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アーサーの秘密
25話 本心のままに
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翌日 灯魔台神館
アールモンドが灯魔作業を行っている 後方にアーサーが居て 周囲の様子から非公開灯魔作業だと分かる
アールモンドが作業を終え目を開いて見上げる 灯魔台に雷が纏わり間もなくしてプラズマに変わり 灯魔台にプラズマが灯る
アールモンドが構えを解除して思う
(灯魔作業は問題ねぇ… それどころか)
アーサーが灯魔台を見上げて言う
「アーリィー?これって ひょっとして… プラズマ?」
アールモンドが灯魔台を見上げたまま言う
「ああ 特に意識したつもりは 無かったんだが」
アールモンドが法魔帯の巻かれている腕を見て思う
(雷の魔証印が濃くなった影響で 雷の魔力が高まったのか?俺自身は何時もの雷の灯魔作業と同じに やったつもりだったンだが それが勝手に…)
アーサーが笑顔で言う
「アーリィ― 凄いっ!凄いねー?ペンペン?」
アールモンドが疑問して振り返りながら言う
「ペンペンって…?なあっ!?」
アールモンドが振り返った先 アーサーの腕に ペンギンの幻獣が抱かれていて幻獣が鳴く
「ガァー?」
アーサーが笑顔で言う
「ペンペンもアーリィーの灯魔作業は 凄い!って 言ってるよ?アーリィー?」
幻獣が鳴く
「ガァー?」
アールモンドが呆れて言う
「…いや 言ってねぇよ?つーか それより…」
幻獣がアーサーの胸を突っ突いている
アールモンドが言う
「お前 食われてンぞ?アーサー?」
アーサーが疑問して言う
「え?俺が食われてるって?…あっ!?」
幻獣がアーサーの体の表面でくちばしをパクパクさせている
アーサーが慌てて言う
「あぁっ ごめんね ペンペン!?それは 俺がアーリィーから貰った大切な魔力だからっ あんまり食べないで!?ペンペンのご飯は こっちだから?」
アーサーが灯魔口へ幻獣を置く 幻獣が鳴く
「ガァー」
幻獣が灯魔口で灯魔を食べる アーサーがホッとしてから微笑して言う
「美味しい?ペンペン?」
幻獣が鳴く
「ガァー?」
アールモンドが呆れていて言う
「通じてねぇよ… それと ”ペンペン”は止めろよ アーサー?」
アーサーが衝撃を受けて言う
「駄目なのぉっ!?」
幻獣が鳴く
「ガァー」
レイモンド邸 エントランス前
アールモンドとアーサーが風に現れる
アーサーが言う
「灯魔作業 お疲れ様!アーリィー!」
アールモンドが言う
「おう」
アーサーが腕時計を見て言う
「今は… 10時半だけど?アーリィー この後はどうする?」
アールモンドが言う
「公開灯魔作業は 2時からだったよな?」
アーサーが言う
「うん!今日の公開灯魔作業は2時から!それに 今日はもちろん 公開灯魔作業は1日1回のペースに戻すって言ってたから 明日以降もそうなると思うけど?」
アールモンドが言う
「そうか なら… 今から茶にして サッサと昼寝しちまうか… その方が」
アーサーが言う
「そうだね アーリィー!そうしちゃった方が 午後の時間に余裕が持てそうだね?」
アールモンドが屋敷へ向かいながら言う
「ああ 灯魔作業は問題ねぇと 分かったからな?これで…」
アーサーがアールモンドに続き言う
「安心して眠れるね!?アーリィー?」
アールモンドが言う
「…まぁな?別に 好きでやってる訳じゃねぇが やるからには 今まで以上のモンを見せてやらなけりゃ 俺がやる意味がねぇ」
アーサーが微笑して言う
「アーリィー カッコイイ!」
アールモンドとアーサーが屋敷へ消えて行く
灯魔台神館
アーサーが舞台袖から観覧席を眺めて言う
「わぁ~ 今日も超満員!…あっ!?」
アーサーが視線を向けた先 観覧席の後方にファンたちが居て不満げにしている
アーサーが言う
「いつものファンの子たちが あんな後方に!きっと この灯魔台神館はチケット制では無くて 村の人たちを全員迎え入れる形での 入場管理をしているんだね?つまり 観覧は無料って事で!」
アーサーが振り返った先 アールモンドが沈黙していて思う
(…そう言や 忘れてたぜ 公開灯魔作業は…)
アールモンドが壁の向こうにある観覧席へ視線を向けて思う
(魔力を公開するだけじゃねぇ… それをやる ”俺自身も” 見られて…っ)
アールモンドがハッと衝撃を受け 思わず悲鳴を上げて言う
「ぬあぁあっ!?なっ!?何しやがるっ!?アーサー!?」
アールモンドが思わず頬を拭って視線を向けた先で アーサーが一瞬きょとんとしてから微笑して言う
「うん アーリィー!一応 念の為にね?今の内に 舐め足して置いた方が 良いかなぁと思って?」
アールモンドが困惑しつつ言う
「あ… あぁ…っ そ、そおだな?確かに 言われてみりゃ…?」
アールモンドが思う
(法魔帯と違って 唾液なんてもんは 今みてぇに拭っただけでも 擦り取られちまう きっと… だ、だからっ!?)
アールモンドがハッとして言う
「ンあっ!?」
アーサーがアールモンドの頬を舐め上げた状態で一瞬止まってから 軽く笑って言う
「あっははっ!アーリィー 可愛い!」
アールモンドが衝撃を受け怒って言う
「う、うるせぇえよ アーサー!可愛いとか 抜かすんじゃねぇ!それからっ やるならやるで 一声かけろってンだっ!?ビ、ビビるじゃ ねぇかっ!?」
アーサーが軽く笑って言う
「あははっ そうだね?ごめーん アーリィー?それじゃ 俺 今から アーリィーのほっぺ舐めちゃうよ~?ぺろーって?」
アーサーがアールモンドの頬を舐める
アールモンドが衝撃を受けて言う
「ひぎゃっ!?ぐ…っ うぅううう~~っ!」
アールモンドが全身に力を入れている アーサーがそれを見て軽く笑い作業を続ける
作業を終えたアーサーが言う
「はいっ お終い ちゃんと塗っといたから これで大丈夫だよ!アーリィー?」
アールモンドが止めていた息と共に力を抜いて言う
「はぁ…っ はぁ…っ はぁ… …お、おう」
アールモンドが思う
(これで 顔の魔証印が 焼かれる心配はねぇ…)
アーサーがアールモンドの顔を見て微笑する
アールモンドが思う
(いや… そもそも 俺は…)
館内放送が聞こえる
『館内へご来場の皆様へお知らせを致します…』
アールモンドが思う
(そっちの心配はして… と言うよりも 頭に無かった それよりも…)
アーサーがアールモンドの顔を見ていて疑問する
館内放送が続いている
『間もなく灯魔作業の開始時刻となりますので ご観覧をされる方は お席の方へ…』
アールモンドが視線を逸らす
アーサーが気付き微笑して言う
「ねぇ アーリィー?今日は 俺…」
館内放送が続いている
『なお 灯魔作業中のお席の移動や ご退場は…』
アーサーが続けて言う
「アーリィーが灯魔作業へ行く前に 観覧席の皆へ挨拶をしても 良いかなぁ?アーリィー?」
アールモンドが疑問して言い掛ける
「うん?何ンで…?」
館内放送が続いている
『本日は フェフェレ灯魔台神館へ お越し頂き…』
アールモンドがハッとして言う
「まさかっ お前!?何か言う気かよ アーサー?」
アーサーが微笑して言う
「俺は何も言わないよ アーリィー?ただ、折角アーリィーの灯魔作業を 応援しに来てくれた皆に 館内アナウンスのお礼だけじゃ 物足りないから?そこの舞台袖に立って ちょっとお礼をして来ようかなぁ?って それだけなんだけど 良いかなぁ アーリィー?」
アールモンドが思う
(ちょっと礼をして来るだけ… そいつはつまり)
アールモンドが言う
「…分かった …やりたきゃ 好きにしろよ?アーサー」
アーサーが微笑んで言う
「うん!ありがと アーリィー!それじゃ 俺 ちょっと行って来るから アーリィー 待っててね?」
館内放送が聞こえる
『只今 灯魔作業の開始予定時刻となりました 現時刻を持ちまして 館内の…』
アーサーが観覧者たちの前へ現れる 拍手が上がり観覧席にいるファンたちが黄色い歓声を上げている
アールモンドが思う
(いつもと違って アーサーが先に姿を見せると言う事… そいつは…)
アールモンドの視線の先 アーサーが観覧席へ向かって礼をしている 拍手が高鳴る
アールモンドが思う
(その後に出て行く ”俺を” アーサーが肯定すると言う事… つまり 俺の この顔の魔証印を アーサーも認識していると言う事実を 先に知らしめる事で アーサーは俺を連中の目から 助けようとしているんだろ …だったら)
アーサーが礼を終え舞台袖へ戻ろうとする アールモンドが顔を上げて言う
「アーサー」
アーサーが反応して顔を向ける
アールモンドが言う
「お前も そこに居ろよ」
アーサーが一瞬呆気に取られるが微笑して言う
「うん!アーリィー!」
アールモンドが舞台袖から出て行く
アールモンドの登場に 沸き上がった拍手が 疑問の声とまばらな拍手に切り替わる アールモンドは変わらぬ様子でアーサーの前を過ぎ 灯魔台へ向かい台座の前に立って いつもと同じく杖を突く その音に館内が静まる
アールモンドが灯魔作業を開始して思う
(周囲には 俺へ対する疑念の魔力… いつもとは違う空間だ… それでも)
アールモンドが横目にアーサーを見る アーサーはアールモンドの方へ向いている
アールモンドが視線を戻して思う
(その いつもと違う場所にも お前が居てくれる それなら 俺は大丈夫だ)
補助灯魔台にプラズマが灯り 観覧席の人々がどよめく
アールモンドが思う
(そうだ 他の観覧者の連中が居ようが 変わりねぇ 午前中にやった灯魔作業と同じだ 俺とお前だけが居ると思えば良い!)
周囲にプラズマの魔法が広がり 人々が歓声を上げる
アールモンドが思う
(思えば こいつらなんて薄情なモンだ 応援だか安全への祈願だか知らねぇが ちょっとした事で俺を疑いやがる… その点アイツは)
プラズマで映し出される草原からピョコっと何かが現れる 観覧者たちが興味と期待に表情を明らめる
アールモンドが思う
(俺の為なら 命さえ差し出して 当然の様に 何だってする… だから俺も あの時も つい… いつもと同じに 当然の様に言っちまった)
アールモンドが言う
『ンな脱脂綿で ちんたらやるンじゃなくて…っ 思い切って 来いっ!』
アーサーが疑問して言う
『思い切って?…えーっと?』
アールモンドが思う
(唯でさえ男同士だってぇのに 顔を舐めろだなンてな?オマケに そこには 癒えてはい様とも 一生消えねぇ深い火傷(魔証印)の痕がある… 常識で考えてたって 舐めたくなンかねぇだろう… それでもアイツは)
幻想の動物は2匹のイタチの姿を作って館内を走り回る 観覧者たちが喜んで見渡す アールモンドが視線を向けた先 アーサーは観覧者たちと同様に幻影を視線で追って楽しんでいる
アールモンドが苦笑して思う
(何の躊躇も迷いもなく それこそ"いつもと同じ"アイツのまま やって見せた …ここまで来りゃ もう 何も疑う必要はねぇ 俺はアイツを信じられる アイツは… アーサーは 俺の…っ)
幻想のイタチたちが灯魔口へ潜り込み 灯魔台にプラズマが灯る 一瞬の静寂の後 観覧席から拍手が沸き上がる アールモンドが構えを解除して杖を手に退場して行く 観覧者たちと同じく拍手をしていたアーサーが アールモンドへ微笑する
アールモンドが思う
(唯一 心から信頼出来る奴だ… もう本当に あいつの寝る部屋へ 結界を張ってやっても良いかもな?)
アールモンドがアーサーを見て思う
(今なら分かる お前なら… 俺の結界に 阻まれる事なンか ねぇって事が)
アールモンドが僅かに微笑して その表情を帽子のつばに隠す アーサーが微笑を増してから アールモンドの後方の様子に気付く アールモンドがアーサーの様子に勘付いて一度立ち止まる
皆の視線の先 灯魔口から幻獣のイタチが現れ 慌ただしく走り回り灯魔口から足を滑らせて落ちる
観覧者たちがあっと息を飲んだ瞬間 アーサーがイタチをキャッチしてホッと息を吐いて言う
「…ふぅ 危ない 危ない?」
アーサーの腕の中から イタチがひょこっと顔を出す 観覧席からワッと拍手と喝采が上がる アーサーが軽く笑い イタチを灯魔口へ置いて様子を見てから 観覧席へ向き直って礼をする 拍手が増す
アーサーが礼を終えアールモンドへ向く アールモンドが後ろ目に見ていた様子から向き直って歩き出す アーサーが微笑して もう一度観覧席へ礼をして イタチの安全を見てから アールモンドの下まで走って行き 止まない拍手の中 2人で退場する
舞台袖
アールモンドが立ち止まり振り返る 舞台袖の出入り口でアーサーが 観覧席へ礼をしてから駆け込んで来て言う
「ごめんね アーリィー お待たせ!灯魔作業 お疲れ様!」
アールモンドがアーサーの顔を見てから苦笑して言う
「おう …お前もな アーサー?」
アーサーが疑問して言う
「へ?俺が?」
アールモンドが歩き始める アーサーが追って歩きつつ言う
「アーリィーと違って 俺は何もしていないよ アーリィー?」
アールモンドが苦笑して言う
「良く言うぜ?お前は連中の相手をしてンだろ?俺には出来ねぇ事だ」
アーサーが苦笑して言う
「あぁ その事?その事だったら…」
アールモンドが言う
「俺には出来ねぇよ?あンな…」
アールモンドが思う
(薄情な連中に 頭を下げるだなんてコト…)
アーサーが微笑して言う
「アレは 俺がやりたくてやっている事だし それに 俺は嬉しいから!いくらでも出来るよ?アーリィー?」
アールモンドが言う
「ご苦労なこったな 奉者様はよ?そいつも…」
アールモンドが思う
(お前の奉者としての 仕事だもんな?だから…)
アーサーが言う
「そうだよ アーリィー?俺のウィザード様は 凄いでしょ!?って 俺 いつも 嬉しくて堪らないよ!アーリィー!?」
アールモンドが衝撃を受けて言う
「…って!?そう言う事かよ アーサー!?」
アールモンドが思う
(てっきり 奴らからの 応援やら声援へ対しての 感謝の礼だと…っ!?)
