義姉と恋がしたいがしてはいけない

えりー

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杏は新しく出来た弟の博文と何としても仲良くなりたかった。
自己満足かもしれないけれど昔、”失ったもの”を取り戻したかった。
昔、杏には年子の弟、英明(ひであき)がいた。
家族で海に出かけた時の出来事だった。
まだ浮き輪がないと泳げなかった英明の浮き輪を海に投げて取って来させようとした。
英明は必死に泳いでいたが結局溺れてしまい、そのまま帰らぬ人となった。

この事は母も知らないことだ。

杏は一生1人で重たい十字架を背負っていかなければならなくなった。
(あの子は私に殺されたようなものだもの)
母の再婚により新しく出来た弟はやり直すチャンスを神様が与えてくれたような気がした。
”もう同じ過ちは犯さない””今度こそ弟を幸せにする”
杏はそう誓っていた。
今のところ博文とは打ち解けられずにいるがいつか打ち解けられると杏は信じている。
そのときだった。
トントンっとドアをノックする音が聞こえた。
「お母さん?」
そう思いドアを開けると博文が立っていた。
「博文君、さっきはごめんね・・・」
「・・・いや、俺の方こそきつい言い方しかできなくて悪い」
(やっぱり気にしていたようだな)
「・・・」
「・・・他に何か用事でもあるの?」
部屋を見ると引越センターの箱が山積みになっていた。
「力仕事が必要かもしれないと思って・・・その、お詫びに手伝いに来た」
杏は顔を綻ばせた。
(一見怖い感じがしたけど優しいのかな)
「手伝ってくれるの?」
「迷惑でなければな・・・」
満面の笑みで答えた。
「全然迷惑じゃないよ!!助かるよ」
やや、押され気味に博文は答えた。
「じゃあ、手伝わせてくれ」
会話はほとんどなく博文は作業をこなしていく。
沈黙を初めに破ったのは杏だった。
「その箱は開けないでね?私のー・・・大事なものが入っているから」
「分かった」
分担作業は効率が良かった。
次から次に箱が空になっていった。
「こんなもんか」
「うん。ありがとう」
優しい笑みを浮かべ博文を見た。
博文はまたもドキリっとしてしまった。
(彼女はその気もないのにどうして俺にこんなに無防備に微笑んでくるんだ?)
「姉さんっと呼ばせてもらってもいいか?」
「ううん、杏って呼んで欲しい」
その答えに一瞬驚いたが杏がそう望んでいるのならそう呼ぶことにした。
「あ・・・杏」
「なぁに?」
小首を可愛らしく傾げながら杏は博文を見つめ続けた。
(あー・・・マジでヤバいわ)
「大体片付いたから俺は自分の部屋に戻るぞ」
「あ、うん。ありがとう。助かっちゃった」
その言葉を聞き、博文は顔を覆って廊下を歩き自室に辿り着いた。
「マジで可愛すぎる!!」
(惚れるなという方が無理だろう・・・)
(あれだけ可愛いんだもしかしたら彼氏がいるかもしれないな)
排除したい気持ちが押し寄せてきた。
何としても杏に恋愛対象として見てもらいたいという気持ちが強くなった。

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