけじゃない)
そう思いながら弁当を開いた。
杏の母が作った弁当は見た目もいいし、味もよかった。
いつも購買でパンばかり食べていた博文には新鮮なものに感じられた。
「お母さんのお弁当美味しい?」
「ああ、作ってもらえてありがたい」
「口にあって良かった」
嬉しそうに自分も食事をとっている杏。
「杏は料理しないのか・・・?」
急に自分に話題を振られ杏は狼狽えた。
「わ、私はあんまり料理上手じゃないし・・・」
「でも、俺は杏の手作り弁当食ってみたいな」
正直な気持ちをぶつけてみた。
「や、それは無理かも・・・」
「そっかそれは残念だな」
本気で嫌がっている彼女に弁当を作らせるつもりはない。
「うちは母さんが早くに亡くなったからこういうの憧れてたんだ」
(父さんの再婚に感謝だな)
「そうなんだ・・・」
「私の家は父と母の性格の不一致で離婚かな」
「良かった、父親は生きているんだな」
「・・・うん・・・」
「・・・?」
「どっちが私を引き取るかで結構もめて・・・お父さんが私を引き取りたいってまだ言っているらしいの」
血の気の引きそうな話だった。
もしそうなれば今の生活が壊れてしまう。
「杏の父親ってどんな人?」
「暴力的な人、すぐ感情的になって私は怖かった」
(直接殴られたりとかしたのかな・・・でもこれ以上は踏み込まないほうがいいだろう)
「そっか」
「・・・うん」
杏は俯いて食べ終わった弁当箱を震える手で結んでいた。
(一体何があったんだろう)
しかし、それ以上の事はもう聞かないと博文は決めた。
杏を怯えさせてしまった。
「うちの父親はおっとりしてるし暴力とか絶対に振るわないぞ」
「・・・うん、知ってる」
無理をして笑う杏が愛おしい。
決して想いを伝えることは出来なくてもずっと杏を守りたいという気持ちが芽生えた。
「さて、そろそろ教室へ戻ろうか」
「また騒がしくなりそう」
くすくす笑いながら杏が言う。
その姿を見て博文は少し安心した。
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