アーサーが言う
「当然じゃない アーリィー?…俺の本性知ってるでしょ?まさか その俺が?本気で観覧席の皆さんへ お礼の挨拶をしているのだと思ってた?アーリィー?」
アーサーがいつもの人懐っこい微笑から 一瞬 口角を上げた笑みを見せる
アールモンドが衝撃を受け 視線を逸らして言う
「…お、おう … …そおだったな?」
アーサーがいつもの様に 能天気な笑みを湛えて言う
「えへへ~?」
アールモンドが沈黙する
「…」
アールモンドとアーサーが去って行く
《ああ… そおだった…》
レイモンド邸 エントランス前
アールモンドとアーサーが風に現れる
アーサーが言う
「今日の灯魔作業は これでお終いだけど?この後はどうする アーリィー?時間は…」
アーサーが腕時計を見る
アールモンドが思う
(アーサーの この振る舞いは…)
アーサーが言う
「2時35分!3時のお茶には まだちょっと早いけど…?」
アールモンドが思う
(全て 紛い物だ)
アーサーがアールモンドの顔を覗き込んで言う
「どうしよっか?アーリィー?」
アールモンドが沈黙する
「…」
アーサーが疑問して言う
「アーリィー?どうかした?」
アールモンドが思う
(振舞だけじゃねぇ… 言葉も… 声すら…っ)
アーサーが暇つぶしに身体をうねらせ疑問して言う
「ア~~リィ~~?」
アールモンドがアーサーへ向いて言い掛ける
「ア…」
アーサーが疑問して言う
「うん?」
アールモンドが視線を逸らして言う
「…ンでもねぇ…」
アーサーが疑問して言う
「え?アーリィー?」
アールモンドが歩き始めて言う
「少しくれぇ早くても 茶にする…」
アーサーが疑問していた状態から微笑して言う
「うん!それじゃ そうしよっか!アーリィー!」
《そうしろと言ったのは 俺だ…》
アーサーがアールモンドを追って行く
アールモンドの部屋 前
アールモンドが到着する前に アーサーがドアを開ける
アールモンドが思う
(アーサーは 俺の世話役だ …から)
アールモンドが入室すると アーサーが追って入り ドアを閉める
アールモンドが思う
(こうやって 俺の世話をするのは アーサーの仕事で)
アーサーがアールモンドの帽子と法衣を脱がせる
アールモンドが思う
(それから 奉者でもあっから…)
アールモンドがソファへ座る その前にあるテーブルに ティーセットが置かれ それを用意したアーサーが微笑して紅茶の用意をする
アールモンドが思う
(俺に ウィザードの世話をするのも アーサーの仕事だ… けど)
アーサーがお湯を入れたティーケトルを アールモンドの前に置き アールモンドの顔を見て微笑する
アールモンドがアーサーを見て思う
(やってる事は十分だ だったら別に…)
アールモンドの脳裏に記憶が思い出される
アーサーが言う
『当然じゃない アーリィー?…俺の本性知ってるでしょ?まさか その俺が?本気で観覧席の皆さんへ お礼の挨拶をしているのだと思ってた?アーリィー?』
アーサーがいつもの人懐っこい微笑から 一瞬 口角を上げた笑みを見せる
アールモンドが思う
(その本性を 偽る必要はねぇだろ?)
アーサーが紅茶を前にウズウズしている
アールモンドが思う
(…ま、それを言ったら 俺だって)
アールモンドが言う
「…飲みてぇのか?アーサー?」
アーサーが一瞬疑問してから苦笑して言う
「あれぇ?アーリィー お茶にするって 言わなかったっけ?ごめーん アーリィー?」
アールモンドが言う
「…いや 言ったけどよ?お前は…?本当に飲みてぇのかよ?」
アールモンドが思う
(もし… ソイツも 世話役や奉者としてのモン だってぇなら…)
アーサーが微笑して言う
「もちろん!?だって 俺 アーリィーが淹れてくれる紅茶 大好きだもの?俺 いつも言ってなかったっけ?」
アールモンドが言う
「ああ 言ってたけどよ?…なら?」
アールモンドが紅茶を注ぐ アーサーが衝撃を受けて言う
「えぇ!?アーリィー?魔法はっ!?」
アールモンドが言う
「俺が淹れた紅茶が好きだ って言っただろ?」
アーサーの前にティーカップが置かれる
アーサーが苦笑して言う
「それは言ったけど…?」
アールモンドが思う
(俺が淹れた紅茶が好きなのか?俺が… いや?ただ魔力を掛けたモンが 好きなのか?もし…)
アールモンドが言う
「飲めよ?アーサー」
アーサーが言う
「うん それじゃ 頂くけど?アーリィーは?」
アールモンドが言う
「俺は良い」
アーサーが衝撃を受け言う
「そうなのっ!?」
アールモンドが言う
「俺は… …まぁ良いから お前は 飲みてぇンだろ?だったら」
アーサーが言う
「あ、うん それじゃ 頂いちゃうね?ありがと アーリィー!」
アーサーが紅茶を数回に分けて飲み干し 息を吐いて言う
「美味しい!」
アールモンドが言う
「…美味いか?」
アーサーが言う
「うん!いつもとはちょっと違うけど やっぱり アーリィーが淹れてくれた紅茶は 美味しいよ!アーリィー?」
アールモンドが視線を逸らして少し不満気に言う
「…そうかよ」
アーサーが言う
「え?なあに?アーリィー?聞こえないよ?」
アールモンドが思う
(もしお前が 美味くねぇって 言ってくれたなら…)
アールモンドが言う
「…ンでもねぇ」
アールモンドが思う
(俺も… 言えたのに)
アーサーが言う
「そお?アーリィー?」
アールモンドが少し考えてから アーサーへ向いて言う
「お前よ?アーサー?」
アーサーが言う
「ん?」
アーサーの携帯が着信する バイブレーションの音にアールモンドが黙る
アーサーが携帯を取り出して言う
「奉者協会からだ… アーリィー?俺 ここで出ても良い?」
アールモンドが言う
「おう」
アーサーが微笑を見せてから携帯を着信させて言う
「はい!アールモンド・レイモンド ウィ…!」
携帯からオペ子の声が響く
『アーサーさんっ!?』
アーサーが思わず遠ざけていた受話器を戻して 苦笑して言う
「は、はい アーサーです…」
オペ子が言う
『良かった…!実は今 奉者協会が大変な事に なってしまっていてですねっ!』
アーサーが疑問して言う
「え?えーっと?それが何か?」
オペ子が言う
『ソニア副会長へ電話を回しますので 詳しい事は そちらでお願いします!』
アーサーが苦笑して言う
「分かりました では お願いします!」
短い保留音の後 ソニアの声が聞こえる
『もしもし?アーサーさん?ソニアです』
アーサーが気を取り直して言う
「お疲れ様です ソニア副会長 それで?奉者協会が大変だと 聞いたのですが?」
ソニアが言う
『ええ そうなの アールモンドさんの 公開灯魔作業が放送されると同時にね?奉者協会は電話や 問い合わせメールで大騒ぎで…』
アーサーが衝撃を受け 苦笑して言う
「と言う事は その大騒ぎの原因は ひょっとして…?」
ソニアが言う
『そうなの アールモンドさんの アノ お顔の模様は 何なのか?って?』
アーサーが苦笑して言う
「やっぱり…」
アールモンドが顔を向ける
ソニアが言う
『それで もちろん私から見ても アールモンドさんのお顔にあったのは 魔証印… それも 雷の魔証印だと言う事は分かったのだけれど』
アーサーが関心して言う
「おおっ!凄いですね!?あんな遠距離からのカメラ映像で 魔証印の種類まで見分けられるだなんて!」
ソニアが軽く笑って言う
『うふふ… ありがとう?でも 元々 そのアールモンドさんが 雷属性のウィザード様だから そうなんじゃないかな~?ってそんな目で見た事も事実だけれど… それはそうと 元々魔証印の事は 隠している訳では無くても 奉者協会では余り表には記していない事だったから』
アーサーが言う
「魔証印は ウィザードや魔力者にとっては 弱点と言う事でも ありますからね?」
ソニアが言う
『そうね… だけど ここまで騒ぎが大きくなってしまったからには 今度は隠そうとする方が 返って良くないんじゃないかって?それに このままでは騒ぎも収まらないだろうって事で 今日の夕方の報告会見の後に インタビュー方式の会見を開く事になったの …それで アーサーさん?』
アーサーが言う
「はい!その会見に 俺も 同席する様にと言う事ですよね?」
アールモンドが反応する
ソニアが言う
『話が早くて助かるわ お願い出来るかしら?』
アーサーが言う
「もちろんです!俺はアーリィーの奉者ですから!」
ソニアが言う
『良かった… それじゃ事前に 私も詳しい経緯を聞かせてもらいたいから 会見は4時からではあるけれど 出来るだけ早い内に 奉者協会の方へ来て貰えるかしら?』
アーサーが言う
「はい!今直ぐに向かいますので!時間は…」
アーサーが時計を確認して言う
「30分掛かるとして… 3時過ぎ位には着けると思います」
アーサーが立ち上がる
ソニアが言う
『3時過ぎね?…分かったわ それなら何とか間に合うと…』
アールモンドが言う
「俺も行く」
アーサーが一瞬驚いて言う
「え?けど アーリィー?」
アールモンドが立ち上がり 出入り口へ向かいながら言う
「俺に関する事だ それにお前が行く… だったら俺も行くだろ?」
アーサーが言う
「でも 相手はマスコミや普通の人で その相手をするのは 俺の仕事だし?それに アーリィーは」
アールモンドが言う
「それに 俺が行くなら 奉者協会までだって一瞬だぜ?急いでるンだろ?」
アールモンドが出入り口へ向かう
アーサーが呆気に取られた状態から微笑して言う
「うん アーリィー!一緒に行こう!…では ソニアさん アーリィーと一緒に 今すぐ行きます!」
ソニアが笑って言う
『ええ 待ってるわ?』
アーサーが通話を切り アールモンドの下へ走って向かい 手早く法衣と帽子を着せて 出入り口のドアを開ける アールモンドがドアを出て行く
奉者協会 会長室
ソニアが言う
「そう… それでは…」
ソニアがアーサーを見てから言う
「夜 遅い時間に アールモンドさんの奉者になりたいと アーサーさんの下へ懇願して来た その奉者の子には その奉者がお仕えしているウィザードが既に居て そちらのウィザードがアーサーさんへ近付いてしまった事で アーサーさんが失神してしまった…」
アーサーが苦笑して言う
「はい…」
ソニアがアールモンドを見て言う
「そして それに気付いたアールモンドさんが 別室から アーサーさんの下へ駆け付け 即座にアーサーさんへ魔力供給を行った事で アーサーさんは助かって… けれど アールモンドさんはその時に 法魔帯を巻いて居なかった為に 魔証印が焼き広がってしまった… と?これで正しいかしら?」
アールモンドが言う
「おう 経緯は 間違ってねぇよ」
アールモンドが思う
(大分 端折ったけどな?ま、それで片付くンなら わざわざ…)
ソニアが言う
「では 具体的に その奉者の子とウィザードの名前は?」
アールモンドが衝撃を受け思う
(ってっ!?やっぱそこは 見逃されねぇか… けどな?ソイツを話すとなると コッチにも色々と問題が…)
アールモンドが横目にアーサーを見る
アーサーが言う
「彼らとは お友達になったので 名前の公示は控えさせて頂きます どちらにしろ 結果は変わりませんですし?」
ソニアが言う
「そうね… それは確かに そうなのだけど こちらとしても 奉者協会の副会長として 聞いて置きたいと思うの… どうかしら?」
アーサーが言う
「彼らの失敗で 大事は起きてしまいましたが 結果として その彼らの協力がなければ 俺もアーリィーも 今 ここには居ないと思います ですので その彼らと自分らの意志を汲んで頂ければと」
ソニアが一瞬呆気に取られた後 困ったように苦笑して言う
「そう… それは… 分からないでは ないのだけどね…?」
アイザックが言う
「ソニア もう良いだろう」
ソニアがアイザックへ向く
アイザックが言う
「アールモンド卿の奉者がそうと言っているのだ つまり 彼の言葉は 彼の仕えるウィザード アールモンド卿の言葉でもある」
ソニアが呆気に取られてから苦笑して言う
「…分かりました ごめんなさい?アーサーさん?」
アーサーが微笑して言う
「いいえ」
アールモンドが言う
「で?その会見って奴には 先輩も居るンだろ?だったら 先輩が今みてぇに言ってくれりゃ それで済ンじまうンじゃねぇのかよ?」
アイザックが言う
「会見は日々の報告会見の場にて その流れのままに行われる事もあり 確かに 私もその場には居るが 今回の件に関しては 私は言及するつもりはない」
アールモンドが不満げに言う
「あぁ?…ンだよ?どおせ居ンなら 良いじゃねぇか?」
アイザックが言う
「何故 私が お前たちの問題へ 発言をしなければならない?」
アールモンドが衝撃を受けて言う
「ぬっ!?うぐぐぐっ」
アーサーが苦笑する
アールモンドが言う
「そりゃっ そぉだけどよぉ…っ」
アーサーが苦笑して言う
「大丈夫だよ アーリィー?俺 一人でも 何とかするから?」
アールモンドが言う
「けどよっ?」
ソニアが微笑して言う
「会見では 私も発言をするから 一緒に頑張りましょう?アーサーさん?」
アーサーが微笑して言う
「はい!宜しくお願いします!ソニア副会長!」
アールモンドがプイと顔を背けて言う
「フン…!会長の方は役に立たねぇみてぇだからな?俺からもよろしく頼むぜ?ソニア副会長?」
アイザックが衝撃を受け沈黙する
ソニアが微笑して言う
「あら?アールモンド ウィザード様にまで 頼まれてしまっては どうしましょう?貴方?」
アイザックが言う
「君の勝手にすれば良いだろう?」
ソニアが言う
「あらあら…?」
アーサーが微笑する アールモンドがフンと鼻を鳴らす アイザックが沈黙している
会見室
マスコミたちの前でソニアが定時報告を行っている
「…と、本日の灯魔作業は全て 予定通り終了致しました 明日の予定は こちらの通りとなります 以上で本日のご報告は終了させて頂きます では…」
奉者協会 会長室
TVにソニアの姿が映っていて言う
『…ここからは 本日のご報告にも御座いました フェフェレ灯魔台神館にて 公開灯魔作業を行われた アールモンド・レイモンド ウィザード様へ 本日実に多くの方々から お問い合わせを頂きました為 特別に お時間を頂戴し 会見を続けさせて頂きます』
マスコミたちが反応して一斉にフラッシュが焚かれる アールモンドがTVを見ていて視線を強める
会見室
ソニアが手を握り 言葉を続ける
「お問い合わせへのご返答 並びに この場にお越しの皆さまからの ご質問にお応えするにあたりまして 先に 私の他にもう一人 紹介をさせて頂きます」
ソニアが顔を向ける 会場の袖からアーサーがやって来て ソニアの横に立って言う
「アールモンド・レイモンド ウィザード様の奉者 アーサー・スペイサーです」
アーサーが軽く礼をする 一斉にフラッシュが焚かれる
ソニアが握っていた手を緩め少しホッとした様子で言う
「ご質問の内容に応じまして アーサー奉者からも 返答をさせて頂きます …では 始めに」
ソニアが原稿を確認してから言う
「お問い合わせの内 一番多くのご質問を頂きました 本日灯魔作業へ向かわれた アールモンド・レイモンド ウィザード様の お顔に見られた 模様の様な物は?…と言うご質問ですが そちらは…」
ソニアの横の席で アイザックが目を閉じて沈黙している
ソニアが続けて言う
「魔証印と呼ばれるものであり ウィザード様はもちろん 魔法を扱う者の身体へ印されているものです」
マスコミたちが乗り出し フラッシュが焚かれる
ソニアが原稿を確認して言う
「…但し 通常の場合は 衣服やそれらに覆われる箇所へ施す為 人々の目には触れる事も無く 話題にも上がらないものですが 本日アールモンド・レイモンド ウィザード様の お顔に見られましたものは そちらであって相違御座いません 」
ソニアが原稿から視線を上げて言う
