永遠の恋人

えりー

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5年後

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引っ越してきて5年が経った。
相変わらず凛の姿は幼い少女のままだった。
雅之は中学生になっていた。
背も伸び、普通に成長していた。
「凛は本当に変わらないんだな」
「ええ。私は成長しないもの」
少し寂しそうにそう言い笑った。
その笑みは胸を締め付けるようなものだった。
雅之は学校にもそれなりに溶け込み、友人も多く出来た。
学校生活も楽しかった。
しかしやはり1番の友人は凛だった。
学校から帰ると雅之は凛の待つ自室へ急いだ。
家の敷地から一歩も出る事の出来ない凛に学校の話や色々な話をしてやった。
凛は嬉しそうに話しに耳を傾けた。
声を立てて笑う事のない彼女。
ただ微笑むだけでその表情は穏やかなものだった。
「凛は何か変わった事なかったか?」
「いつも通りよ。何も変わりはないわ」
「そっか」
聞いても毎回同じ答えが返ってくるだけだった。
「それよりもっと外の世界の話を聞かせて?」
そう急かされてもなかなか思いつかない。
「今日、売店で買ったパンが凄く美味しかったぞ」
「売店?」
きょとんとして聞き返されてしまった。
「えーと・・・店のような場所だ」
「学校の中にお店があるの?」
「ああ、明日買ってくるから一緒に食べよう」
凛は何も食べなくても存在できるが何か共通の話題が欲しかった雅之はそう提案した。
「うん。楽しみにしてるわ」
相変わらず凛は微笑を浮かべている。
そんな凛を気が付くと雅之は抱きしめていた。
凛に触れたのはこれが初めてだった。
何故なら触れらると思っていなかったからだ。
幽霊のようなもので実体のないものだと思っていた。
初めて触れる彼女は着物越しに体温があった。
「あの・・・雅之、急にどうしたの?」
珍しく凛は動揺している。
「俺、凛の事が好きだ」
そう告げると凛は涙を流し出した。
大粒の涙が彼女の大きな瞳から零れ落ちていく。
「わ、私もずっと雅之が好きだった」
「じゃあ、両想いだ!」
雅之は嬉しくて凛を抱きしめている腕に更に力を込めた。
「でも私は人とは違う存在なのよ?それでもいいの?」
「ああ、俺は気にしない」
向かい合い自然とお互いの唇を重ね合った。
柔らかな感触が心地よくこのまま凛を離したくないと思った。
気持ちが通じ合い2人は幸せだった。
「まさか告白されるなんて・・・思わなかった」
真っ赤になりながら凛はそう言った。
「そうなのか?俺は多分初めて会った時から凛の事好きだったと思う」
「・・・ありがとう、好きになってくれて」
雅之は凛の涙を拭いてやりながら言った。
「これからも俺の傍にいてくれるか?」
「ええ!もちろん」
「それならパンじゃなくてもっと良いもの買って来てやる」
「・・・楽しみにしているわ」
そう言い凛は愛らしく微笑んだ。


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