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別れた理由
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それから何日か経ったある日、ヒスイに呼ばれ彼の部屋へ行った。
「今からどうして、前世のお前があんな手紙を書いたのか話そうと思う」
そう言い彼はベッドに腰かけるよう促してきた。
彼の隣へローズは腰かけた。
「今から150年前に彼女はここへ生贄としてやってきたんだ。今のお前と同じ境遇だった。そうして他の村に送り届けてやろうとしたら行く場所もやりたいこともわからないと言って泣き出したんだ。
だから、俺は仕方なく彼女をこの城に住まわせることにした」
ローズは黙ってヒスイの言葉に耳を傾けた。
「それから彼女と仲良くなっていたんだ。彼女は竜の姿を見ても怯えもしなかった。ある日、竜の姿で二人で森の出口付近までピクニックに出掛けたんだ。その時偶然他の人間に見られ、人間は俺に向かって矢を放ってきた。」
「・・・」
「それで彼女が俺を庇い怪我をしたんだ。その怪我が原因で彼女は死んでしまった」
「死が二人を引き裂いたんだ。彼女は死ぬ寸前でその手紙を書いていつか見つけて欲しいと思い、あそこに隠したんだろう」
その話を聞きまた大粒の涙がローズから零れ落ちてきた。
「ローズ?どういした?」
あのイメージは矢が飛んでくるイメージだったのか。
いくつもの矢が飛んでくるイメージ。
「俺は、彼女が死に自暴自棄になり暴れた。それを見た人間たちが俺ごと焼き払おうと森に火をつけた。火は何とか消したが、それから森と城を守るために見回りをしている。もちろん人の姿でな」
「・・・そうだったんですか・・・」
(そんな事が・・・)
あの手紙の筆跡は少し震えた手で書いてあったようにも思う。
(彼女は何故直接伝えなかったんだろう。私だったらきっと直接伝えたはずだ)
「俺はあいつが死ぬとき傍にいなかったんだ。復讐の為に矢を放った人間の村を襲っていたからな。だから彼女は手紙で残したんだと思う」
「でも隠さなくても良かったのに・・・」
「彼女は、俺が冷静になってから見つけて読んで欲しかったんだと思う」
(あの時の俺は冷静じゃなかった。人間なら誰でもいいから殺したかった)
ヒスイは話終えた後、少し悲しそうな顔で微笑んでいた。
きっと彼女の死に立ち会えなかった悲しみがあるのだろう。
しかし、こんな別れ方はしたくなかったはずだ。
(私だったら・・・最後は好きな人に看取ってほしい・・・)
ローズは泣きながらそう思った。
泣きじゃくるローズをヒスイは抱いて慰めてくれた。
ヒスイはやっぱり優しい。
一時は荒れていたこともあったかもしれないが彼は今はとても優しい。
ヒスイと前世の私の話はここで終わった。
「今からどうして、前世のお前があんな手紙を書いたのか話そうと思う」
そう言い彼はベッドに腰かけるよう促してきた。
彼の隣へローズは腰かけた。
「今から150年前に彼女はここへ生贄としてやってきたんだ。今のお前と同じ境遇だった。そうして他の村に送り届けてやろうとしたら行く場所もやりたいこともわからないと言って泣き出したんだ。
だから、俺は仕方なく彼女をこの城に住まわせることにした」
ローズは黙ってヒスイの言葉に耳を傾けた。
「それから彼女と仲良くなっていたんだ。彼女は竜の姿を見ても怯えもしなかった。ある日、竜の姿で二人で森の出口付近までピクニックに出掛けたんだ。その時偶然他の人間に見られ、人間は俺に向かって矢を放ってきた。」
「・・・」
「それで彼女が俺を庇い怪我をしたんだ。その怪我が原因で彼女は死んでしまった」
「死が二人を引き裂いたんだ。彼女は死ぬ寸前でその手紙を書いていつか見つけて欲しいと思い、あそこに隠したんだろう」
その話を聞きまた大粒の涙がローズから零れ落ちてきた。
「ローズ?どういした?」
あのイメージは矢が飛んでくるイメージだったのか。
いくつもの矢が飛んでくるイメージ。
「俺は、彼女が死に自暴自棄になり暴れた。それを見た人間たちが俺ごと焼き払おうと森に火をつけた。火は何とか消したが、それから森と城を守るために見回りをしている。もちろん人の姿でな」
「・・・そうだったんですか・・・」
(そんな事が・・・)
あの手紙の筆跡は少し震えた手で書いてあったようにも思う。
(彼女は何故直接伝えなかったんだろう。私だったらきっと直接伝えたはずだ)
「俺はあいつが死ぬとき傍にいなかったんだ。復讐の為に矢を放った人間の村を襲っていたからな。だから彼女は手紙で残したんだと思う」
「でも隠さなくても良かったのに・・・」
「彼女は、俺が冷静になってから見つけて読んで欲しかったんだと思う」
(あの時の俺は冷静じゃなかった。人間なら誰でもいいから殺したかった)
ヒスイは話終えた後、少し悲しそうな顔で微笑んでいた。
きっと彼女の死に立ち会えなかった悲しみがあるのだろう。
しかし、こんな別れ方はしたくなかったはずだ。
(私だったら・・・最後は好きな人に看取ってほしい・・・)
ローズは泣きながらそう思った。
泣きじゃくるローズをヒスイは抱いて慰めてくれた。
ヒスイはやっぱり優しい。
一時は荒れていたこともあったかもしれないが彼は今はとても優しい。
ヒスイと前世の私の話はここで終わった。
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