「奉者協会からの正式発表は以上となります ここからは こちらへお越しの皆様からの ご質問を頂戴し そちらへお答えする形式を取らせて頂こうと思いますが 何方か…?」
マスコミたちがこぞって挙手をする ソニアが一瞬呆気に取られてから 気を落ち着かせて言う
「…では …そちらの方から?」
最前列に居た記者が言う
「その魔証印と呼ばれるものは 魔法を使う方には 全員にあると言う事で よろしいでしょうかっ?」
ソニアが言う
「その様に お考えを頂ければと 思います」
別の記者が言う
「通常は衣服の下にあると言う事でしたが 何故 アールモンド様には お顔にあったのでしょうか?」
ソニアが言う
「そちらは…」
ソニアが困って視線を泳がせる
アーサーが言う
「発言を失礼致します」
皆の視線がアーサーへ向く アーサーが言う
「魔証印についてのご説明は ソニア副会長から頂きました通りですが 付け加えまして 魔証印は 魔法を扱う事で 更に深く広くへと広がってしまう物です ですので 通常はそちらを押さえる為に 魔法を扱う前に そちらへの対処を行います」
記者が1人手を上げて言う
「では もしや!?」
アーサーが言う
「はい アールモンド様の お顔の魔証印は そちらの対処を行わない状態で 魔法を使用したが為に お顔まで 焼き広がってしまったものです」
マスコミたちがどよめく ソニアがハラハラする 記者たちが手を上げてソニアを見る
ソニアがハッとして言う
「では… そちらの?」
ソニアの視線を向け 記者が言う
「魔法を扱う為の対処を行わない状態で 魔法を使用したと言うのは アールモンド様 御自身のご判断で 行ったと言う事でしょうか!?魔証印を広げる為に!?」
アーサーが言う
「対処を行わない状態で 魔法を使用した その事自体は アールモンド様のご判断ではありましたが 魔証印を広げる為に等と言う理由では 決して有りませんっ 魔証印は 医学的に言うのであれば 熱傷レベルⅡの広範囲熱傷です 命を落とす危険もありますっ」
マスコミたちがどよめく ソニアがハラハラする 記者たちが手を上げてソニアを見る ソニアがハッとして言う
「で、では… そちらの?」
ソニアが視線を向け 記者が言う
「では具体的にっ!?それ程の危険を冒してまで 魔証印への対処を行わない状態で 魔法を使用した その理由はっ!?」
アーサーが言う
「それはっ」
ソニアがハッとして言う
「そちらはっ!」
皆の視線がソニアへ向く
ソニアが声を押さえて静かに言う
「奉者協会では ウィザード様 及び その他個人の プライベートに関します事は 公表は控えさせて頂居ておりますので そちらのご質問は控えて頂きたいと…っ」
マスコミたちがざわ付く アーサーが口を閉ざす
ソニアが視線を泳がせる 挙手がされ ソニアが言う
「はい、ではそちらの…っ」
挙手していた人物が言う
「魔証印と言われる物は 魔法を扱う為の物と言う事の様ですが それは言い換えれば 人々が神様から与えられた力と言う事になりますよね?そして その力は正しく扱うのであれば 先程アーサー奉者が仰った様な危険も無いと?」
ソニアが言う
「はい そうですね そちらの御解釈で宜しいかと?」
挙手していた人物が言う
「と、言う事は この度アールモンド ウィザード様の魔証印が 広がってしまう様な事態に 会われたと言う事は 魔法を正しく扱わなかった と言う事ではないでしょうか!?」
マスコミたちがざわ付く アーサーが視線を強める
ソニアが困惑しつつ言う
「あの… 申し訳ございません ご質問の意図が少々… 魔証印は 魔法を扱う際の対処を 行ってさえいれば…」
挙手していた人物が言う
「そちらの 魔法を扱う際の対処とは?アールモンド ウィザード様は 神様の御意志に反して魔法を扱った為に 魔証印が悪化すると言う 天罰を受けられたのではないですか!?」
アーサーが顔を上げ反論の口を開こうとするが その前に ソニアが言う
「魔法を扱う際の対処に関する詳細は 申し訳御座いませんが 公表は伏せさせて頂きます しかし その上に置きましても アールモンド ウィザード様が 神様の御意志に反するなどと言う事は…っ」
挙手していた人物が言う
「神様の御意志とは言わずとも!本来使うべきでは無い時に 魔法を扱ったと言う事では無いのですか!?ウィザード様は本来 世界を救う為に魔法を使われますが それを私利私欲に扱ったとか!」
ソニアが困って言う
「その様な事は…っ」
アーサーが怒りを押し殺して言う
「アールモンド・レイモンド ウィザード様が この度 魔力による熱傷の悪化を負われたのはっ ご自身への対処を行う時間を省き 他者の人命救助を優先した事が原因ですっ!」
ソニアがハッとする ほぼ同時に 沢山のフラッシュが焚かれ マスコミたちが押し寄せて言う
「人命救助を行ったとはっ!?」 「具体的にはっ!?」 「それは 何時!?どちらで!?」
アーサーが言う
「…っ 個人情報が含まれてしまう為 詳細はお伝え出来ませんが アールモンド様は 先程から申し上げております様に その時は魔法を扱うのに相応しい状態では ありませんでした しかし ご自身の目前で失われようとしていた命をっ それを救う為に魔法を使い その者を救われたのですっ」
マスコミたちが言う
「ではっ ウィザード様の魔法は 人の命を救う事が出来るとっ!?」
アーサーが言う
「…その者の状態にもよります 皆様も以前の内に 他のウィザード様が 銃弾に倒れた女性の救助を行われた事を ご存じであると思われます!」
皆が反応して アイザックへカメラが向き フラッシュが焚かれる
アイザックは沈黙している
「…っ」
アーサーが言う
「そちらの時と同様に アールモンド・レイモンド ウィザード様も 目の前で起きた唐突な出来事へ対し ご自身への被害を顧みず 魔法を用いて その者の命を救われたのですっ!ですので…っ 例えそれがっ!魔力者共存法に置かれる 魔法による医療行為の禁止等の法律に抵触しようとっ」
アーサーが挙手していた人物を見て言う
「神様から与えられた力の横暴だと 罵られようともっ!私はっ 人としてっ 他者の命を守るべく 御自身が追求された力を 躊躇なく用いる事が出来る ウィザード様を!崇敬し!信奉していますっ!」
マスコミたちが圧倒され フラッシュが焚かれる
ソニアが呆気に取られていた状態から カメラ前のスタッフの合図に ハッと気を取り直して言う
「では お時間となりました為…っ」
奉者協会 会長室
TVにソニアが映っていて言う
『本日のご報告会見は終了とさせて頂きます …奉者協会は これからも 人々とこの世界をお守り頂く ウィザード様へお力添えを致すべく 尽力して参ります 本日もご視聴を有難う御座いました それでは 失礼いたします』
ソニアが礼をして放送が終了する
TVを見ていたアールモンドが沈黙していて振り向く ドアが開き アーサーが入って来て顔を上げ アールモンドの姿に表情を明るめて言う
「アーリィーっ!」
アーサーがアールモンドの下まで飛んで来て抱き付く 続いてソニアとアイザックが入室して来る
ソニアが微笑んで言う
「あらあら?」
アーサーがアールモンドに頬擦りして言う
「アーリィー 見ててくれた!?俺 ちゃんと出来てたかなぁ?ねぇ?アーリィー?」
ソニアが言う
「うふふ… ”崇敬し 信奉している” ウィザード様に 随分と甘えてしまって?さっきまでのアーサーさんは 何処へ飛んで行ってしまったのかしら?」
アイザックが沈黙している
アーサーが上目遣いにアールモンドの顔を見上げる
アールモンドが正面を向いたまま言う
「ふん…?まぁ… 良かったンじゃねぇの?」
アーサーが反応して言う
「良かった!?それって アーリィーが 俺を褒めてくれてるって事かなあ?アーリィー!?」
ソニアが微笑する
アールモンドが正面を向いたまま言う
「ふん…っ まぁ 良かったンじゃねぇの?」
ソニアが呆気に取られる
アーサーが衝撃を受け言う
「えっ!?それって?…アーリィー 褒めてくれてるのぉ!?それともっ!?」
ソニアが笑って言う
「うふふっ 本当に お2人は仲が良…」
アーサーが言う
「…怒ってるの?アーリィー…?」
ソニアが笑いを収め呆気に取られる
アーサーが困って言う
「俺 何か アーリィーの気に入らない事 言っちゃったかなぁ?ねぇ?アーリィー?」
アールモンドが顔を逸らす
アーサーが言う
「それなら?…ごめーん アーリィー?俺 謝るから 許して?…ねぇ?アーリィー?アーリィー?」
ソニアが見詰める先 アールモンドが沈黙している アーサーが表情を落としてシュンとする
ソニアが困って言う
「アールモンドさん?私が聞いていた限り アーサーさんは何も悪い事は言ってはいないわ?むしろ…?」
ソニアがアールモンドの表情を伺う アールモンドは沈黙している
ソニアが苦笑して言う
「私の方が アーサーさんの発言に 助けられてしまう位で…?」
アーサーが振り返って言う
「ソニア副会長っ!」
ソニアが困って言う
「アーサーさん…っ でも…」
アーサーがソニアへ縋る目で言う
「もっと言って下さいっ!是非っ!?」
ソニアが衝撃を受け 苦笑して言う
「えっ!?あ… は、はいっ?では えっと…?」
ドアがノックされ ソニアが気付いて言う
「はい?」
ドアが開かれ 職員が言う
「ソニア副会長 暫定ですが 先ほどの会見へ対する 世論が分かりましたので お知らせに参ったのですが…?後ほどにした方が?」
ソニアが一度アールモンドとアーサーを見てから言う
「…今聞かせて貰うわ?ちょっと失礼します」
ソニアが部屋を出て行く アイザックがソニアを視線で見送ってから アーサーたちへ向ける
アールモンドが言う
「世論… か…」
アーサーが言う
「アーリィー?俺…」
アールモンドが言う
「相変わらず お前って奴は まるで息をする様に 嘘を吐くよな?アーサー」
アイザックが反応する
アールモンドがアーサーを見て言う
「お前は 他人を騙す事に 何の罪悪感もねぇのかよ?」
アーサーが反応して言う
「そんな?他人を騙す事への罪悪感なんて そんなの… ある筈がないじゃない?」
アイザックが僅かに驚く
アールモンドが言う
「ふん… だろうな?そもそも お前は… お前の全てが偽りなんだ 今更 他の誰に対して嘘を言った所で 何も感じねぇンだろう?」
アーサーが言う
「もちろんだよ アーリィー?俺 何も感じないよ?だって 必要ないじゃない?俺にとっては アーリィーに良い風が吹く様に出来れば 他はどうでも良いもの?それこそ 当然じゃない?アーリィー?」
アーサーが微笑してアールモンドを見詰める
アールモンドが視線を逸らして言う
「俺は お前のそう言う所が気に入らねぇ けど 言った所で お前は変わらねぇ事も知ってっから 今更それは言わねぇし 怒りもしねぇよ?」
アーサーが疑問して言う
「うん?それなら?」
アールモンドが続けて言う
「…けどな?その噓は お前自身までにしろ 俺自身の事まで 言われるのは御免だ」
アーサーが疑問して言う
「え?それはもちろん?俺 アーリィーの事で 嘘を言ったりはしないよ?アーリィー?」
アールモンドが言う
「なら…っ!」
ドアが開き ソニアが入って来て 室内の雰囲気に一瞬躊躇してから言う
「…っ?ごめんなさい?お邪魔をしてしまったかしら?先ほどの会見に対する 世論の反応なのだけど?」
ソニアが皆の様子を見てから言う
「概ね良好 少なくとも 明日以降 予定されている アールモンドさんの公開灯魔作業は 予定通り 行って問題は無いと言う事になったわ?それに どちらかと言えば」
ソニアがアールモンドを見て微笑して言う
「自身へ対する被害さえを顧みず 人命救助の為に魔法を使ったと言う アールモンド ウィザード様へ 世論は味方をしているみたいよ?それに そのウィザード様へ対する 全幅の奉公の在り方として アーサー奉者様の会見の様子にも 感服したって?」
ソニアがアーサーへ向いて微笑する
アーサーが微笑してアールモンドへ向いて言う
「良かったね!アーリィー!皆 アーリィーの事…っ!」
アールモンドが言う
「俺はっ!」
皆がアールモンドを見る
アールモンドが言う
「あン時は… 相手がお前だったから出来たンだ… 他の… 顔も知らねぇ どっかの誰かが 目の前で死に掛けて居た所でっ 全身の魔証印が焼かれる あの苦しみに耐えてまで 助けてやれる自信はねぇよっ!」
ソニアが気付く アールモンドが続けて言う
「なのにお前はっ!!」
アールモンドがアーサーを睨み付けて言う
「世界中の連中へ対して 何処の誰だろうと 俺はソイツを命懸けで助けるみてぇに 言いやがってっ!ンな嘘で得られた世論なんざっ!」
アーサーが微笑して言う
「その事なら 大丈夫だよ アーリィー?」
アールモンドが言う
「何が大丈夫だ アーサーっ!俺はお前と違って ンな嘘を吐いてまで 良い風なンかに吹かれたか ねぇンだよっ!」
アーサーが言う
「嘘じゃないよ アーリィー?だって アーリィーは 間違いなく やるもの?」
アールモンドが言う
「ああっ!?」
アーサーが言う
「アーリィーは やるよ?目の前で死に掛けている ソイツが何処の誰だろうと 命懸けで助ける!俺 知ってるから?」
アールモンドが呆気に取らる
「っ!?」
アーサーが言う
「だから俺は アーリィーの事で 嘘なんて言ってないんだよ 安心して?」
アールモンドが沈黙してから言う
「…っ 知らねぇよっ!」
アーサーが笑顔で言う
「またまた?アーリィーってば 照れちゃって?」
アールモンドが怒りを押し殺して言う
「照れてねぇ…っ」
ソニアが呆気に取られていた状態から微笑み笑う
「うふふっ」
アイザックが沈黙している
窓の外 アールモンドとアーサーが奉者協会から出て来て 程良い所で立ち止まり アールモンドが杖を掲げて 2人が風に消える
その様子を見て居たソニアが微笑して言う
「本当に あの2人は仲の良いコンビで… アーサーさんはもちろんだけど やっぱり アールモンドさんが ウィザードとして… 人としての責任を持っているからこそ そのアールモンドさんを アーサーさんは信頼しているのでしょうね?それこそ 崇敬や信奉と言う言葉が出る位に…?」
アイザックが言う
「…ソニア」
ソニアが疑問して言う
「はい?貴方?」
アイザックが言う
「奉者協会の名簿にある 奉者の情報を持って来る様 伝えてくれ」
ソニアが言う
「奉者の情報を?はい… では どちらの…?」
アイザックが言う
「アーサー・スペイサーだ」
ソニアが言う
「え…?」
アイザックが言う
「彼の情報が知りたい アーサー・スペイサーのリストを 持って来る様にと 伝えてくれ」
ソニアが困惑しつつ言う
「は、はい…」
ソニアが受話器を上げボタンを押して耳に当て アイザックの様子を伺う アイザックは窓の外を見詰めている ソニアが心配する
レイモンド邸 エントランス前
アールモンドとアーサーが風に現れる
アーサーが言う
「お疲れ様!アーリィー!?」
アールモンドが言う
「…俺は何もしてねぇよ 会見に出たのはお前だけだ」
アーサーが苦笑して言う
「それはそうだけど?」
アールモンドが思う
(だから その言葉を言うべきなのは俺で… けど それを言っちまったら…)
アーサーが気を取り直して言う
「けど!アーリィーも 一緒に奉者協会に行って 会見には出なくても 別室で応援していてくれたじゃなあい?お屋敷と奉者協会への移動魔法も やってくれたから 俺 助かったし!?だから やっぱり お疲れ様!それから 有難う!アーリィー!」
アールモンドが思う
(俺が奉者協会へ行ったのは その会見に 俺が関係していたからだ けど 俺はウィザードだから 下々の人間たちの会見なンかに 応じる必要はねぇって事で 代わりに俺の奉者である アーサーが出た… だったら?)
