緑の守り神

えりー

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神への供物

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王家に産ませた末娘、ローズは産まれた時から緑の守り神の生贄になることが決められていた。
150年に一度王家から生贄を出さなければいけない決まりがあった。
ローズは姫でありながらメイドのようにして育てられた。
もちろん姫としての教養、作法も身につけている。
緑の守り神とはローズの住む国を守護している神のことだ。
その神のおかげでローズの国は他の国から侵略されることなく皆平和に過ごせている。
生贄になる娘に愛情を注がなかった両親。ローズを差別し続けた姉弟達。
城に住んでいてもローズには居場所はなかった。
ローズは生贄になる日を指折り数えるようになっていた。
(早くこんな人生が終わればいい)
いつもそんな風に思ていた。
そうしてようやく生贄になる日が来た。
ローズは不安はあったのの内心城から出られることを喜んだ。
ローズは馬車に乗せられ神の住む森へ一人、置き去りにされた。
従者たちもローズを忌み嫌い、さっさと城へ帰って行ってしまった。
ローズは暫く森の中をさ迷い歩いてようやく朽ち果てそうな城にたどり着いた。
ローズは大きな声を出した。
「誰かいませんか!?私はアーロン王国の姫です。生贄になるためにここへ来ました」
そう言うと扉が開き、中から緑色の髪をした男が出てきた。
ローズは人がいたことに安心した。
男はローズを上から下まで眺め、驚いた素振りを見せた。
そうしてこう言った。
「生贄はいらん。帰れ」
「・・・え?」
衝撃の一言だった。
今まで生贄として育てられたローズにとってそれは絶望しかない一言だった。
「どうして・・・」
「何度も言わせるな、生贄はもういらないと言ったんだ」
「そんな・・・私は・・・」
ローズの胸は痛み張り裂けそうになった。
ローズはここで引くわけにはいかなかった。
ここに置いてもらえないとなると他に行き場がないのだ。
「何でもします。だから、ここにおいてください」
「アーロンの城に帰ればいいじゃないか」
「帰れないのです」
ローズは泣きながらそう言った。
「俺は女の涙が嫌いだ。泣き止むなら屋敷に入れてやる」
ローズは必死に泣くことを止めた。
男は仕方なくローズを屋敷に入れた。
「俺はヒスイ。お前は?」
「ローズと申します」
ローズはスカートの裾を軽く持ち上げ恭しく頭を下げた。
その姿は立派な姫のものだった。
「何故、お前は生贄になりたがる?」
男はため息交じりにそう問いかけてきた。
「私は産まれた時から生贄になることが決まってました。城の皆も私を忌み嫌い、肉親も見送りに来なかったのです」
それはローズに関心がなく末の姫がどうなろうといいと言った意思表示だった。
「・・・それは悪いことをした。俺がもっと早くに生贄はいらないと城に伝えておけばこんな事にはならなかったんだな」
「・・・そんなに私がここに居ることが迷惑なんですか?私は生贄になる為だけに育てられたので、今更どう生きていったらいいのかわかりません」
男はまたじっとローズを見た。
(何でそんな瞳で私を見るの?)
男の瞳は悲しげなものだった。
「・・・迷惑ではないんだが・・・わかった暫くの間はこの城に滞在することを許可しよう」
「本当ですか!?」
ローズは満面の笑みで喜んだ。
「だが、お前のやりたいことが見つかったら出て行ってくれ。城の一番端にある部屋には絶対に入らないと約束してくれ」
「わかりました」
「あとはどの部屋を使っても構わない」
そう言うと男は席を立ち、どこかへ去っていってしまった。


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