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囮の炎
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平和な日常はずっと続くと思っていた。
しかし、それは長く続かなかった。
森に異変を感じたヒスイは、ローズにこう言って出て行った。
「西の方の森に異変があったようだ、様子を見てくる。お前は城から出るな!」
そう言い残し彼は竜の姿になり飛んでいった。
(西の森が燃えている・・・?)
西の方角はアーロン国と敵対しているセルク国がある方角だった。
「まさか、戦が始まるの!?」
敵対していると言ってもお互いに干渉したことは少なく長年にわたる領土争いをしているだけだと思っていた。
人々は竜の姿に恐れをなし、森への侵入を諦め一時撤退していった。
アーロン国は大丈夫なのだろうか・・・。
自分を捨て駒のように扱ってきた国に思い入れはあまりないが少しは心配になる。
どうして停戦状態にあったセルク国と戦になったのだろう。
セルク国の王族に会ったことは一度だけだった。
外を見るとセルク国の兵士が立っていた。
「そこにいらっしゃる方はアーロン国の姫とお見受けいたします。我らが王が助け出すようにとの事でここへ参りました」
「?」
(何故?セルクの王が私を?)
”城から出るな”という約束を破ってローズは外へ行き、兵士と話した。
「私は自分の意思でここに居ます。助けは不要です。ですがお心遣い感謝します」
そう言うと兵士はかぶっていた兜を外した。
(嘘、まさか・・・)
「貴方は、セルク国の皇子・・・トール皇子?」
「ああ、やはり生贄になるためにここへ送られてきたのですね。哀れな姫君」
トールはローズを担ぎ上げ乗ってきた馬に乗せ、連れ去った。
「何故、セルク国の皇子がこんなことを・・・」
「私は貴方の事をずっとお慕いしておりました。初めて会った時から、ずっと」
その声音は低く背筋が凍るほどのものだった。
「アーロン国にあなたへの求婚の手紙を何度も送ったんですが全く返事がなくて心配して独自で調べていました。そしたらなんとあの恐ろしい緑の神の供物として贈られたことがわかりました」
それはそうだろう。アーロン国がセルク国と同盟を結ぶはずもなく、生贄として育てた娘をセルク国へ嫁がせるはずもない。
「わ、私をあの城へ帰してください!!さっきも言いましたが私は自分の意思であそこにいるのです」
そう言うローズを見て彼はこう言った。
「可哀そうに、何かの術をかけられているのですね。そうでなければ自分から生贄になろうなんて思いませんものね」
彼には全く話が通じない。
「トール皇子・・・」
「今は私がセルク国の王です。父が亡くなり私が国を継ぎました」
(そんな話は正直どうでもいい!!)
「・・・お願いです、トール皇子。私をあの場所に・・・」
「駄目です。貴方は私の花嫁になって頂きます。貴方はもうアーロン国とは何の関係もないただの一人の女性です。国際問題に発展することもないでしょうし、私の国では一般の国民のんかから花嫁を選ぶ習わしがありますから何の問題もありませんよ」
そう一息にトール王は言った。
「私は嫌です。貴方の花嫁にはなれません。私には想う方がいるのです」
「私と来れば今よりずっといい生活が送れますよ?」
「私はそんなもの望みません」
そう言っても馬の歩みを止めるつもりはないらしい。
ローズは突然攫われてしまったのだった。
気がついた時にはもう森を抜け広い草原が広がっている場所へ出た。
「あの竜に気づかれないように一緒に逃げましょうね、ローズ姫」
(このまま連れていかれるわけにはいかない)
ローズは抵抗して、歩みを緩めた馬から隙を見て飛び降りた。
「いたっ」
「大丈夫ですか?ローズ姫。混乱しているのは分かりますがあまり警戒しないでください。私は貴方を助けたいのですよ」
そう言い馬から降りてきて身につけていたスカーフでローズの両手を拘束した。
そうしてもう一度馬に乗せた。
馬に乗りすごい速度で走り出した。
「この速度なら落ちたら即死かもしれませんね」
笑顔でそんな恐ろしい事を言ってきた。
「・・・」
(この人には何を言っても通じない!どうしたらいいの?助けて・・・ヒスイ!!)