アールモンドが沈黙している
「…」
アーサーが苦笑して言う
「あの… アーリィー?ひょっとして… まだ 怒ってるの?それなら 俺…」
アールモンドが思う
(理由はどうあれ アーサーは俺を庇って アイツなりに尽力して "世論"を 俺へ良い様に向けた… それがアイツの仕事で アーサーは… 奉者として 俺の世話役として やるべきことをやった… だったら…)
アーサーが言う
「俺 何とか ソニア副会長や 奉者協会へお願いして さっきの会見で言った事は 俺の独断だったって ちゃんと言うよ アーリィー?それでアーリィーは 何も言っていないって 俺の勝手な発言だったって 責任取るからっ だから…っ」
アールモンドが言う
「…もう良い」
アーサーが言う
「けどっ?」
アールモンドが言う
「良いって言ってンだろっ」
アールモンドが歩き出す アーサーがあっと追い駆ける
レイモンド邸 通路
アールモンドが歩きながら思う
(そもそも 発言内容は兎も角 俺の代わりに アーサーが会見に出た事は間違いねぇンだ だったら せめて ”お疲れ”と言うのは 俺であるべきなンじゃねぇのか?礼を言うのだって…?)
アールモンドが立ち止まる アーサーがドアを開ける
アールモンドの部屋
アールモンドが入室して アーサーがアールモンドの帽子と法衣を外す
アールモンドがソファへ向かいながら思う
(…なら とりあえず 先ずは お疲れ と言うか?それから… 礼も?けど 発言に関しては 許容出来ねぇと伝えて …訂正なンてのは 今更 させるつもりもねぇが 今後は 勝手な発言は止めろと 釘を刺して置かねぇと?じゃねぇと…)
アールモンドがソファへ座り アーサーへ顔を向けようとして気付く テーブルにティーセットが置かれたままである それへ手を掛けたアーサーが言う
「それじゃ 俺 これを 片付けて来るね?アーリィーは…」
アーサーがアールモンドの顔を見て微笑して言う
「夕食にするなら 5時まで後15分位だから ゆっくり休んで居たら良いんじゃなあい?それとも お風呂に入りたかったら すぐに用意するけど どうしよっか?」
アールモンドが言う
「…ああ そうだな… なら…」
アールモンドが思う
(…って?そうじゃねぇっ!)
アールモンドがアーサーを見る
アーサーが言う
「あ?お風呂にする アーリィー?それなら…」
アーサーがティーセットをテーブルに戻そうとする
アールモンドがハッとして言う
「…いや 飯まで待つ …けど」
アーサーが一瞬疑問してから微笑して言う
「そお?じゃ…!」
アーサーが戻そうとしていたティーセットを持ったまま立ち去ろうとする
アールモンドが言う
「お、お前こそっ …休めば良いだろ?」
アーサーが言う
「え?」
アールモンドが言う
「ソイツを片付けるのなんか 家の奴らにやらせれば良い… お前が持って行った所で どおせ洗うのはアイツらだろ?」
アーサーが苦笑して言う
「うん 俺が洗うと 割っちゃうかもしれないからね?だから 俺は 給湯室まで持って行くだけだから それ位なら大丈夫だよ?アーリィー?」
アールモンドが言う
「そおじゃなくて…っ いや、だから… …お前も …疲れてンだろ?アーサー?」
アールモンドが思う
(そうだ 俺なンかよか お前の方が よっぽど疲れてるだろ?…いや、疲れている筈だ 画面越しでも分かった アーサーは 元々 あンな生優しい事を言う奴じゃねぇ だから本心じゃ 連中の言葉にキレそうになる自分を 押さえていた… アーサーは 例え 本心であろうと 俺の味方であるから)
アーサーが苦笑して言う
「うん 俺 凄く疲れちゃったよ アーリィー だから アーリィーが一緒に行ってくれたのは 本当に助かったんだ?有難う アーリィー!それじゃ コレ片付けて来ちゃうね?」
アーサーが向かおうとする
アールモンドが衝撃を受けて思う
(いやっ!?だから…っ!?)
アールモンドが言う
「…だっ だったらっ!お前も休めよっ!?アーサーっ!?ンなモン片付けてねぇでっ!?」
アールモンドがアーサーの持つティーセットを見て思う
(そう言や 今日は お前に茶を振る舞ってねぇだろ?…いや?淹れはしたが 肝心の魔法は掛けちゃいなかった… ウィザードが奉者へ… 従者へ 自分へ捧げられた魔力を 還元してやる為の ソイツを …だから)
アーサーが微笑して言う
「有難う アーリィー けど 大丈夫!俺 疲れはしたけど 精神的なものだし?それに これを持って行くのは 給湯室へ行く その ついでだから?」
アールモンドが言う
「給湯室へ行く…?」
アールモンドが思う
(なら?元々 給湯室へ行く用があるって事か?給湯室へ行く用って… 何だ?そもそも 給湯室って事は… …やっぱ 茶でも飲もうと?だったら…っ)
アーサーが言う
「ちょっと お塩を貰おうかと思って?」
アールモンドが疑問して言う
「は?…塩?」
アールモンドが思う
(塩なんて…?一体 何に使うンだ?)
アーサーが言う
「塩水でうがいをするとね?喉の痛みが取れるんだよ アーリィー!魔法みたいでしょ?昔 父さんに教えてもらったんだ?えへへっ!それじゃ すぐ戻って来るから!」
アーサーが言い終えると共にドアを開けて出て行く
アールモンドが呆気に取られていた状態からハッとして言う
「…あっ?お、おいっ アーサー?」
アールモンドが呆気に取られて思う
(…は?アイツ… …何言ってンだ?塩水でうがいをすると 喉の痛みが取れるって?魔法みたいだって?…ンなのは)
アールモンドが言う
「魔法が使えねぇ奴らが 言う事だろ?」
通路
アーサーがティーセットを手に笑顔で歩いている
アールモンドの部屋
アールモンドがソファに座って居て思う
(…どう言う事だ?アイツは… アーサーは俺の奉者だ 従者でもある… なのにアイツは 何で 俺に言わねぇンだ?…喉が痛ぇなら 「魔法で治してくれ」って?)
アールモンドが窓の外を見る 夕日が傾いている
アールモンドが思う
(まさか?本当に?アイツは 俺を ウィザードとして見ていて 崇敬だか信奉だのをして 敬っているとでも言うのか?あの言葉は 嘘じゃ無かったって事か!?だとしたら…っ)
アールモンドが立ち上がって言う
「そんなのは オカシイだろっ!?」
アールモンドが部屋を出て行こうとして 途中で手を向ける 杖が魔法で呼び寄せられ アールモンドの手に握られる
給湯室
アールモンドがやって来て言う
「おい アーサー!…あ?」
アールモンドが周囲を見渡して言う
「居ねぇ…?」
アールモンドがシンクに置かれているティーセットに気付いて思う
(ティーセットを持ってくのは ついでだって言ってたな?)
アールモンドが視線を向けた先 塩と書かれているケースに動かした跡が見れる
アールモンドが思う
(塩も手に入れた… なら…?)
アールモンドが少し考えてから首をかしげる
「…?アイツ 何処へ行ったンだ?」
アールモンドが周囲を見渡して思う
(アーサーの魔力は見えねぇ… だが アイツの命の光なら)
アールモンドが気付いて言う
「…そこかっ!?何ンで そンな方に?」
アールモンドが向かう
洗面所
アーサーが塩水を含んでうがいをし始めた所に アールモンドが現れて言う
「おい アーサー?」
アーサーが驚き咳をしながら言う
「うっ!?ゲホッ!?ゴホッ !?ゲホゲホッ!!ア、アーリィー!?ゲホッ!どうしてっ!?ゲホッ!ゴホッ!こんな所に!?ゲホゲホッ!」
アールモンドが言う
「…大丈夫かよ?」
アーサーが息を切らしてから苦笑して言う
「はぁはぁ… ケホッ… う、うん 俺は大丈夫だけど アーリィーこそ?どうかしたの?こんな所に来るなんて?」
アールモンドが室内を見渡して言う
「…そういや こンな部屋もあったな?ガキの頃は 何の部屋か分かんなかったけどよ?」
アーサーが言う
「うん ここのレストルームは広くて 奥にはシャワールームもあるんだよ?けど アーリィーには関係ないし 使う必要も無いけどね?あははっ!」
アールモンドが言う
「ふーん?つまりは 客用の手洗い場って事か?」
アーサーが言う
「どちらかと言うと そのお客様の 使いの人が使うって感じかなぁ?それかレイモンド家の 使用人が使う感じかも?どちらにしても 不思議な場所にあるなって 思っていたんだよね?お屋敷の御主人様のお部屋である アーリィーのお部屋に とっても近いんだもの?」
アールモンドが言う
「ふーん?」
アールモンドが思う
(…ま?ンな事は 俺にはどうでも良いンだが)
アールモンドがアーサーを見る アーサーが疑問してから思い付き 苦笑して言う
「けど お陰で 俺には丁度良くって!勝手に使わせて貰っちゃってるんだけどね?えへへっ?」
アールモンドが言う
「…そおかよ まぁ 使えるモンは 勝手に使えば良い …ンな事よかよ?」
アールモンドがアーサーの顔を見上げる
アーサーが言う
「あ、そうだよね?なら アーリィーは?どうしてここに?」
アールモンドが思う
(…ンなの聞く必要があンのか?そいつは もちろんっ)
アールモンドが言う
「お前に用があって来たに 決まってンだろ?」
アーサーが衝撃を受け言う
「えっ!?俺に用があってっ!?アーリィーが?その為に アーリィーが ここまで来たのっ!?」
アールモンドが不満げに言う
「…だったら ンだよっ?待つよか 向かった方が 早ぇだろ?それに…っ」
アールモンドが思う
(どおせなら 塩水の魔法モドキを やらせる前にとも思ったンだが… …ソイツは間に合わなかったから 言わねぇで…)
アールモンドが言う
「…急ごうと思ったンだ」
アーサーが言う
「急ぎの用事?だったら アーリィー 部屋にあるベルで 呼んでくれたら良かったのに?」
アールモンドが衝撃を受ける
アーサーが言う
「そしたら俺 何を置いたって アーリィーの所へ 直ぐに向かうよ?」
アールモンドが視線を逸らして言う
「そ、そいつは…っ」
アールモンドが思う
(そお言うや… ンなモンも…)
アールモンドが言う
「その…っ き、聞こえねぇだろっ!?ここじゃっ!?」
アーサーが言う
「え?そんな事は無いと思うよ?俺 ここで聞いた事は無いけれど あのベルの音は メイドさんたちの控室まで届くのだから?」
アールモンドが衝撃を受ける
アーサーが笑顔で言う
「それよりずっと近い ココなら?…あっ!?アーリィーっ?」
アールモンドが立ち去って行く アーサーが慌てて追い駆ける
アールモンドが思う
(言われてみりゃそうだ …らしくねぇっ クソ…ッ カッコ悪ぃ)
アーサーが言う
「待って アーリィー?ごめーん アーリィー?アーリィーは いつも使う側だから 何処まで届くかなんて 知らないんだよね?だから…っ」
アールモンドが思う
(冷静に考えりゃ分かる事だ あのベルを鳴らせば メイド共が来る… って事は 俺の部屋に近い さっきの場所は勿論 メイドの控室との間にある 給湯室へだって聞こえる…っ)
アールモンドがドアの開かれたままの部屋へ入る
アーサーが追って入ってドアを閉め 振り返りながら言う
「それに!アーリィーは 急いでたんだよね?だからっ!?…えっと?それで?アーリィーは 何を そんなに急いで…? っ!?」
アールモンドがアーサーの首に手を当てる アーサーが驚いて言葉を止める
アールモンドが言う
「もう良いから 少し黙ってろ」
アールモンドが意識を集中させると アールモンドの目に現実の視野に被さる様に 赤い光が見える
アーサーが疑問して言う
「ア… アーリィー?」
アールモンドが思う
(…なるほど 痛ぇ筈だ こんなに真っ赤な光は… 俺は医者でも何でもねぇから 何がどうなって こんな風になっちまうのかは 分からねぇが)
アールモンドがアーサーの身体を見て思う
(喉の外には… 赤い光は見えねぇから 他の要因はねぇ… なら やっぱり…)
アールモンドが意識を強める アールモンドの杖が光を帯びて アールモンドの手の先にある アーサーの首に淡い光が放たれる
アーサーが気付いて言う
「…ぁっ」
魔法の光が消え アールモンドが手を放す
アーサーが喉の様子を確かめてから 喜んで言う
「う、うんっ あー?あー?…有難う アーリィー 喉の痛みを 治してくれて!」
アールモンドが言う
「ンな当たりめぇな事に 礼なンか要らねぇよ それよか…」
アーサーが言う
「アーリィー カッコイイ!」
アールモンドが言う
「アーサー お前…」
アーサーが言う
「うん?なあに?アーリィー?」
アールモンドが言う
「その声 もう止めろ」
アーサーが驚いて言う
「…え?」
アールモンドが灯魔作業を行っている 後方にアーサーが居て 周囲の様子から非公開灯魔作業だと分かる
アールモンドが作業を終え目を開いて見上げる 灯魔台に雷が纏わり間もなくしてプラズマに変わり 灯魔台にプラズマが灯る
アールモンドが構えを解除して思う
(灯魔作業は問題ねぇ… それどころか)
アーサーが灯魔台を見上げて言う
「アーリィー?これって ひょっとして… プラズマ?」
アールモンドが灯魔台を見上げたまま言う
「ああ 特に意識したつもりは 無かったんだが」
アールモンドが法魔帯の巻かれている腕を見て思う
