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息子のお披露目

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ウォンは息子にリナースという名をつけた。
リナースはすくすくと育ち、3ヶ月が経過した。
首も座りそろそろお披露目の時期がやって来た。
ウォンは皆を王の間へ集めた。
リナースは真紀に抱かれている。
大勢の人を前にしてもリナースは泣かなかった。
「真紀が世継ぎ・・・リナースを産んだ。これで問題は無いな」
「・・・はい」
皆、納得のいかない表情をしながら返事をした。
「これをもって後宮は解散させる」
「待ってください」
「まだ一人しか産んでないじゃないですか」
「これで解散しても子がもし何かの事故で亡くなってしまったら・・・」
予想通り色々な声が上がる。
「何度も言うが俺は真紀以外を抱くつもりはない」
「それに困るのはあなた方でしょう?」
ランファが口をはさんだ。
「自分の娘を蔑ろにされて悔しいのは分かりますが王の決定は絶対です!!あと、昔から仕えている者の中に不正をしているものが見つかりました」
「後程、処罰を言い渡す」
「・・・」
そう言うと古狸たちは顔を見合わせ黙った。
「真紀とリナースはまだ本来なら本調子じゃない。もうお披露目も終わったので下がらせる」
「真紀様、リナース様こちらへ」
真紀は王の間を出てランファに付いて行った。
「ランファさん、お久しぶりです」
「お久しぶりです。真紀様・・・この度はおめでとうございます」
ランファに会うのは久しぶりだった。
リナースを出産して初めて会ったような気がした。
「・・・真紀様。本当に毒蛇の事ウォン様に言われなかったんですね」
「はい。初めから私に危害を加える気はなかったのに私からは何も言えません」
「そうですか・・・実はあの後、自分でウォン様に話したんです」
「え!?」
真紀は驚いた。
「そしたら殴られました」
「殴られただけで済んだんですか?」
「はい。かなり怒っていましたが・・・」
ウォンは一番残酷な方法で復讐している。
真紀の護衛を任せたり、真紀の身の回りの事をさせたりしている。
それは一番つらい仕打ちだろう。
愛しい人は他の人のもので、傍についていながら手を出すことが出来ない。
ウォンはそれだけの為だけにランファを真紀の護衛につけているわけではない。
何かあったらきっと死ぬ気で真紀を守り抜くだろうと思っている。
ある意味一番信用が出来る人物なのだ。
「・・・今回のお披露目で皆に認めてもらえるといいですが・・・」
「それは難しいでしょうね。後宮の女たちはそれなりの良家の娘たちです。真紀様は異世界の何も持たない娘です」
「はい」
「きついことを言うようですが真紀様が正妃になって得をする人物がいません。正妃になるのを反対する人も出てくるはずです」
「そうですね。今日も敵意のある目で見られました」
「真紀様・・・そういう輩は気になさらないようにしてください」
「はい」
「真紀様にはウォン様と私がついています。この命に代えてもお守りいたします」
「ふふふふっ大げさですよ。でもありがとうございます。少し元気が出ました」
リナースは真紀の腕の中でもぞもぞ動いている。
「ランファさん、抱っこしてみますか?」
「良いんですか?」
「はい、もう首も座っていますし大丈夫だと思いますよ」
「わ、小さい・・・」
ランファはこの小さな温もりも守っていかなければならないと改めて思った。

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