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都は人間界に来てから好きな人が出来た。
倒れていた自分を救ってくれた海斗だ。
海斗の両親も海斗を婿にすることに賛成してくれている。
しかし、肝心の海斗にその気はなさそうだった。
話しかけても目をそらされ、好みの服装をすれば止められ、くっつけば距離を取られる。
都はこれが初恋なのでどうしたらいいかわからなかった。
都の両親も母が人間だった。
都の母は都が幼い頃亡くなってしまった。
だから、海斗の母といると母がいた頃を思い出し懐かしい気分になる。
都は海斗の家族が大好きだった。

今日は、猫の姿で海斗の膝の上に登ってみた。
すると、一瞬固まったもののそのまま膝にのせてくれて、頭や背中を撫でてくれた。
やはり海斗は優しい人間なのだと思った。
でも、これを人間の姿でしようとすると全力で拒否されてしまう。
その理由は分からないが、本人に確認したところ自分の事が嫌いなわけではないそうだ。
都は今日も海斗を誘惑してみようと思っている。
海斗の本に載っていたことを実践してみようと思ったのだ。
その晩海斗がお風呂に入っているときに一緒に入ってみた。
”チラリズム”というものが人間界にはあるらしい。
なので短めのバスタオルを巻いて海斗の所に行ってみた。
海斗はやはり悲鳴を上げた。
「うわぁ!!何やってんだ」
「一緒にお風呂に入ろうかと思って・・・ご迷惑ですか?」
上目づかい&涙目。
(うっ・・・)
さすがにこれで追い出すのは気の毒しい。
「分かった、少しだけだぞ」
そういうと都は喜んだ。
しかし自分の決断が失敗だったとすぐに気がついた。
彼女はかけ湯をした後湯ぶねに入ってきた。
薄いバスタオルが透け、肌が見え始めた。しかも短いバスタオルだった。
「~っ」
(もう限界だ!!今は一緒に居れない)
海斗は、ザバッと湯ぶねから立ち上がると足早に去って行った。
「危なかった・・・」
海斗の下半身は元気に立ち上がり始めていた。
(・・・あいつは何がしたいんだよ・・・)
この状態がみじめで涙が出そうになった海斗だった。
一方そのころ一人風呂に残された都は呆然としていた。
(また失敗しちゃった・・・人間の雄は難しいな)
「なかなか抱いてもらえそうにないなぁ」
都は一人呟いた。
都は早く伴侶が欲しかった。
人間になれる猫なので伴侶とするのは人間という決まりが猫の世界のルールだった。
せっかく伴侶になるならば、好いた人と添い遂げたい。
都は少し焦っていた。
海斗は自覚がないもののなかなか男前だと思う。
きっと”学校”という所でも人気者に違いないと思っていた。
実際は特にモテることもなくいつも男友達とつるんでいたが、そんな事都が知るはずもない。
何とかして海斗を独占したいと思う都だった。


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