(雷の魔証印が濃くなった影響で 雷の魔力が高まったのか?俺自身は何時もの雷の灯魔作業と同じに やったつもりだったンだが それが勝手に…)
アーサーが笑顔で言う
「アーリィ― 凄いっ!凄いねー?ペンペン?」
アールモンドが疑問して振り返りながら言う
「ペンペンって…?なあっ!?」
アールモンドが振り返った先 アーサーの腕に ペンギンの幻獣が抱かれていて幻獣が鳴く
「ガァー?」
アーサーが笑顔で言う
「ペンペンもアーリィーの灯魔作業は 凄い!って 言ってるよ?アーリィー?」
幻獣が鳴く
「ガァー?」
アールモンドが呆れて言う
「…いや 言ってねぇよ?つーか それより…」
幻獣がアーサーの胸を突っ突いている
アールモンドが言う
「お前 食われてンぞ?アーサー?」
アーサーが疑問して言う
「え?俺が食われてるって?…あっ!?」
幻獣がアーサーの体の表面でくちばしをパクパクさせている
アーサーが慌てて言う
「あぁっ ごめんね ペンペン!?それは 俺がアーリィーから貰った大切な魔力だからっ あんまり食べないで!?ペンペンのご飯は こっちだから?」
アーサーが灯魔口へ幻獣を置く 幻獣が鳴く
「ガァー」
幻獣が灯魔口で灯魔を食べる アーサーがホッとしてから微笑して言う
「美味しい?ペンペン?」
幻獣が鳴く
「ガァー?」
アールモンドが呆れていて言う
「通じてねぇよ… それと ”ペンペン”は止めろよ アーサー?」
アーサーが衝撃を受けて言う
「駄目なのぉっ!?」
幻獣が鳴く
「ガァー」
レイモンド邸 エントランス前
アールモンドとアーサーが風に現れる
アーサーが言う
「灯魔作業 お疲れ様!アーリィー!」
アールモンドが言う
「おう」
アーサーが腕時計を見て言う
「今は… 10時半だけど?アーリィー この後はどうする?」
アールモンドが言う
「公開灯魔作業は 2時からだったよな?」
アーサーが言う
「うん!今日の公開灯魔作業は2時から!それに 今日はもちろん 公開灯魔作業は1日1回のペースに戻すって言ってたから 明日以降もそうなると思うけど?」
アールモンドが言う
「そうか なら… 今から茶にして サッサと昼寝しちまうか… その方が」
アーサーが言う
「そうだね アーリィー!そうしちゃった方が 午後の時間に余裕が持てそうだね?」
アールモンドが屋敷へ向かいながら言う
「ああ 灯魔作業は問題ねぇと 分かったからな?これで…」
アーサーがアールモンドに続き言う
「安心して眠れるね!?アーリィー?」
アールモンドが言う
「…まぁな?別に 好きでやってる訳じゃねぇが やるからには 今まで以上のモンを見せてやらなけりゃ 俺がやる意味がねぇ」
アーサーが微笑して言う
「アーリィー カッコイイ!」
アールモンドとアーサーが屋敷へ消えて行く
灯魔台神館
アーサーが舞台袖から観覧席を眺めて言う
「わぁ~ 今日も超満員!…あっ!?」
アーサーが視線を向けた先 観覧席の後方にファンたちが居て不満げにしている
アーサーが言う
「いつものファンの子たちが あんな後方に!きっと この灯魔台神館はチケット制では無くて 村の人たちを全員迎え入れる形での 入場管理をしているんだね?つまり 観覧は無料って事で!」
アーサーが振り返った先 アールモンドが沈黙していて思う
(…そう言や 忘れてたぜ 公開灯魔作業は…)
アールモンドが壁の向こうにある観覧席へ視線を向けて思う
(魔力を公開するだけじゃねぇ… それをやる ”俺自身も” 見られて…っ)
アールモンドがハッと衝撃を受け 思わず悲鳴を上げて言う
「ぬあぁあっ!?なっ!?何しやがるっ!?アーサー!?」
アールモンドが思わず頬を拭って視線を向けた先で アーサーが一瞬きょとんとしてから微笑して言う
「うん アーリィー!一応 念の為にね?今の内に 舐め足して置いた方が 良いかなぁと思って?」
アールモンドが困惑しつつ言う
「あ… あぁ…っ そ、そおだな?確かに 言われてみりゃ…?」
アールモンドが思う
(法魔帯と違って 唾液なんてもんは 今みてぇに拭っただけでも 擦り取られちまう きっと… だ、だからっ!?)
アールモンドがハッとして言う
「ンあっ!?」
アーサーがアールモンドの頬を舐め上げた状態で一瞬止まってから 軽く笑って言う
「あっははっ!アーリィー 可愛い!」
アールモンドが衝撃を受け怒って言う
「う、うるせぇえよ アーサー!可愛いとか 抜かすんじゃねぇ!それからっ やるならやるで 一声かけろってンだっ!?ビ、ビビるじゃ ねぇかっ!?」
アーサーが軽く笑って言う
「あははっ そうだね?ごめーん アーリィー?それじゃ 俺 今から アーリィーのほっぺ舐めちゃうよ~?ぺろーって?」
アーサーがアールモンドの頬を舐める
アールモンドが衝撃を受けて言う
「ひぎゃっ!?ぐ…っ うぅううう~~っ!」
アールモンドが全身に力を入れている アーサーがそれを見て軽く笑い作業を続ける
作業を終えたアーサーが言う
「はいっ お終い ちゃんと塗っといたから これで大丈夫だよ!アーリィー?」
アールモンドが止めていた息と共に力を抜いて言う
「はぁ…っ はぁ…っ はぁ… …お、おう」
アールモンドが思う
(これで 顔の魔証印が 焼かれる心配はねぇ…)
アーサーがアールモンドの顔を見て微笑する
アールモンドが思う
(いや… そもそも 俺は…)
館内放送が聞こえる
『館内へご来場の皆様へお知らせを致します…』
アールモンドが思う
(そっちの心配はして… と言うよりも 頭に無かった それよりも…)
アーサーがアールモンドの顔を見ていて疑問する
館内放送が続いている
『間もなく灯魔作業の開始時刻となりますので ご観覧をされる方は お席の方へ…』
アールモンドが視線を逸らす
アーサーが気付き微笑して言う
「ねぇ アーリィー?今日は 俺…」
館内放送が続いている
『なお 灯魔作業中のお席の移動や ご退場は…』
アーサーが続けて言う
「アーリィーが灯魔作業へ行く前に 観覧席の皆へ挨拶をしても 良いかなぁ?アーリィー?」
アールモンドが疑問して言い掛ける
「うん?何ンで…?」
館内放送が続いている
『本日は フェフェレ灯魔台神館へ お越し頂き…』
アールモンドがハッとして言う
「まさかっ お前!?何か言う気かよ アーサー?」
アーサーが微笑して言う
「俺は何も言わないよ アーリィー?ただ、折角アーリィーの灯魔作業を 応援しに来てくれた皆に 館内アナウンスのお礼だけじゃ 物足りないから?そこの舞台袖に立って ちょっとお礼をして来ようかなぁ?って それだけなんだけど 良いかなぁ アーリィー?」
アールモンドが思う
(ちょっと礼をして来るだけ… そいつはつまり)
アールモンドが言う
「…分かった …やりたきゃ 好きにしろよ?アーサー」
アーサーが微笑んで言う
「うん!ありがと アーリィー!それじゃ 俺 ちょっと行って来るから アーリィー 待っててね?」
館内放送が聞こえる
『只今 灯魔作業の開始予定時刻となりました 現時刻を持ちまして 館内の…』
アーサーが観覧者たちの前へ現れる 拍手が上がり観覧席にいるファンたちが黄色い歓声を上げている
アールモンドが思う
(いつもと違って アーサーが先に姿を見せると言う事… そいつは…)
アールモンドの視線の先 アーサーが観覧席へ向かって礼をしている 拍手が高鳴る
アールモンドが思う
(その後に出て行く ”俺を” アーサーが肯定すると言う事… つまり 俺の この顔の魔証印を アーサーも認識していると言う事実を 先に知らしめる事で アーサーは俺を連中の目から 助けようとしているんだろ …だったら)
アーサーが礼を終え舞台袖へ戻ろうとする アールモンドが顔を上げて言う
「アーサー」
アーサーが反応して顔を向ける
アールモンドが言う
「お前も そこに居ろよ」
アーサーが一瞬呆気に取られるが微笑して言う
「うん!アーリィー!」
アールモンドが舞台袖から出て行く
アールモンドの登場に 沸き上がった拍手が 疑問の声とまばらな拍手に切り替わる アールモンドは変わらぬ様子でアーサーの前を過ぎ 灯魔台へ向かい台座の前に立って いつもと同じく杖を突く その音に館内が静まる
アールモンドが灯魔作業を開始して思う
(周囲には 俺へ対する疑念の魔力… いつもとは違う空間だ… それでも)
アールモンドが横目にアーサーを見る アーサーはアールモンドの方へ向いている
アールモンドが視線を戻して思う
(その いつもと違う場所にも お前が居てくれる それなら 俺は大丈夫だ)
補助灯魔台にプラズマが灯り 観覧席の人々がどよめく
アールモンドが思う
(そうだ 他の観覧者の連中が居ようが 変わりねぇ 午前中にやった灯魔作業と同じだ 俺とお前だけが居ると思えば良い!)
周囲にプラズマの魔法が広がり 人々が歓声を上げる
アールモンドが思う
(思えば こいつらなんて薄情なモンだ 応援だか安全への祈願だか知らねぇが ちょっとした事で俺を疑いやがる… その点アイツは)
プラズマで映し出される草原からピョコっと何かが現れる 観覧者たちが興味と期待に表情を明らめる
アールモンドが思う
(俺の為なら 命さえ差し出して 当然の様に 何だってする… だから俺も あの時も つい… いつもと同じに 当然の様に言っちまった)
アールモンドが言う
『ンな脱脂綿で ちんたらやるンじゃなくて…っ 思い切って 来いっ!』
アーサーが疑問して言う
『思い切って?…えーっと?』
アールモンドが思う
(唯でさえ男同士だってぇのに 顔を舐めろだなンてな?オマケに そこには 癒えてはい様とも 一生消えねぇ深い火傷(魔証印)の痕がある… 常識で考えてたって 舐めたくなンかねぇだろう… それでもアイツは)
幻想の動物は2匹のイタチの姿を作って館内を走り回る 観覧者たちが喜んで見渡す アールモンドが視線を向けた先 アーサーは観覧者たちと同様に幻影を視線で追って楽しんでいる
アールモンドが苦笑して思う
(何の躊躇も迷いもなく それこそ"いつもと同じ"アイツのまま やって見せた …ここまで来りゃ もう 何も疑う必要はねぇ 俺はアイツを信じられる アイツは… アーサーは 俺の…っ)
幻想のイタチたちが灯魔口へ潜り込み 灯魔台にプラズマが灯る 一瞬の静寂の後 観覧席から拍手が沸き上がる アールモンドが構えを解除して杖を手に退場して行く 観覧者たちと同じく拍手をしていたアーサーが アールモンドへ微笑する
アールモンドが思う
(唯一 心から信頼出来る奴だ… もう本当に あいつの寝る部屋へ 結界を張ってやっても良いかもな?)
アールモンドがアーサーを見て思う
(今なら分かる お前なら… 俺の結界に 阻まれる事なンか ねぇって事が)
アールモンドが僅かに微笑して その表情を帽子のつばに隠す アーサーが微笑を増してから アールモンドの後方の様子に気付く アールモンドがアーサーの様子に勘付いて一度立ち止まる
皆の視線の先 灯魔口から幻獣のイタチが現れ 慌ただしく走り回り灯魔口から足を滑らせて落ちる
観覧者たちがあっと息を飲んだ瞬間 アーサーがイタチをキャッチしてホッと息を吐いて言う
「…ふぅ 危ない 危ない?」
アーサーの腕の中から イタチがひょこっと顔を出す 観覧席からワッと拍手と喝采が上がる アーサーが軽く笑い イタチを灯魔口へ置いて様子を見てから 観覧席へ向き直って礼をする 拍手が増す
アーサーが礼を終えアールモンドへ向く アールモンドが後ろ目に見ていた様子から向き直って歩き出す アーサーが微笑して もう一度観覧席へ礼をして イタチの安全を見てから アールモンドの下まで走って行き 止まない拍手の中 2人で退場する
舞台袖
アールモンドが立ち止まり振り返る 舞台袖の出入り口でアーサーが 観覧席へ礼をしてから駆け込んで来て言う
「ごめんね アーリィー お待たせ!灯魔作業 お疲れ様!」
アールモンドがアーサーの顔を見てから苦笑して言う
「おう …お前もな アーサー?」
アーサーが疑問して言う
「へ?俺が?」
アールモンドが歩き始める アーサーが追って歩きつつ言う
「アーリィーと違って 俺は何もしていないよ アーリィー?」
アールモンドが苦笑して言う
「良く言うぜ?お前は連中の相手をしてンだろ?俺には出来ねぇ事だ」
アーサーが苦笑して言う
「あぁ その事?その事だったら…」
アールモンドが言う
「俺には出来ねぇよ?あンな…」
アールモンドが思う
(薄情な連中に 頭を下げるだなんてコト…)
アーサーが微笑して言う
「アレは 俺がやりたくてやっている事だし それに 俺は嬉しいから!いくらでも出来るよ?アーリィー?」
アールモンドが言う
「ご苦労なこったな 奉者様はよ?そいつも…」
アールモンドが思う
(お前の奉者としての 仕事だもんな?だから…)
アーサーが言う
「そうだよ アーリィー?俺のウィザード様は 凄いでしょ!?って 俺 いつも 嬉しくて堪らないよ!アーリィー!?」
アールモンドが衝撃を受けて言う
「…って!?そう言う事かよ アーサー!?」
アールモンドが思う
(てっきり 奴らからの 応援やら声援へ対しての 感謝の礼だと…っ!?)