そう願っても彼は今反対側の西の森にいる。
こっちに来れるはずもない。
こうしてローズはセルク国の王に攫われてしまった。
しかし、それは長く続かなかった。
森に異変を感じたヒスイは、ローズにこう言って出て行った。
「西の方の森に異変があったようだ、様子を見てくる。お前は城から出るな!」
そう言い残し彼は竜の姿になり飛んでいった。
(西の森が燃えている・・・?)
西の方角はアーロン国と敵対しているセルク国がある方角だった。
「まさか、戦が始まるの!?」
敵対していると言ってもお互いに干渉したことは少なく長年にわたる領土争いをしているだけだと思っていた。
人々は竜の姿に恐れをなし、森への侵入を諦め一時撤退していった。
アーロン国は大丈夫なのだろうか・・・。
自分を捨て駒のように扱ってきた国に思い入れはあまりないが少しは心配になる。
どうして停戦状態にあったセルク国と戦になったのだろう。
セルク国の王族に会ったことは一度だけだった。
外を見るとセルク国の兵士が立っていた。
「そこにいらっしゃる方はアーロン国の姫とお見受けいたします。我らが王が助け出すようにとの事でここへ参りました」
「?」
(何故?セルクの王が私を?)
”城から出るな”という約束を破ってローズは外へ行き、兵士と話した。
「私は自分の意思でここに居ます。助けは不要です。ですがお心遣い感謝します」
そう言うと兵士はかぶっていた兜を外した。
(嘘、まさか・・・)
「貴方は、セルク国の皇子・・・トール皇子?」
「ああ、やはり生贄になるためにここへ送られてきたのですね。哀れな姫君」
トールはローズを担ぎ上げ乗ってきた馬に乗せ、連れ去った。
「何故、セルク国の皇子がこんなことを・・・」
「私は貴方の事をずっとお慕いしておりました。初めて会った時から、ずっと」
その声音は低く背筋が凍るほどのものだった。
「アーロン国にあなたへの求婚の手紙を何度も送ったんですが全く返事がなくて心配して独自で調べていました。そしたらなんとあの恐ろしい緑の神の供物として贈られたことがわかりました」
それはそうだろう。アーロン国がセルク国と同盟を結ぶはずもなく、生贄として育てた娘をセルク国へ嫁がせるはずもない。
「わ、私をあの城へ帰してください!!さっきも言いましたが私は自分の意思であそこにいるのです」
そう言うローズを見て彼はこう言った。
「可哀そうに、何かの術をかけられているのですね。そうでなければ自分から生贄になろうなんて思いませんものね」
彼には全く話が通じない。
「トール皇子・・・」
「今は私がセルク国の王です。父が亡くなり私が国を継ぎました」
(そんな話は正直どうでもいい!!)
「・・・お願いです、トール皇子。私をあの場所に・・・」
「駄目です。貴方は私の花嫁になって頂きます。貴方はもうアーロン国とは何の関係もないただの一人の女性です。国際問題に発展することもないでしょうし、私の国では一般の国民のんかから花嫁を選ぶ習わしがありますから何の問題もありませんよ」
そう一息にトール王は言った。
「私は嫌です。貴方の花嫁にはなれません。私には想う方がいるのです」
「私と来れば今よりずっといい生活が送れますよ?」
「私はそんなもの望みません」
そう言っても馬の歩みを止めるつもりはないらしい。
ローズは突然攫われてしまったのだった。
気がついた時にはもう森を抜け広い草原が広がっている場所へ出た。
「あの竜に気づかれないように一緒に逃げましょうね、ローズ姫」
(このまま連れていかれるわけにはいかない)
ローズは抵抗して、歩みを緩めた馬から隙を見て飛び降りた。
「いたっ」
「大丈夫ですか?ローズ姫。混乱しているのは分かりますがあまり警戒しないでください。私は貴方を助けたいのですよ」
そう言い馬から降りてきて身につけていたスカーフでローズの両手を拘束した。
そうしてもう一度馬に乗せた。
馬に乗りすごい速度で走り出した。
「この速度なら落ちたら即死かもしれませんね」
笑顔でそんな恐ろしい事を言ってきた。
「・・・」
(この人には何を言っても通じない!どうしたらいいの?助けて・・・ヒスイ!!)
そう願っても彼は今反対側の西の森にいる。
こっちに来れるはずもない。
こうしてローズはセルク国の王に攫われてしまった。
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