アーサーが言う
「当然じゃない アーリィー?…俺の本性知ってるでしょ?まさか その俺が?本気で観覧席の皆さんへ お礼の挨拶をしているのだと思ってた?アーリィー?」
アーサーがいつもの人懐っこい微笑から 一瞬 口角を上げた笑みを見せる
アールモンドが衝撃を受け 視線を逸らして言う
「…お、おう … …そおだったな?」
アーサーがいつもの様に 能天気な笑みを湛えて言う
「えへへ~?」
アールモンドが沈黙する
「…」
アールモンドとアーサーが去って行く
《ああ… そおだった…》
レイモンド邸 エントランス前
アールモンドとアーサーが風に現れる
アーサーが言う
「今日の灯魔作業は これでお終いだけど?この後はどうする アーリィー?時間は…」
アーサーが腕時計を見る
アールモンドが思う
(アーサーの この振る舞いは…)
アーサーが言う
「2時35分!3時のお茶には まだちょっと早いけど…?」
アールモンドが思う
(全て 紛い物だ)
アーサーがアールモンドの顔を覗き込んで言う
「どうしよっか?アーリィー?」
アールモンドが沈黙する
「…」
アーサーが疑問して言う
「アーリィー?どうかした?」
アールモンドが思う
(振舞だけじゃねぇ… 言葉も… 声すら…っ)
アーサーが暇つぶしに身体をうねらせ疑問して言う
「ア~~リィ~~?」
アールモンドがアーサーへ向いて言い掛ける
「ア…」
アーサーが疑問して言う
「うん?」
アールモンドが視線を逸らして言う
「…ンでもねぇ…」
アーサーが疑問して言う
「え?アーリィー?」
アールモンドが歩き始めて言う
「少しくれぇ早くても 茶にする…」
アーサーが疑問していた状態から微笑して言う
「うん!それじゃ そうしよっか!アーリィー!」
《そうしろと言ったのは 俺だ…》
アーサーがアールモンドを追って行く
アールモンドの部屋 前
アールモンドが到着する前に アーサーがドアを開ける
アールモンドが思う
(アーサーは 俺の世話役だ …から)
アールモンドが入室すると アーサーが追って入り ドアを閉める
アールモンドが思う
(こうやって 俺の世話をするのは アーサーの仕事で)
アーサーがアールモンドの帽子と法衣を脱がせる
アールモンドが思う
(それから 奉者でもあっから…)
アールモンドがソファへ座る その前にあるテーブルに ティーセットが置かれ それを用意したアーサーが微笑して紅茶の用意をする
アールモンドが思う
(俺に ウィザードの世話をするのも アーサーの仕事だ… けど)
アーサーがお湯を入れたティーケトルを アールモンドの前に置き アールモンドの顔を見て微笑する
アールモンドがアーサーを見て思う
(やってる事は十分だ だったら別に…)
アールモンドの脳裏に記憶が思い出される
アーサーが言う
『当然じゃない アーリィー?…俺の本性知ってるでしょ?まさか その俺が?本気で観覧席の皆さんへ お礼の挨拶をしているのだと思ってた?アーリィー?』
アーサーがいつもの人懐っこい微笑から 一瞬 口角を上げた笑みを見せる
アールモンドが思う
(その本性を 偽る必要はねぇだろ?)
アーサーが紅茶を前にウズウズしている
アールモンドが思う
(…ま、それを言ったら 俺だって)
アールモンドが言う
「…飲みてぇのか?アーサー?」
アーサーが一瞬疑問してから苦笑して言う
「あれぇ?アーリィー お茶にするって 言わなかったっけ?ごめーん アーリィー?」
アールモンドが言う
「…いや 言ったけどよ?お前は…?本当に飲みてぇのかよ?」
アールモンドが思う
(もし… ソイツも 世話役や奉者としてのモン だってぇなら…)
アーサーが微笑して言う
「もちろん!?だって 俺 アーリィーが淹れてくれる紅茶 大好きだもの?俺 いつも言ってなかったっけ?」
アールモンドが言う
「ああ 言ってたけどよ?…なら?」
アールモンドが紅茶を注ぐ アーサーが衝撃を受けて言う
「えぇ!?アーリィー?魔法はっ!?」
アールモンドが言う
「俺が淹れた紅茶が好きだ って言っただろ?」
アーサーの前にティーカップが置かれる
アーサーが苦笑して言う
「それは言ったけど…?」
アールモンドが思う
(俺が淹れた紅茶が好きなのか?俺が… いや?ただ魔力を掛けたモンが 好きなのか?もし…)
アールモンドが言う
「飲めよ?アーサー」
アーサーが言う
「うん それじゃ 頂くけど?アーリィーは?」
アールモンドが言う
「俺は良い」
アーサーが衝撃を受け言う
「そうなのっ!?」
アールモンドが言う
「俺は… …まぁ良いから お前は 飲みてぇンだろ?だったら」
アーサーが言う
「あ、うん それじゃ 頂いちゃうね?ありがと アーリィー!」
アーサーが紅茶を数回に分けて飲み干し 息を吐いて言う
「美味しい!」
アールモンドが言う
「…美味いか?」
アーサーが言う
「うん!いつもとはちょっと違うけど やっぱり アーリィーが淹れてくれた紅茶は 美味しいよ!アーリィー?」
アールモンドが視線を逸らして少し不満気に言う
「…そうかよ」
アーサーが言う
「え?なあに?アーリィー?聞こえないよ?」
アールモンドが思う
(もしお前が 美味くねぇって 言ってくれたなら…)
アールモンドが言う
「…ンでもねぇ」
アールモンドが思う
(俺も… 言えたのに)
アーサーが言う
「そお?アーリィー?」
アールモンドが少し考えてから アーサーへ向いて言う
「お前よ?アーサー?」
アーサーが言う
「ん?」
アーサーの携帯が着信する バイブレーションの音にアールモンドが黙る
アーサーが携帯を取り出して言う
「奉者協会からだ… アーリィー?俺 ここで出ても良い?」
アールモンドが言う
「おう」
アーサーが微笑を見せてから携帯を着信させて言う
「はい!アールモンド・レイモンド ウィ…!」
携帯からオペ子の声が響く
『アーサーさんっ!?』
アーサーが思わず遠ざけていた受話器を戻して 苦笑して言う
「は、はい アーサーです…」
オペ子が言う
『良かった…!実は今 奉者協会が大変な事に なってしまっていてですねっ!』
アーサーが疑問して言う
「え?えーっと?それが何か?」
オペ子が言う
『ソニア副会長へ電話を回しますので 詳しい事は そちらでお願いします!』
アーサーが苦笑して言う
「分かりました では お願いします!」
短い保留音の後 ソニアの声が聞こえる
『もしもし?アーサーさん?ソニアです』
アーサーが気を取り直して言う
「お疲れ様です ソニア副会長 それで?奉者協会が大変だと 聞いたのですが?」
ソニアが言う
『ええ そうなの アールモンドさんの 公開灯魔作業が放送されると同時にね?奉者協会は電話や 問い合わせメールで大騒ぎで…』
アーサーが衝撃を受け 苦笑して言う
「と言う事は その大騒ぎの原因は ひょっとして…?」
ソニアが言う
『そうなの アールモンドさんの アノ お顔の模様は 何なのか?って?』
アーサーが苦笑して言う
「やっぱり…」
アールモンドが顔を向ける
ソニアが言う
『それで もちろん私から見ても アールモンドさんのお顔にあったのは 魔証印… それも 雷の魔証印だと言う事は分かったのだけれど』
アーサーが関心して言う
「おおっ!凄いですね!?あんな遠距離からのカメラ映像で 魔証印の種類まで見分けられるだなんて!」
ソニアが軽く笑って言う
『うふふ… ありがとう?でも 元々 そのアールモンドさんが 雷属性のウィザード様だから そうなんじゃないかな~?ってそんな目で見た事も事実だけれど… それはそうと 元々魔証印の事は 隠している訳では無くても 奉者協会では余り表には記していない事だったから』
アーサーが言う
「魔証印は ウィザードや魔力者にとっては 弱点と言う事でも ありますからね?」
ソニアが言う
『そうね… だけど ここまで騒ぎが大きくなってしまったからには 今度は隠そうとする方が 返って良くないんじゃないかって?それに このままでは騒ぎも収まらないだろうって事で 今日の夕方の報告会見の後に インタビュー方式の会見を開く事になったの …それで アーサーさん?』
アーサーが言う
「はい!その会見に 俺も 同席する様にと言う事ですよね?」
アールモンドが反応する
ソニアが言う
『話が早くて助かるわ お願い出来るかしら?』
アーサーが言う
「もちろんです!俺はアーリィーの奉者ですから!」
ソニアが言う
『良かった… それじゃ事前に 私も詳しい経緯を聞かせてもらいたいから 会見は4時からではあるけれど 出来るだけ早い内に 奉者協会の方へ来て貰えるかしら?』
アーサーが言う
「はい!今直ぐに向かいますので!時間は…」
アーサーが時計を確認して言う
「30分掛かるとして… 3時過ぎ位には着けると思います」
アーサーが立ち上がる
ソニアが言う
『3時過ぎね?…分かったわ それなら何とか間に合うと…』
アールモンドが言う
「俺も行く」
アーサーが一瞬驚いて言う
「え?けど アーリィー?」
アールモンドが立ち上がり 出入り口へ向かいながら言う
「俺に関する事だ それにお前が行く… だったら俺も行くだろ?」
アーサーが言う
「でも 相手はマスコミや普通の人で その相手をするのは 俺の仕事だし?それに アーリィーは」
アールモンドが言う
「それに 俺が行くなら 奉者協会までだって一瞬だぜ?急いでるンだろ?」
アールモンドが出入り口へ向かう
アーサーが呆気に取られた状態から微笑して言う
「うん アーリィー!一緒に行こう!…では ソニアさん アーリィーと一緒に 今すぐ行きます!」
ソニアが笑って言う
『ええ 待ってるわ?』
アーサーが通話を切り アールモンドの下へ走って向かい 手早く法衣と帽子を着せて 出入り口のドアを開ける アールモンドがドアを出て行く
奉者協会 会長室
ソニアが言う
「そう… それでは…」
ソニアがアーサーを見てから言う
「夜 遅い時間に アールモンドさんの奉者になりたいと アーサーさんの下へ懇願して来た その奉者の子には その奉者がお仕えしているウィザードが既に居て そちらのウィザードがアーサーさんへ近付いてしまった事で アーサーさんが失神してしまった…」
アーサーが苦笑して言う
「はい…」
ソニアがアールモンドを見て言う
「そして それに気付いたアールモンドさんが 別室から アーサーさんの下へ駆け付け 即座にアーサーさんへ魔力供給を行った事で アーサーさんは助かって… けれど アールモンドさんはその時に 法魔帯を巻いて居なかった為に 魔証印が焼き広がってしまった… と?これで正しいかしら?」
アールモンドが言う
「おう 経緯は 間違ってねぇよ」
アールモンドが思う
(大分 端折ったけどな?ま、それで片付くンなら わざわざ…)
ソニアが言う
「では 具体的に その奉者の子とウィザードの名前は?」
アールモンドが衝撃を受け思う
(ってっ!?やっぱそこは 見逃されねぇか… けどな?ソイツを話すとなると コッチにも色々と問題が…)
アールモンドが横目にアーサーを見る
アーサーが言う
「彼らとは お友達になったので 名前の公示は控えさせて頂きます どちらにしろ 結果は変わりませんですし?」
ソニアが言う
「そうね… それは確かに そうなのだけど こちらとしても 奉者協会の副会長として 聞いて置きたいと思うの… どうかしら?」
アーサーが言う
「彼らの失敗で 大事は起きてしまいましたが 結果として その彼らの協力がなければ 俺もアーリィーも 今 ここには居ないと思います ですので その彼らと自分らの意志を汲んで頂ければと」
ソニアが一瞬呆気に取られた後 困ったように苦笑して言う
「そう… それは… 分からないでは ないのだけどね…?」
アイザックが言う
「ソニア もう良いだろう」
ソニアがアイザックへ向く
アイザックが言う
「アールモンド卿の奉者がそうと言っているのだ つまり 彼の言葉は 彼の仕えるウィザード アールモンド卿の言葉でもある」
ソニアが呆気に取られてから苦笑して言う
「…分かりました ごめんなさい?アーサーさん?」
アーサーが微笑して言う
「いいえ」
アールモンドが言う
「で?その会見って奴には 先輩も居るンだろ?だったら 先輩が今みてぇに言ってくれりゃ それで済ンじまうンじゃねぇのかよ?」
アイザックが言う
「会見は日々の報告会見の場にて その流れのままに行われる事もあり 確かに 私もその場には居るが 今回の件に関しては 私は言及するつもりはない」
アールモンドが不満げに言う
「あぁ?…ンだよ?どおせ居ンなら 良いじゃねぇか?」
アイザックが言う
「何故 私が お前たちの問題へ 発言をしなければならない?」
アールモンドが衝撃を受けて言う
「ぬっ!?うぐぐぐっ」
アーサーが苦笑する
アールモンドが言う
「そりゃっ そぉだけどよぉ…っ」
アーサーが苦笑して言う
「大丈夫だよ アーリィー?俺 一人でも 何とかするから?」
アールモンドが言う
「けどよっ?」
ソニアが微笑して言う
「会見では 私も発言をするから 一緒に頑張りましょう?アーサーさん?」
アーサーが微笑して言う
「はい!宜しくお願いします!ソニア副会長!」
アールモンドがプイと顔を背けて言う
「フン…!会長の方は役に立たねぇみてぇだからな?俺からもよろしく頼むぜ?ソニア副会長?」
アイザックが衝撃を受け沈黙する
ソニアが微笑して言う
「あら?アールモンド ウィザード様にまで 頼まれてしまっては どうしましょう?貴方?」
アイザックが言う
「君の勝手にすれば良いだろう?」
ソニアが言う
「あらあら…?」
アーサーが微笑する アールモンドがフンと鼻を鳴らす アイザックが沈黙している
会見室
マスコミたちの前でソニアが定時報告を行っている
「…と、本日の灯魔作業は全て 予定通り終了致しました 明日の予定は こちらの通りとなります 以上で本日のご報告は終了させて頂きます では…」
奉者協会 会長室
TVにソニアの姿が映っていて言う
『…ここからは 本日のご報告にも御座いました フェフェレ灯魔台神館にて 公開灯魔作業を行われた アールモンド・レイモンド ウィザード様へ 本日実に多くの方々から お問い合わせを頂きました為 特別に お時間を頂戴し 会見を続けさせて頂きます』
マスコミたちが反応して一斉にフラッシュが焚かれる アールモンドがTVを見ていて視線を強める
会見室
ソニアが手を握り 言葉を続ける
「お問い合わせへのご返答 並びに この場にお越しの皆さまからの ご質問にお応えするにあたりまして 先に 私の他にもう一人 紹介をさせて頂きます」
ソニアが顔を向ける 会場の袖からアーサーがやって来て ソニアの横に立って言う
「アールモンド・レイモンド ウィザード様の奉者 アーサー・スペイサーです」
アーサーが軽く礼をする 一斉にフラッシュが焚かれる
ソニアが握っていた手を緩め少しホッとした様子で言う
「ご質問の内容に応じまして アーサー奉者からも 返答をさせて頂きます …では 始めに」
ソニアが原稿を確認してから言う
「お問い合わせの内 一番多くのご質問を頂きました 本日灯魔作業へ向かわれた アールモンド・レイモンド ウィザード様の お顔に見られた 模様の様な物は?…と言うご質問ですが そちらは…」
ソニアの横の席で アイザックが目を閉じて沈黙している
ソニアが続けて言う
「魔証印と呼ばれるものであり ウィザード様はもちろん 魔法を扱う者の身体へ印されているものです」
マスコミたちが乗り出し フラッシュが焚かれる
ソニアが原稿を確認して言う
「…但し 通常の場合は 衣服やそれらに覆われる箇所へ施す為 人々の目には触れる事も無く 話題にも上がらないものですが 本日アールモンド・レイモンド ウィザード様の お顔に見られましたものは そちらであって相違御座いません 」
ソニアが原稿から視線を上げて言う
「奉者協会からの正式発表は以上となります ここからは こちらへお越しの皆様からの ご質問を頂戴し そちらへお答えする形式を取らせて頂こうと思いますが 何方か…?」
マスコミたちがこぞって挙手をする ソニアが一瞬呆気に取られてから 気を落ち着かせて言う
「…では …そちらの方から?」
最前列に居た記者が言う
「その魔証印と呼ばれるものは 魔法を使う方には 全員にあると言う事で よろしいでしょうかっ?」
ソニアが言う
「その様に お考えを頂ければと 思います」
別の記者が言う
「通常は衣服の下にあると言う事でしたが 何故 アールモンド様には お顔にあったのでしょうか?」
ソニアが言う
「そちらは…」
ソニアが困って視線を泳がせる
アーサーが言う
「発言を失礼致します」
皆の視線がアーサーへ向く アーサーが言う
「魔証印についてのご説明は ソニア副会長から頂きました通りですが 付け加えまして 魔証印は 魔法を扱う事で 更に深く広くへと広がってしまう物です ですので 通常はそちらを押さえる為に 魔法を扱う前に そちらへの対処を行います」
記者が1人手を上げて言う
「では もしや!?」
アーサーが言う
「はい アールモンド様の お顔の魔証印は そちらの対処を行わない状態で 魔法を使用したが為に お顔まで 焼き広がってしまったものです」
マスコミたちがどよめく ソニアがハラハラする 記者たちが手を上げてソニアを見る
ソニアがハッとして言う
「では… そちらの?」
ソニアの視線を向け 記者が言う
「魔法を扱う為の対処を行わない状態で 魔法を使用したと言うのは アールモンド様 御自身のご判断で 行ったと言う事でしょうか!?魔証印を広げる為に!?」
アーサーが言う
「対処を行わない状態で 魔法を使用した その事自体は アールモンド様のご判断ではありましたが 魔証印を広げる為に等と言う理由では 決して有りませんっ 魔証印は 医学的に言うのであれば 熱傷レベルⅡの広範囲熱傷です 命を落とす危険もありますっ」
マスコミたちがどよめく ソニアがハラハラする 記者たちが手を上げてソニアを見る ソニアがハッとして言う
「で、では… そちらの?」
ソニアが視線を向け 記者が言う
「では具体的にっ!?それ程の危険を冒してまで 魔証印への対処を行わない状態で 魔法を使用した その理由はっ!?」
アーサーが言う
「それはっ」
ソニアがハッとして言う
「そちらはっ!」
皆の視線がソニアへ向く
ソニアが声を押さえて静かに言う
「奉者協会では ウィザード様 及び その他個人の プライベートに関します事は 公表は控えさせて頂居ておりますので そちらのご質問は控えて頂きたいと…っ」
マスコミたちがざわ付く アーサーが口を閉ざす
ソニアが視線を泳がせる 挙手がされ ソニアが言う
「はい、ではそちらの…っ」
挙手していた人物が言う
「魔証印と言われる物は 魔法を扱う為の物と言う事の様ですが それは言い換えれば 人々が神様から与えられた力と言う事になりますよね?そして その力は正しく扱うのであれば 先程アーサー奉者が仰った様な危険も無いと?」
ソニアが言う
「はい そうですね そちらの御解釈で宜しいかと?」
挙手していた人物が言う
「と、言う事は この度アールモンド ウィザード様の魔証印が 広がってしまう様な事態に 会われたと言う事は 魔法を正しく扱わなかった と言う事ではないでしょうか!?」
マスコミたちがざわ付く アーサーが視線を強める
ソニアが困惑しつつ言う
「あの… 申し訳ございません ご質問の意図が少々… 魔証印は 魔法を扱う際の対処を 行ってさえいれば…」
挙手していた人物が言う
「そちらの 魔法を扱う際の対処とは?アールモンド ウィザード様は 神様の御意志に反して魔法を扱った為に 魔証印が悪化すると言う 天罰を受けられたのではないですか!?」
アーサーが顔を上げ反論の口を開こうとするが その前に ソニアが言う
「魔法を扱う際の対処に関する詳細は 申し訳御座いませんが 公表は伏せさせて頂きます しかし その上に置きましても アールモンド ウィザード様が 神様の御意志に反するなどと言う事は…っ」
挙手していた人物が言う
「神様の御意志とは言わずとも!本来使うべきでは無い時に 魔法を扱ったと言う事では無いのですか!?ウィザード様は本来 世界を救う為に魔法を使われますが それを私利私欲に扱ったとか!」
ソニアが困って言う
「その様な事は…っ」
アーサーが怒りを押し殺して言う
「アールモンド・レイモンド ウィザード様が この度 魔力による熱傷の悪化を負われたのはっ ご自身への対処を行う時間を省き 他者の人命救助を優先した事が原因ですっ!」
ソニアがハッとする ほぼ同時に 沢山のフラッシュが焚かれ マスコミたちが押し寄せて言う
「人命救助を行ったとはっ!?」 「具体的にはっ!?」 「それは 何時!?どちらで!?」
アーサーが言う
「…っ 個人情報が含まれてしまう為 詳細はお伝え出来ませんが アールモンド様は 先程から申し上げております様に その時は魔法を扱うのに相応しい状態では ありませんでした しかし ご自身の目前で失われようとしていた命をっ それを救う為に魔法を使い その者を救われたのですっ」
マスコミたちが言う
「ではっ ウィザード様の魔法は 人の命を救う事が出来るとっ!?」
アーサーが言う
「…その者の状態にもよります 皆様も以前の内に 他のウィザード様が 銃弾に倒れた女性の救助を行われた事を ご存じであると思われます!」
皆が反応して アイザックへカメラが向き フラッシュが焚かれる
アイザックは沈黙している
「…っ」
アーサーが言う
「そちらの時と同様に アールモンド・レイモンド ウィザード様も 目の前で起きた唐突な出来事へ対し ご自身への被害を顧みず 魔法を用いて その者の命を救われたのですっ!ですので…っ 例えそれがっ!魔力者共存法に置かれる 魔法による医療行為の禁止等の法律に抵触しようとっ」
アーサーが挙手していた人物を見て言う
「神様から与えられた力の横暴だと 罵られようともっ!私はっ 人としてっ 他者の命を守るべく 御自身が追求された力を 躊躇なく用いる事が出来る ウィザード様を!崇敬し!信奉していますっ!」
マスコミたちが圧倒され フラッシュが焚かれる
ソニアが呆気に取られていた状態から カメラ前のスタッフの合図に ハッと気を取り直して言う
「では お時間となりました為…っ」
奉者協会 会長室
TVにソニアが映っていて言う
『本日のご報告会見は終了とさせて頂きます …奉者協会は これからも 人々とこの世界をお守り頂く ウィザード様へお力添えを致すべく 尽力して参ります 本日もご視聴を有難う御座いました それでは 失礼いたします』
ソニアが礼をして放送が終了する
TVを見ていたアールモンドが沈黙していて振り向く ドアが開き アーサーが入って来て顔を上げ アールモンドの姿に表情を明るめて言う
「アーリィーっ!」
アーサーがアールモンドの下まで飛んで来て抱き付く 続いてソニアとアイザックが入室して来る
ソニアが微笑んで言う
「あらあら?」
アーサーがアールモンドに頬擦りして言う
「アーリィー 見ててくれた!?俺 ちゃんと出来てたかなぁ?ねぇ?アーリィー?」
ソニアが言う
「うふふ… ”崇敬し 信奉している” ウィザード様に 随分と甘えてしまって?さっきまでのアーサーさんは 何処へ飛んで行ってしまったのかしら?」
アイザックが沈黙している
アーサーが上目遣いにアールモンドの顔を見上げる
アールモンドが正面を向いたまま言う
「ふん…?まぁ… 良かったンじゃねぇの?」
アーサーが反応して言う
「良かった!?それって アーリィーが 俺を褒めてくれてるって事かなあ?アーリィー!?」
ソニアが微笑する
アールモンドが正面を向いたまま言う
「ふん…っ まぁ 良かったンじゃねぇの?」
ソニアが呆気に取られる
アーサーが衝撃を受け言う
「えっ!?それって?…アーリィー 褒めてくれてるのぉ!?それともっ!?」
ソニアが笑って言う
「うふふっ 本当に お2人は仲が良…」
アーサーが言う
「…怒ってるの?アーリィー…?」
ソニアが笑いを収め呆気に取られる
アーサーが困って言う
「俺 何か アーリィーの気に入らない事 言っちゃったかなぁ?ねぇ?アーリィー?」
アールモンドが顔を逸らす
アーサーが言う
「それなら?…ごめーん アーリィー?俺 謝るから 許して?…ねぇ?アーリィー?アーリィー?」
ソニアが見詰める先 アールモンドが沈黙している アーサーが表情を落としてシュンとする
ソニアが困って言う
「アールモンドさん?私が聞いていた限り アーサーさんは何も悪い事は言ってはいないわ?むしろ…?」
ソニアがアールモンドの表情を伺う アールモンドは沈黙している
ソニアが苦笑して言う
「私の方が アーサーさんの発言に 助けられてしまう位で…?」
アーサーが振り返って言う
「ソニア副会長っ!」
ソニアが困って言う
「アーサーさん…っ でも…」
アーサーがソニアへ縋る目で言う
「もっと言って下さいっ!是非っ!?」
ソニアが衝撃を受け 苦笑して言う
「えっ!?あ… は、はいっ?では えっと…?」
ドアがノックされ ソニアが気付いて言う
「はい?」
ドアが開かれ 職員が言う
「ソニア副会長 暫定ですが 先ほどの会見へ対する 世論が分かりましたので お知らせに参ったのですが…?後ほどにした方が?」
ソニアが一度アールモンドとアーサーを見てから言う
「…今聞かせて貰うわ?ちょっと失礼します」
ソニアが部屋を出て行く アイザックがソニアを視線で見送ってから アーサーたちへ向ける
アールモンドが言う
「世論… か…」
アーサーが言う
「アーリィー?俺…」
アールモンドが言う
「相変わらず お前って奴は まるで息をする様に 嘘を吐くよな?アーサー」
アイザックが反応する
アールモンドがアーサーを見て言う
「お前は 他人を騙す事に 何の罪悪感もねぇのかよ?」
アーサーが反応して言う
「そんな?他人を騙す事への罪悪感なんて そんなの… ある筈がないじゃない?」
アイザックが僅かに驚く
アールモンドが言う
「ふん… だろうな?そもそも お前は… お前の全てが偽りなんだ 今更 他の誰に対して嘘を言った所で 何も感じねぇンだろう?」
アーサーが言う
「もちろんだよ アーリィー?俺 何も感じないよ?だって 必要ないじゃない?俺にとっては アーリィーに良い風が吹く様に出来れば 他はどうでも良いもの?それこそ 当然じゃない?アーリィー?」
アーサーが微笑してアールモンドを見詰める
アールモンドが視線を逸らして言う
「俺は お前のそう言う所が気に入らねぇ けど 言った所で お前は変わらねぇ事も知ってっから 今更それは言わねぇし 怒りもしねぇよ?」
アーサーが疑問して言う
「うん?それなら?」
アールモンドが続けて言う
「…けどな?その噓は お前自身までにしろ 俺自身の事まで 言われるのは御免だ」
アーサーが疑問して言う
「え?それはもちろん?俺 アーリィーの事で 嘘を言ったりはしないよ?アーリィー?」
アールモンドが言う
「なら…っ!」
ドアが開き ソニアが入って来て 室内の雰囲気に一瞬躊躇してから言う
「…っ?ごめんなさい?お邪魔をしてしまったかしら?先ほどの会見に対する 世論の反応なのだけど?」
ソニアが皆の様子を見てから言う
「概ね良好 少なくとも 明日以降 予定されている アールモンドさんの公開灯魔作業は 予定通り 行って問題は無いと言う事になったわ?それに どちらかと言えば」
ソニアがアールモンドを見て微笑して言う
「自身へ対する被害さえを顧みず 人命救助の為に魔法を使ったと言う アールモンド ウィザード様へ 世論は味方をしているみたいよ?それに そのウィザード様へ対する 全幅の奉公の在り方として アーサー奉者様の会見の様子にも 感服したって?」
ソニアがアーサーへ向いて微笑する
アーサーが微笑してアールモンドへ向いて言う
「良かったね!アーリィー!皆 アーリィーの事…っ!」
アールモンドが言う
「俺はっ!」
皆がアールモンドを見る
アールモンドが言う
「あン時は… 相手がお前だったから出来たンだ… 他の… 顔も知らねぇ どっかの誰かが 目の前で死に掛けて居た所でっ 全身の魔証印が焼かれる あの苦しみに耐えてまで 助けてやれる自信はねぇよっ!」
ソニアが気付く アールモンドが続けて言う
「なのにお前はっ!!」
アールモンドがアーサーを睨み付けて言う
「世界中の連中へ対して 何処の誰だろうと 俺はソイツを命懸けで助けるみてぇに 言いやがってっ!ンな嘘で得られた世論なんざっ!」
アーサーが微笑して言う
「その事なら 大丈夫だよ アーリィー?」
アールモンドが言う
「何が大丈夫だ アーサーっ!俺はお前と違って ンな嘘を吐いてまで 良い風なンかに吹かれたか ねぇンだよっ!」
アーサーが言う
「嘘じゃないよ アーリィー?だって アーリィーは 間違いなく やるもの?」
アールモンドが言う
「ああっ!?」
アーサーが言う
「アーリィーは やるよ?目の前で死に掛けている ソイツが何処の誰だろうと 命懸けで助ける!俺 知ってるから?」
アールモンドが呆気に取らる
「っ!?」
アーサーが言う
「だから俺は アーリィーの事で 嘘なんて言ってないんだよ 安心して?」
アールモンドが沈黙してから言う
「…っ 知らねぇよっ!」
アーサーが笑顔で言う
「またまた?アーリィーってば 照れちゃって?」
アールモンドが怒りを押し殺して言う
「照れてねぇ…っ」
ソニアが呆気に取られていた状態から微笑み笑う
「うふふっ」
アイザックが沈黙している
窓の外 アールモンドとアーサーが奉者協会から出て来て 程良い所で立ち止まり アールモンドが杖を掲げて 2人が風に消える
その様子を見て居たソニアが微笑して言う
「本当に あの2人は仲の良いコンビで… アーサーさんはもちろんだけど やっぱり アールモンドさんが ウィザードとして… 人としての責任を持っているからこそ そのアールモンドさんを アーサーさんは信頼しているのでしょうね?それこそ 崇敬や信奉と言う言葉が出る位に…?」
アイザックが言う
「…ソニア」
ソニアが疑問して言う
「はい?貴方?」
アイザックが言う
「奉者協会の名簿にある 奉者の情報を持って来る様 伝えてくれ」
ソニアが言う
「奉者の情報を?はい… では どちらの…?」
アイザックが言う
「アーサー・スペイサーだ」
ソニアが言う
「え…?」
アイザックが言う
「彼の情報が知りたい アーサー・スペイサーのリストを 持って来る様にと 伝えてくれ」
ソニアが困惑しつつ言う
「は、はい…」
ソニアが受話器を上げボタンを押して耳に当て アイザックの様子を伺う アイザックは窓の外を見詰めている ソニアが心配する
レイモンド邸 エントランス前
アールモンドとアーサーが風に現れる
アーサーが言う
「お疲れ様!アーリィー!?」
アールモンドが言う
「…俺は何もしてねぇよ 会見に出たのはお前だけだ」
アーサーが苦笑して言う
「それはそうだけど?」
アールモンドが思う
(だから その言葉を言うべきなのは俺で… けど それを言っちまったら…)
アーサーが気を取り直して言う
「けど!アーリィーも 一緒に奉者協会に行って 会見には出なくても 別室で応援していてくれたじゃなあい?お屋敷と奉者協会への移動魔法も やってくれたから 俺 助かったし!?だから やっぱり お疲れ様!それから 有難う!アーリィー!」
アールモンドが思う
(俺が奉者協会へ行ったのは その会見に 俺が関係していたからだ けど 俺はウィザードだから 下々の人間たちの会見なンかに 応じる必要はねぇって事で 代わりに俺の奉者である アーサーが出た… だったら?)
アールモンドが沈黙している
「…」
アーサーが苦笑して言う
「あの… アーリィー?ひょっとして… まだ 怒ってるの?それなら 俺…」
アールモンドが思う
(理由はどうあれ アーサーは俺を庇って アイツなりに尽力して "世論"を 俺へ良い様に向けた… それがアイツの仕事で アーサーは… 奉者として 俺の世話役として やるべきことをやった… だったら…)
アーサーが言う
「俺 何とか ソニア副会長や 奉者協会へお願いして さっきの会見で言った事は 俺の独断だったって ちゃんと言うよ アーリィー?それでアーリィーは 何も言っていないって 俺の勝手な発言だったって 責任取るからっ だから…っ」
アールモンドが言う
「…もう良い」
アーサーが言う
「けどっ?」
アールモンドが言う
「良いって言ってンだろっ」
アールモンドが歩き出す アーサーがあっと追い駆ける
レイモンド邸 通路
アールモンドが歩きながら思う
(そもそも 発言内容は兎も角 俺の代わりに アーサーが会見に出た事は間違いねぇンだ だったら せめて ”お疲れ”と言うのは 俺であるべきなンじゃねぇのか?礼を言うのだって…?)
アールモンドが立ち止まる アーサーがドアを開ける
アールモンドの部屋
アールモンドが入室して アーサーがアールモンドの帽子と法衣を外す
アールモンドがソファへ向かいながら思う
(…なら とりあえず 先ずは お疲れ と言うか?それから… 礼も?けど 発言に関しては 許容出来ねぇと伝えて …訂正なンてのは 今更 させるつもりもねぇが 今後は 勝手な発言は止めろと 釘を刺して置かねぇと?じゃねぇと…)
アールモンドがソファへ座り アーサーへ顔を向けようとして気付く テーブルにティーセットが置かれたままである それへ手を掛けたアーサーが言う
「それじゃ 俺 これを 片付けて来るね?アーリィーは…」
アーサーがアールモンドの顔を見て微笑して言う
「夕食にするなら 5時まで後15分位だから ゆっくり休んで居たら良いんじゃなあい?それとも お風呂に入りたかったら すぐに用意するけど どうしよっか?」
アールモンドが言う
「…ああ そうだな… なら…」
アールモンドが思う
(…って?そうじゃねぇっ!)
アールモンドがアーサーを見る
アーサーが言う
「あ?お風呂にする アーリィー?それなら…」
アーサーがティーセットをテーブルに戻そうとする
アールモンドがハッとして言う
「…いや 飯まで待つ …けど」
アーサーが一瞬疑問してから微笑して言う
「そお?じゃ…!」
アーサーが戻そうとしていたティーセットを持ったまま立ち去ろうとする
アールモンドが言う
「お、お前こそっ …休めば良いだろ?」
アーサーが言う
「え?」
アールモンドが言う
「ソイツを片付けるのなんか 家の奴らにやらせれば良い… お前が持って行った所で どおせ洗うのはアイツらだろ?」
アーサーが苦笑して言う
「うん 俺が洗うと 割っちゃうかもしれないからね?だから 俺は 給湯室まで持って行くだけだから それ位なら大丈夫だよ?アーリィー?」
アールモンドが言う
「そおじゃなくて…っ いや、だから… …お前も …疲れてンだろ?アーサー?」
アールモンドが思う
(そうだ 俺なンかよか お前の方が よっぽど疲れてるだろ?…いや、疲れている筈だ 画面越しでも分かった アーサーは 元々 あンな生優しい事を言う奴じゃねぇ だから本心じゃ 連中の言葉にキレそうになる自分を 押さえていた… アーサーは 例え 本心であろうと 俺の味方であるから)
アーサーが苦笑して言う
「うん 俺 凄く疲れちゃったよ アーリィー だから アーリィーが一緒に行ってくれたのは 本当に助かったんだ?有難う アーリィー!それじゃ コレ片付けて来ちゃうね?」
アーサーが向かおうとする
アールモンドが衝撃を受けて思う
(いやっ!?だから…っ!?)
アールモンドが言う
「…だっ だったらっ!お前も休めよっ!?アーサーっ!?ンなモン片付けてねぇでっ!?」
アールモンドがアーサーの持つティーセットを見て思う
(そう言や 今日は お前に茶を振る舞ってねぇだろ?…いや?淹れはしたが 肝心の魔法は掛けちゃいなかった… ウィザードが奉者へ… 従者へ 自分へ捧げられた魔力を 還元してやる為の ソイツを …だから)
アーサーが微笑して言う
「有難う アーリィー けど 大丈夫!俺 疲れはしたけど 精神的なものだし?それに これを持って行くのは 給湯室へ行く その ついでだから?」
アールモンドが言う
「給湯室へ行く…?」
アールモンドが思う
(なら?元々 給湯室へ行く用があるって事か?給湯室へ行く用って… 何だ?そもそも 給湯室って事は… …やっぱ 茶でも飲もうと?だったら…っ)
アーサーが言う
「ちょっと お塩を貰おうかと思って?」
アールモンドが疑問して言う
「は?…塩?」
アールモンドが思う
(塩なんて…?一体 何に使うンだ?)
アーサーが言う
「塩水でうがいをするとね?喉の痛みが取れるんだよ アーリィー!魔法みたいでしょ?昔 父さんに教えてもらったんだ?えへへっ!それじゃ すぐ戻って来るから!」
アーサーが言い終えると共にドアを開けて出て行く
アールモンドが呆気に取られていた状態からハッとして言う
「…あっ?お、おいっ アーサー?」
アールモンドが呆気に取られて思う
(…は?アイツ… …何言ってンだ?塩水でうがいをすると 喉の痛みが取れるって?魔法みたいだって?…ンなのは)
アールモンドが言う
「魔法が使えねぇ奴らが 言う事だろ?」
通路
アーサーがティーセットを手に笑顔で歩いている
アールモンドの部屋
アールモンドがソファに座って居て思う
(…どう言う事だ?アイツは… アーサーは俺の奉者だ 従者でもある… なのにアイツは 何で 俺に言わねぇンだ?…喉が痛ぇなら 「魔法で治してくれ」って?)
アールモンドが窓の外を見る 夕日が傾いている
アールモンドが思う
(まさか?本当に?アイツは 俺を ウィザードとして見ていて 崇敬だか信奉だのをして 敬っているとでも言うのか?あの言葉は 嘘じゃ無かったって事か!?だとしたら…っ)
アールモンドが立ち上がって言う
「そんなのは オカシイだろっ!?」
アールモンドが部屋を出て行こうとして 途中で手を向ける 杖が魔法で呼び寄せられ アールモンドの手に握られる
給湯室
アールモンドがやって来て言う
「おい アーサー!…あ?」
アールモンドが周囲を見渡して言う
「居ねぇ…?」
アールモンドがシンクに置かれているティーセットに気付いて思う
(ティーセットを持ってくのは ついでだって言ってたな?)
アールモンドが視線を向けた先 塩と書かれているケースに動かした跡が見れる
アールモンドが思う
(塩も手に入れた… なら…?)
アールモンドが少し考えてから首をかしげる
「…?アイツ 何処へ行ったンだ?」
アールモンドが周囲を見渡して思う
(アーサーの魔力は見えねぇ… だが アイツの命の光なら)
アールモンドが気付いて言う
「…そこかっ!?何ンで そンな方に?」
アールモンドが向かう
洗面所
アーサーが塩水を含んでうがいをし始めた所に アールモンドが現れて言う
「おい アーサー?」
アーサーが驚き咳をしながら言う
「うっ!?ゲホッ!?ゴホッ !?ゲホゲホッ!!ア、アーリィー!?ゲホッ!どうしてっ!?ゲホッ!ゴホッ!こんな所に!?ゲホゲホッ!」
アールモンドが言う
「…大丈夫かよ?」
アーサーが息を切らしてから苦笑して言う
「はぁはぁ… ケホッ… う、うん 俺は大丈夫だけど アーリィーこそ?どうかしたの?こんな所に来るなんて?」
アールモンドが室内を見渡して言う
「…そういや こンな部屋もあったな?ガキの頃は 何の部屋か分かんなかったけどよ?」
アーサーが言う
「うん ここのレストルームは広くて 奥にはシャワールームもあるんだよ?けど アーリィーには関係ないし 使う必要も無いけどね?あははっ!」
アールモンドが言う
「ふーん?つまりは 客用の手洗い場って事か?」
アーサーが言う
「どちらかと言うと そのお客様の 使いの人が使うって感じかなぁ?それかレイモンド家の 使用人が使う感じかも?どちらにしても 不思議な場所にあるなって 思っていたんだよね?お屋敷の御主人様のお部屋である アーリィーのお部屋に とっても近いんだもの?」
アールモンドが言う
「ふーん?」
アールモンドが思う
(…ま?ンな事は 俺にはどうでも良いンだが)
アールモンドがアーサーを見る アーサーが疑問してから思い付き 苦笑して言う
「けど お陰で 俺には丁度良くって!勝手に使わせて貰っちゃってるんだけどね?えへへっ?」
アールモンドが言う
「…そおかよ まぁ 使えるモンは 勝手に使えば良い …ンな事よかよ?」
アールモンドがアーサーの顔を見上げる
アーサーが言う
「あ、そうだよね?なら アーリィーは?どうしてここに?」
アールモンドが思う
(…ンなの聞く必要があンのか?そいつは もちろんっ)
アールモンドが言う
「お前に用があって来たに 決まってンだろ?」
アーサーが衝撃を受け言う
「えっ!?俺に用があってっ!?アーリィーが?その為に アーリィーが ここまで来たのっ!?」
アールモンドが不満げに言う
「…だったら ンだよっ?待つよか 向かった方が 早ぇだろ?それに…っ」
アールモンドが思う
(どおせなら 塩水の魔法モドキを やらせる前にとも思ったンだが… …ソイツは間に合わなかったから 言わねぇで…)
アールモンドが言う
「…急ごうと思ったンだ」
アーサーが言う
「急ぎの用事?だったら アーリィー 部屋にあるベルで 呼んでくれたら良かったのに?」
アールモンドが衝撃を受ける
アーサーが言う
「そしたら俺 何を置いたって アーリィーの所へ 直ぐに向かうよ?」
アールモンドが視線を逸らして言う
「そ、そいつは…っ」
アールモンドが思う
(そお言うや… ンなモンも…)
アールモンドが言う
「その…っ き、聞こえねぇだろっ!?ここじゃっ!?」
アーサーが言う
「え?そんな事は無いと思うよ?俺 ここで聞いた事は無いけれど あのベルの音は メイドさんたちの控室まで届くのだから?」
アールモンドが衝撃を受ける
アーサーが笑顔で言う
「それよりずっと近い ココなら?…あっ!?アーリィーっ?」
アールモンドが立ち去って行く アーサーが慌てて追い駆ける
アールモンドが思う
(言われてみりゃそうだ …らしくねぇっ クソ…ッ カッコ悪ぃ)
アーサーが言う
「待って アーリィー?ごめーん アーリィー?アーリィーは いつも使う側だから 何処まで届くかなんて 知らないんだよね?だから…っ」
アールモンドが思う
(冷静に考えりゃ分かる事だ あのベルを鳴らせば メイド共が来る… って事は 俺の部屋に近い さっきの場所は勿論 メイドの控室との間にある 給湯室へだって聞こえる…っ)
アールモンドがドアの開かれたままの部屋へ入る
アーサーが追って入ってドアを閉め 振り返りながら言う
「それに!アーリィーは 急いでたんだよね?だからっ!?…えっと?それで?アーリィーは 何を そんなに急いで…? っ!?」
アールモンドがアーサーの首に手を当てる アーサーが驚いて言葉を止める
アールモンドが言う
「もう良いから 少し黙ってろ」
アールモンドが意識を集中させると アールモンドの目に現実の視野に被さる様に 赤い光が見える
アーサーが疑問して言う
「ア… アーリィー?」
アールモンドが思う
(…なるほど 痛ぇ筈だ こんなに真っ赤な光は… 俺は医者でも何でもねぇから 何がどうなって こんな風になっちまうのかは 分からねぇが)
アールモンドがアーサーの身体を見て思う
(喉の外には… 赤い光は見えねぇから 他の要因はねぇ… なら やっぱり…)
アールモンドが意識を強める アールモンドの杖が光を帯びて アールモンドの手の先にある アーサーの首に淡い光が放たれる
アーサーが気付いて言う
「…ぁっ」
魔法の光が消え アールモンドが手を放す
アーサーが喉の様子を確かめてから 喜んで言う
「う、うんっ あー?あー?…有難う アーリィー 喉の痛みを 治してくれて!」
アールモンドが言う
「ンな当たりめぇな事に 礼なンか要らねぇよ それよか…」
アーサーが言う
「アーリィー カッコイイ!」
アールモンドが言う
「アーサー お前…」
アーサーが言う
「うん?なあに?アーリィー?」
アールモンドが言う
「その声 もう止めろ」
アーサーが驚いて言う
「…え?」
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